↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
73/143

073 遺跡

「これは……朽ちかけていますが、階段ですわね。それに、あの柱にはレリーフのようなものが刻まれています。明らかに知性のある者が造った痕跡がありますわ。いつの時代の遺跡かしら? もしかしたら、歴史的大発見になる可能性も……」


 空いた穴から階段や階段の奥を覗き込んでいたシンディーが呟く。その声色からは、隠しきれない喜びの色がわかった。


 そうか。ゲームの時はただのダンジョンという認識だったけど、シンディーたちにとっては過去を知ることができる貴重な資料という認識なんだ。それこそ、僕が前世でピラミッドに抱いていた気持ちと同じものかもしれない。


 ピラミッドで新発見って聞いたら、テンション上がるもんね。シンディーの気持ちもわからなくもない。ましてや、シンディーは学者だ。興奮するのは当たり前だね。


「一刻も早く専門家を招聘しなくては。それまでは、できる限り現状維持に努めないと……」


 シンディーの考えは、ある意味で常識的で当たり前なのだろう。


 しかし、それでは困るのだ。


「シンディー、ここはアクロイド男爵領だ。ということは、この遺跡もアクロイド男爵のものになる。違うかな?」

「それはそうですわね。キース様のおっしゃる通りです。まずはご領主様の許可を頂かないと――――」

「違う。違うんだよ、シンディー。まずは僕たちで調査してしまおう。もちろん、お父様も呼んでね」


 シンディーがまるで雷に打たれたかのように驚きのあまり体を震わせる。


「え? ご領主様自ら、キース様も調査に加わるということですか?」


 遺跡、本当は祠なんだけど、その歴史的価値は確かにあるだろう。でも、それ以上に優先しなくてはいけないことがある。


「僕はなんとなくだけど、魔力を感じることができる。これはシンディーにも何度も答えてきたよね?」

「はい。ですが、それが今、関係があるのですか?」

「大ありだよ。この遺跡からは、とても大きな火属性の邪悪な魔力を感じるんだ。おそらく、アクロイドの呪いと関係があるかも――――」

「それは本当ですかい⁉」


 そこまで言ったところで、奇麗になったトムが喰いつくように質問してきた。


「断言はできないけど、たぶんね。アクロイド男爵領に雨が降らない原因かもしれない」

「そいつは……」


 僕の言葉に絶句するトム。ずっとアクロイド男爵領で暮らしてきたトムだからこそ、そこには本当に目が飛び出んばかりの驚きがあった。


 そう。アクロイド男爵領は雨の恵みがない呪われた土地だと言われてきた。


 でも、僕は知っている。この炎帝の祠に祀られている者の正体と、それを撃破したときにおこる反応を。


 実はゲームでは、この炎帝の祠をクリアして一定時間が経つと、この地は緑豊かな土地になるのだ。


 それはすなわち、この極端な乾燥した大地の原因も、雨が降らない原因も、この炎帝の祠に祀られている者だということになる。


「邪悪な魔力……。もしかしたら、邪神の……? しかし、この遺跡はどう見ても百年以上前のもののはず……。キース様、邪悪な魔力の正体に心当たりはあるのですか?」


 俯いて考え込んでいたシンディーが、顔を上げて質問してきた。


 さて、どう答えよう?


「……それは僕にもわからない。でも、僕たちにとってあまりよくないものである可能性が高いと思うよ? たぶん、戦闘になるんじゃないかな?」

「「戦闘⁉」」


 シンディーにとってもトムにとっても意外だったのか、二人の声がハモる。仲いいね。


「まさか、強力なモンスターが……?」

「ありえないわ。どんなに強力なモンスターだろうと、必ず食事は必要なはず。この遺跡は、少なくとも三百年は経っていますわ。そんなに長い間、生き続けるモンスターなんてそれこそ……。いえ、火属性の邪悪な魔力……まさか……!」


 まさか、この少ない情報から正解にたどり着いたのか、シンディーが大きく目を見開いて恐怖の表情を浮かべていた。


「邪炎竜、ガレスゴディア……!」


 シンディーが嘘であってほしいと言わんばかりに呟く。


 驚いた。まさか一発で正解を引くとは。


「ガレ……? そいつは何なんです?」


 トムは知らないのか、不思議そうな顔でシンディーに尋ねる。


 ディアナ? ディアナならいつもの無表情を浮かべて関心なさそうだ。


「古い、とても古い時代に討伐された邪竜よ。それこそ、神話の時代ね」

「神話ですかい?」


 さすが、シンディーは学があるね。トムは一層不思議そうな顔を見せる。


「でも、討伐されたんでしょう? なんでそいつの名前が出てくるんです?」

「その神話には続きがあるのよ。討伐された邪炎竜ガレスゴディアだけど、その魂までは滅することができなかった……。邪炎竜ガレスゴディアの魂は、自身を討伐した神造兵器に封印されたとあったわ。……ッ! まさか! アクロイドの呪いの元凶はこれだというの⁉」

「へぇ……」


 認めるよ。僕はシンディーをナメていた。そこまでわかるのか。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。