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071 アクアリウムと宝探し

「キキキ、キース様! まさか海をくり抜いて持ち上げるだなんて! いったいどんな魔力をしてるんですか⁉」


 僕の作った即席アクアリウムを見て、シンディーが悲鳴のような声をあげる。


 その上でジロジロとアクアリウムを観察し、愕然とした様子で口を開く。


「こんなにも大量の海水を、まさか魚ごと操るだなんて……。キース様の奇行には慣れたつもりでしたけど、まさか、さらに上回ってくるだなんて……!」


 奇行って、ひどいなぁ。


「それで坊ちゃん、こんなにしちまって、どうするんですか?」


 トムが疲れ切った顔で僕に問うてくる。


 どうする? そんなの決まってるじゃないか!


「持ち帰るよ? 今日はお魚パーティだ!」

「「持ち帰る⁉」」


 トムとシンディーの声が見事にハモった。仲がいいね。


 まぁ、そんなことは置いておいて、僕は気になることをシンディーに訊いてみる。


「シンディーは魚の種類ってわかる? 毒のある魚とかいるかな?」

「ある程度でしたら……」

「ある程度わかるだけで十分だよ!」


 なぜなら、アクアリウムの中にはいっぱい魚がいるからね。アジのような小魚の群れからカツオのような魚、サメのような大型の魚までいる。まさにより取り見取りって感じだ。


 これだけ取れば、シンディーの知っている食べられる魚だけでもかなりの量にもなるだろう。


「ん?」


 なんだかサメっぽい大きな魚がアクアリウムから脱出しようと水の壁に何度も体当たりしているのが見えた。


「あれは、メガトリウス⁉」

「へー」


 そんな名前なんだ。


「食べられるの?」

「あの巨体を見て感想がそれですか⁉ 水の膜は本当に破られないのですか? 危険はないんですよね⁉」


 シンディーがまるで信じられないものを見たような顔で僕を見ていた。


 でも、僕にとっては食べれるかどうかの方が重要だ。


 それに、あの程度の体当たりじゃ僕の魔法は解けないよ。


「それで、食べられるの?」

「毒はありませんが……。おいしいかどうかは……」

「じゃあ、食べてみよう!」


 何事も挑戦だよね!


 僕はアクアに乗ると、南の方を指差す。


「あっちに行ってみよう」

「え? もう海は見ましたよね? まだ行くんですかい?」


 トムが不思議そうな顔で僕を見ていた。


「行くよ。アクロイド男爵領の先っぽまでね」


 そう。僕の目的地は、アクロイド男爵領の南の先端である。そこにはお宝があるのだ。


 アクロイド男爵領は、逆三角形のような形をしている。その下の先端に行くつもりだ。


「やれやれ……」


 僕の本気が伝わったのか、トムが肩をすくめて歩き出す。その後を僕たちは付いていく。


 その後、何度かモンスターの襲撃を蹴散らして、モンスターの素材を回収しつつ、後ろには巨大なアクアリウムを添えて、僕たちはアクロイド男爵領の南端を目指した。


 途中、アビーの作ってくれた昼食を食べつつ、僕たちはようやくアクロイド男爵領の南端にたどり着いた。


 まるで船の先頭に立っている気分だ。タイタニックの有名なポーズとかしたい気分だ。


 そっと一緒にアクアに乗っているディアナを見るけど、いつもの無表情を浮かべて海を見ている。たぶんタイタニックポースはやってくれなさそうだ。


「ここがアクロイドの南端ですがね。こんなところに来て何をするんです?」

「宝探し、かな?」

「はい?」


 困惑するトム。そんなトムを無視して、僕はアクアから降りてアクロイド男爵領の南端に立つ。僕の予想が確かなら、ここにはお宝がまだ眠っているはずだ。


 僕は右手から水を生み出すと、地面に向けて撃ち付ける。イメージとしては、超高圧洗浄機で土を洗い流す感じだ。これでも十分に土が掘れる。


 だいたい三十センチくらい掘っただろうか。すると、水の感触が変わる。土の中から現れたのは、古びた装飾が付いた宝箱だ。まるで宝石箱のような見た目だ。


「よいしょっと」


 僕は現れた古びた宝箱を取り出す。


 宝箱の大きさはそんなに大きくない。片手で持てるサイズだ。


「坊ちゃん、何です? それ?」

「こんな所にそんなものが……?」


 トムもシンディーも不思議そうな顔で宝箱を見ている。ディアナは……うん、アクアの上でいつも通りの無表情だね。


 僕は古びた宝箱を開ける。中から現れたのは、不思議な輝きを持つ銀の腕輪だ。青い大きな宝石が付いている。かなり高価そうな腕輪だ。


「うお⁉」

「え⁉」


 僕の後ろから覗き込んでいたトムとシンディーが驚きの声をあげるのが聞こえた。


 まぁ、古びた宝箱からこんな高価そうなものが出てきたら驚くか。


「なんちゅー輝き! こりゃ銀ですか?」

「いえ! この七色の輝きはきっとミスリルよ! 宝石にも魔力を感じるわ! きっとマジックアイテムのはず……。どうしてそんなものがここに⁉」

「へー」


 これ、普通の銀かと思ったらミスリルなんだ。初めて見るファンタジー金属に僕のテンションは上がりまくりだ!


 シンディーの言う通り、腕輪に填まっている宝石からは魔力を感じる。


 これこそが、僕の求めていたものである。

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