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007 魔法の披露

「おうあ!」


 その日、僕は一大決心をした。


 今日の夕方、両親に魔法を披露しよう。


 今、僕は両親と一緒にご飯中だ。


「はい、キース。あーん」

「あむ」


 クレアに食べさせてもらっているのは、たぶんこの辺りの離乳食なのだろう。かなり薄い白湯みたいな麦粥を食べている。


 本当なら、僕の世話はアビーに任せて、自分のご飯を食べたらいいのに、クレアはどうしても僕のお世話がしたいみたいだ。


 二人にとって初めての子どもだし、思い入れも強いのかもしれない。


 僕も二人の期待に応えるように努力しないとね。


 そのための今日の魔法披露だ。


 窓から見ていると、井戸はあるようだが、この村はひどく乾燥している。遠くには森が見えるんだけど、なぜこんな乾いた所に村を作ったんだろう? 森が近くにあったの方が便利な気がするけど……。


 でも、ここに水の魔法を使える僕がいる。


 畑の水やりはもちろん、さまざまなところで水の魔法を使って、村の発展に貢献したい。


 そしたら、村も豊かになるし、村人も両親も喜んでくれる気がする。


 魔法を披露したら、もう気兼ねなく魔法を使えるし、両親やアビーの役に立ちたいんだ。


「ふぅ、ごちそうさん」

「ごちそうさまでした」

「あい!」


 そしてついに夕食の時間が終わり、僕はクレアに抱かれて両親の寝室へと戻る。


 クレアがいつも通り僕を抱っこしながら大きなベッドに腰かけた。


 今だ!


「ちょええええええええええええ!」

「あら? キース、どうしたの? お腹空いちゃった?」

「おいおい、さっき食べたばかり……何だあれは!?」


 父親の驚いた声が寝室に響き渡る。その視線の先にいたのは、一匹の水でできたリアルな魚だった。もちろん、僕の作ったものである。姿かたち、大きさはクマノミを参考にさせてもらった。


 クマノミは父親の声に驚いた様子を見せ、急いでいつの間にか壁にくっ付いていたイソギンチャクの中に身を隠した。


 ちなみにこのイソギンチャクも僕が水を操って作ったものだし、クマノミの挙動も僕が操っている。


「何だ、あれは……?」


 父親が水でできたイソギンチャクを見て戦慄したような声を出していた。


 クレアまでギュッと僕を抱きしめてくる。


「うー……」


 クマノミといえばイソギンチャクなんだけど、もしかして、二人ともイソギンチャクを知らないのだろうか?


 まぁ、イソギンチャクは不評なようなので、すぐに次にいこう。


 僕は次々と魚たちを水で創っていく。


 巨大なアジの群れ。アジの群れに突撃していくイルカ。のんびりとウミガメが泳いでいたり、マグロやタコまでいる。


「うお!?」


 父親が足元も見て驚きの声をあげていた。


 そう。僕はどこまでも妥協しない。足元にもカニやヤドカリがカサコソと動いているのだ。


 その時、父親が信じられない行動に出た。


「どりゃあ!」


 なんと、近くにいたカニを思い切り蹴飛ばしたのである。


 これは、試されているのかもしれない!?


 僕は即座に蹴飛ばされたカニだった水を空中でクマノミにすると、何事もなかったように泳がせる。


「な!? 水だぞ! これ全部水か!?」

「あなた! キースが!」

「なんッ!?」


 さすがに操る魚の量が増えてきて、僕は両腕を伸ばして両手の指で指揮していた。


 その様子を見て、クレアがハッと気が付いたような声を出す。


「もしかして、これ全部、キースが……?」

「バカな! しかし……」


 いつの間にか剣を抜いていた父親は、驚いた表情で僕を見た。


「たしかに、こちらに対して害意は感じない。本当にキースが……?」

「あーい!」


 さすがに剣を抜かれるのはマズいと思って、僕は一生懸命うんうん頷く。


 いつの間に剣を抜いたんだよ。怖いよ。


 どうかそのまま納めてください。


「あなた! キースが頷いています!」

「まさか、言葉まで? 今日はもう驚くのに疲れたんだが……」


 水族館から着想を得て、二人に癒しを届けるはずだったんだけど、父親は疲れてしまったらしい。僕もまだまだだね。


「でも、見てください。こんなに綺麗……!」


 クレアが手を差し伸べた先。そこには窓があり、夕日の光が差し込んで、魚たちを照らしてキラキラ輝いていた。


「そう、だな……」


 父親は納得したのか、ゆっくり頷くと、ついに剣を鞘に納めた。勝った。


 両親ともやっと肩の力が抜けたのか、感心した表情で部屋の中を泳ぐ魚たちを見ていた。


「クレア、オレは魔法には詳しくないからわからないんだが、これは……魔法なのか?」

「わたくしにもわかりません」

「わからない?」

「はい。でも、いいじゃありませんか。せっかく、キースがわたくしたちのためにプレゼントしてくれたんですもの」

「そうか。そうだな……」

「ひゃーい!」


 やれやれ。父親が剣を抜いた時はどうなることかと思ったけど、両親が納得したのならなによりである。


 次はクライマックス。海の王者であるクジラの登場だ!


 さすがにクジラはこの部屋の中に入らないので、窓の外に創る予定である。


 驚いてくれるかな?

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