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069 品種改良計画

 アクロイド芋の品種改良をするにはどうすればいいか。


 僕は専門家じゃないからわからないことが多いけど、突破口は種にあると思っている。


 クローン栽培されたアクロイド芋ではなく、ちゃんと受粉させてDNAを交換して種を作る必要があると思う。そうしないと、いつまで経ってもアクロイド芋はマズいままだ。


 ではどうするのか。


 ここからはかなり地道で時間がかかる方法しかない。


 それは、実際に食べてみて、おいしいと思えるアクロイド芋が生まれるまで、少しでも味がマシなアクロイド芋を掛け合わせて交配していくしかない。


 まぁ、元々アクロイド芋は育成の早い植物だし、アクアスライムを使った水耕栽培でさらに早くなっている。時間はかなり短縮されるだろう。


 あとは数でカバーかな?


 現在、水耕栽培の仕事をしているアクアスライムは十匹だけ。数を増やせば、それだけ確率も上がって必要な時間も短くなる。


 サトウキビの苗を育てるアクアスライムも必要だし、とりあえず三十匹ほど増やしてみようかな?


 最近は、アクアスライムは水魔法が大好きという情報が村人たちの間でも出回ってるし、僕一人が一生懸命魔力を注いで回らなくてもよくなった。今までアクロイドの大壺に水を溜めていた村人たちが、アクアスライムに水魔法を通して魔力を与えているのだ。


 これで僕が旅に行っても心配ないね。


 え? スライムが多い? ……たぶん大丈夫だよ。


「父上、この苗で試してみてもいいですか?」

「それはいいが……。それはもう元気のない苗だぞ?」

「たぶん大丈夫です!」


 そして、僕は十個ほどのサトウキビの苗を貰うと、アクアに分裂してもらって、新たに十匹のアクアスライムを生み出してもらう。


 生まれたばかりのアクアスライムたちは、ちょっとサイズの小さめだった。なので一匹ずつ魔力を注ぎながらその頭に苗を刺していく。


「いいかい? キミたちのお仕事は、この苗を育てることだ。たまに土を食べて、苗に栄養をあげてね。頼んだよ?」


 かなりいい加減な説明だけど、たぶん大丈夫だろう。アクアから分裂したアクアスライムたちは、アクアの知識をある程度持っているらしいのだ。


「ふぅー……」


 僕は定位置であるアクアの上に座ると、ホッと息を吐く。これからアクアスライムたちから収穫したアクロイド芋を食べ比べないとね。


「ただいまー」


 そうして、僕は屋敷の中に入ると、アビーにアクロイド芋を渡して、焼いてほしいと頼むのだった。


 ちなみに、水耕栽培したアクロイド芋は、畑の芋と同じクローン芋だ。味に変化はないだろうと思っていたのだが……。


「あれ? いつもよりマシな気が……」


 食べてみると、いつも食べているアクロイド芋よりもマシな気がする。おいしいというレベルじゃないけど、それでもマシだ。


「ディアナ、アビー! 食べてみてよ!」

「焼いた芋をですか……?」


 アビーが嫌そうな顔をする。そうだね。アクロイド芋を食べるときは、芋の味がわからないくらい味を濃くするのが普通だ。ただ焼いたアクロイド芋なんて食べたくないという気持ちはよくわかる。


 だが、嫌がるアビーを差し置いて、ディアナがいつもの無表情で芋を齧った。


 そして、無表情で咀嚼するディアナ。その顔からは何の感情も窺えない。


「どう? いつものアクロイド芋よりマシじゃない?」

「マシ、です」

「だよね!」

「本当ですか?」


 そんな僕らの様子を見て、アビーが恐る恐るといった感じでアクロイド芋を手に取って少しだけ頬張る。


「あら? あの独特のエグ味が少ないですね。それに少しだけ、甘い?」

「だよね!」


 やっぱり僕の勘違いじゃないみたいだ。このアクロイド芋は、いつも食べているアクロイド芋よりもマシである。


 なんでこんなことになったんだろう? アクアスライムを使って栽培すると、味がよくなるのだろうか?


 たしかに水は豊富だし、栄養もある。育成環境の違いでこんなに違いが出るのか。


 でも、これでアクロイド芋品種改良計画にも光が見えてきたね。父上を説得して、アクアスライムを使ったアクロイド芋の栽培に人を割いてもらおう。


 今のままだと僕の遊びの延長線上にあるものと思われてそうだからね。


 でも、実際にこのアクロイド芋を食べてもらったら、この重要性もわかるはずだ。


 しかし、まさか『レインボー・ファンタジー』の世界に来て、芋の品種改良に手を出すことになるとは思わなかったなぁ。


 前世では、日本人はおいしい食事に対して貪欲だと言われていたけど、僕にもちゃんと日本人ソウルがあったんだね。


 このままアクアスライムで育てたアクロイド芋を掛け合わせて、おいしいアクロイド芋を作ろう。


「アビー、今日の昼食だけど、いつもの昼食の他に焼いたアクロイド芋を出してくれないか? 味の比較ができるように、いつもの芋とこの芋で二つ」

「わかりました。これはぜひとも旦那様に知っていただかなければ!」


 アビーもやる気だし、たぶん上手くいくだろう。


 毎日食べるものだからね。少しでもおいしい方がみんなも喜んでくれるはずだ。

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