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064 新魔法、絨毯爆撃

「大地の中に水を流したんです! それで土を湿らせた状態で、余った水を気体にしたんです!」

「き、きたい?」

「はい! 水って温めると体積がものすごく増えるんですよ! 父上も鍋の蓋がコトコト鳴るのは知ってますよね?」

「あ、ああ……」

「あれは、気体になった水が鍋の蓋を押し上げるから起きる現象なんですけど、今回の魔法はアレの応用です! 鍋の蓋を押し上げるように、行き場を失った力が爆発したんですね。僕は思ったんです。僕が地面を湿らせた後、みんなが掘り返すのは重労働だなって。それで、どうにかならないか考えて、考えて、考えて、この方法を思いつきました! 見てください! 我ながら上手くいったと思います!」


 僕の目の前には、ちょっと凸凹になってしまったけど、地中深くまで掘り返された大地が広がっていた。しかも、土は水を含んでいる。これなら、少し整えるだけですぐにでも農業ができるだろう。


 我ながら見事な魔法だと思う。これなら、父上も褒めてくれるに違いない。


「ふむ……」


 父上は僕が爆発させた地面を見ながら、まるで自分を無理やり納得させるように一つ頷いた。


「さすがはキースだ! オレの期待をこうも簡単に飛び越えてくるとは思わなかったぞ! 皆、キースに感謝しないとな! おかげで楽ができるぜ!」

「い、今の、キース様がやったのか……?」

「見ろよ! 土が完全に湿って、掘り返されてるぜ!」

「すっげー!」

「やれやれ、アクロイドの神童はやることが違うな!」

「キース様万歳!」

「おかげで楽ができるってもんだ!」

「あとはちょちょっと形を整えてやるだけだな」

「それぐらいは働かにゃ! おっかあに叱られちまうぜ」

「ちげえねえ!」

「キース様万歳!」

「「「「「キース様万歳!」」」」」


 最初はきょとんとしていた村人たちだったが、理解が追いついたのか、歓声を上げ始める。


 アクアスライムたちもぽよんぽよんと弾んで大喜びだ。


 いやぁ、そんなに褒められると照れちゃうなぁ。


「キースが突破口を開いた! 全員、突撃!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」


 父上の号令を受けて、村人たちと掘り返された大地へと文字通り農具を持って突撃する。その後にぽよんぽよんと弾んで続くのはアクアスライムたちだ。


 村人たちがどんどん凸凹の大地を整えていき、アクアスライムたちが水が足りないところに水を撒く。その動きは洗練されていた。村人たちは日頃農業に従事しているし、アクアスライムたちもそのお手伝いをしている。もう連携体制ができているのだ。


「よし、オレも行くぞ! キースは屋敷に戻って休んでいろ。大掛かりな魔法を使って疲れているだろうからな。あとはオレたちに任せるがいい!」

「いえ、僕は大丈――――」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「夫……。はぁ……」


 大丈夫だと伝えようと思ったら、その前に父上は農具を持って行ってしまった。


 仕方ない。屋敷に戻るか。


「アクア」


 僕はアクアに乗る。そして屋敷に戻ろうと方向転換すると、シンディーが僕たちの行く手を塞ぐように立っていた。


「シンディー?」

「素晴らしいですわ、キース様! 私も魔法には詳しい方だと自負しておりましたが、あんな魔法、見たことがありません! 原理は聞いていましたが、まさかあのような発想に至るとは! 素晴らしい発想です! 最初に地面を蹴った時に、まさか大地に水を巡らせていたとは! あの魔法の最大の利点は、あんなに大掛かりな魔法なのに、準備段階で相手に悟らせないという点です! この魔法を実戦で使えれば、宮廷魔法使いなどもはや過去の産物! もうキース様に敵う魔法使いなどおりませんわ! あの魔法はどれほどの範囲で使えるのですか? 再発動までの時間は? 爆発の威力を上げることは可能なのですか? それと――――」

「うわー……」


 シンディーがその眼鏡の奥の瞳をキラキラさせて饒舌に語る。その質問攻勢に僕はもう引いていた。ドン引きである。


「行こう、アクア」

「あ! ちょっと待ってください! キース様あ?」


 僕の指示でアクアがシンディーを避けて進みだす。後ろからシンディーの声が聞こえるけど、無視だ。次ぎ会う時までに落ち着いているといいなぁ。



 ◇



 シンディーを撒いて屋敷に戻ると、いい匂いが漂ってきた。たぶん、アビーが昼食の準備をしているのだろう。


 予想以上に早く終わったけど、母上に帰還の報告をしようかな。


 まずは食堂に入ると、いい匂いが一層強くなる。


「アビー! 母上はどこにいるかなー?」

「奥様でしたら、寝室におられるかと!」


 食堂の奥の厨房に向かって問いかけると、厨房の中からアビーの声が返ってくる。


「ありがとー!」


 アビーにお礼を言って、僕はアクアに乗ったまま両親の寝室に向かう。その後ろには、当然のようにディアナが付き従っていた。


「どうぞ」


 コンコンコンッと寝室の扉をノックすると、中から母上の声が返ってきた。

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