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063 耕作大作戦

「ここが新しい畑候補地か……」


 目の前に広がるのは、クリーム色の大地が剝き出しになった荒れた大地だ。風が吹くたびに細かな砂の粒子が舞い上がり、視界が色づいていく。


 ここはアクロイド村の南にある土地だ。今までは慢性的な水不足から農地の拡大など夢のまた夢だったが、今では僕の魔法で水が豊富にある。このタイミングを逃すことなく畑の拡大の指示を父上は出した。


 アクアに乗った僕の背後には、ディアナ、シンディーをはじめ、村人たちの半分以上が木製の農具を持って集まっていた。そして、村人たちよりも多くの数のアクアスライムたちも待機している。


 荒れた大地を眺めるように僕たちの前方に立っているのは、畑拡大の指示を出した張本人である父上だ。父上自身も大剣の他に農具を持って、農作業に加わるつもり満々である。


 父上がこちらを振り返る


「諸君! 我々は歴史を作ることになるだろう! それも悲しい歴史ではなく、後世に誇れるような歴史だ! 今こそ、アクロイドの呪いに打ち勝ち、貧しさから脱却するのだ! 全員、準備はいいか?」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」


 父上の宣言に、村人たちが手に持った農具を突き上げる。アクアスライムたちもぽよんぽよんと弾んでやる気満々だ。


「今回の主役は、キース! お前だ!」

「あ、どうも」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」

「キース様がいりゃ百人力よ!」

「んだんだ! キース様、万歳!」

「あの方こそ、我らがアクロイドの民の希望!」

「アクロイドの神童に栄光あれ!」

「救世主様の登場よ!」


 僕も村人たちの方を向いて軽く手を振ると、村人たちから熱烈な歓声を浴びることになった。


 みんな僕のことを買いかぶりすぎだよ。でも、僕としてもみんなの期待には応えたいところだ。


「いいか? 作戦としてはこうだ! まず、キースとアクアスライムたちが地面を湿らせる! その後は、オレたちの出番だ!」


 そう言って、父上が手に持った農具を掲げるように持ち上げた。


「掘って掘って掘りまくる! オレたちで! この死んだ大地を蘇らせるぞ!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」


 父上の言葉に農具を振り上げて応える村人たち。その士気は天を衝かんばかりだ。


 みんな望んでいるんだ。もっと生活がよくなることを。


 多少マシになったとはいえ、アクロイド村の生活は苦しい。


 極端な乾燥で大地が干上がり、農作物もロクに育たない。しかも、塵肺の影響で平均寿命も短かった。


 シンディーがアクロイドに来て、呪いの正体は塵肺であると突き止めるまで、この地は呪われた土地とされていた。


 本当に生きるのには過酷な土地だ。


 僕が少しは対策したとはいえ、その元凶を絶ったわけじゃない。アクロイド村は多少マシになったとはいえ、依然として貧しいのが現状だ。


 やっぱり、早いうちに元凶を絶たないと……。


「じゃあキース、頼んだぞ!」

「はい!」


 まぁ、今は目の前のことに集中しよう。元凶を絶つには、もっと強くならないといけないし。


 僕の目の前には、荒れ果てた大地がずっと続いている。僕の仕事は、この大地を湿らせて、みんなが掘り返しやすくするためだ。


 でも、僕もちょっとは手伝った方がいいよね。僕が魔法で土を掘り返せば、その分、みんなが楽ができる。


「土を掘り返す魔法……」


 僕はシンディーに言われたことを思い出す。


 シンディーによると、僕はもう水魔法を極めているらしい。足りないのは想像力だと。


 僕には水魔法を極めたつもりはないけど、たしかに想像力は必要だ。


「土を掘り返す魔法……」


 そんな魔法は『レインボー・ファンタジー』には登場しなかった。ならば、僕は一から想像しなくちゃいけない。


 どうすれば水で土を掘り返すことができるだろうか?


「いけるかな?」


 数秒考えた結果、僕は地面に突き刺すように右足で乾いた大地を蹴る。


「キース? 地面を濡らすだけでいいんだぞ? 体調が悪いなら、スライムたちにやらせるから、遠慮なく言ってくれていい」


 父上がしゃがんで、僕の顔を心配そうに覗き込む。


「大丈夫ですよ父上。もうちょっとでできそうです」

「ん? そうなのか? あんまり無理は――――⁉」


 その瞬間、目の前の地面が、まるで爆撃されたかのように弾け飛ぶ!


「は⁉ 何が⁉」


 父上が驚いている間も、まるでクラスター爆弾でも落とされたように連続で爆発し続ける大地。そこから巻き上がるのは多量の土砂と白い煙だ。


「父上、上手くいきましたね!」


 僕は父上に褒めてもらえると思ってわくわくした気持ちで父上を見上げる。


 父上が、まるで油の切れた機械のようにギギギッと音を立てそうなほどゆっくりと僕を見た。


「キース、もしかして、これはお前がやったのか……?」

「はい!」


 僕は全力で頷いた。

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