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061 水耕栽培

「はーい、まっすぐ並んでねー」


 アクロイドの大壺がある村の中央広場。そこで僕はアクアに乗りながらある作業をしていた。


 それは、農業といえば農業になる。


 というのも、僕は一列に並んだアクアスライムたちに芋の蔓を刺しているだけなので、あまり農業をしているという気分はない。


 ぷすっと目の前のアクアスライムの頭に芋の蔦を刺すと、芋の蔦を刺されたアクアスライムは村人たちの手伝いに戻り、後ろの並んでいたアクアスライムが頭を差し出してくる。僕はその頭にまた芋の蔦を刺すだけだ。


 アクロイドで育てられている芋。通称、アクロイド芋は、味の悪いサツマイモのような味だが、アクロイド村では主食になっている。その見た目はジャガイモにそっくりだ。


 なぜアクロイド芋と呼ばれているかというと、原産地がアクロイド男爵領というわけではない。こんなマズい芋を食べるのはアクロイドの奴らくらいだという意味でアクロイド芋と呼ばれているらしい。


 ひどい話もあったものだね。


 まぁ、実際マズいんだけどさ……。


 そんなアクロイド芋だけど、繁殖力がめちゃくちゃ高い。こうして芋の蔓からでも再生して芋になる。この異常な繁殖力のおかげで、アクロイド男爵領のような過酷な土地でも農業ができるわけだね。


 マズいけど……。


 でも、僕が目に付けたのは、アクロイド芋の異常なまでの繁殖能力だ。ここまで強い繁殖能力、いや再生能力を持っているのなら、水耕栽培ができるのではないかと考えたのである。


 今までのアクロイド村では、水は貴重品だった。しかし、僕が魔法で水を供給したことによって、今のアクロイド村には余裕がある。


 しかも、水耕栽培用に大掛かりな施設を作らなくてもいい方法を考えた。


 それが、アクアスライム栽培である。


 アクアスライムはその成分のほとんどが水だ。そして、日中は外で村人たちの仕事の手伝いをしている。水よし、日光よしの好環境だ。


 あと必要なのは、アクロイド芋が育つために必要な栄養だけど、これはアクアスライムたちに土や腐葉土から取り込んでもらうので問題ない。


 一応、初めは実験的に十匹のアクアスライムでやってみるつもりだ。


 上手くいくならアクアスライムの数を増やせばいいし、失敗しても損失はない。できれば、ゆくゆくはアクロイド芋を品種改良しておいしくしたいな。


 アクロイド芋はおいしいものだと常識を覆してやりたいところだ。


「よし、これで終わり」


 集まってもらった十匹のアクアスライムの頭にアクロイド芋の蔓を刺すと、これで準備完了だ。あとは時間がかかるから、しばらく様子見だね。


 この後はどうしようかな?


 僕は屋敷に向かって歩くアクアの上で腕を組んで考える。


 今日はシンディーの授業はお休みだ。


 いつも通り大木剣で素振りする? それとも……。


 僕はそんなことを考えながら、アクアに乗って屋敷に帰ってきた。


 すると、ブオンブオンと風を切る音が聞こえてくる。見ると、父上が上半身裸の状態で、庭の真ん中で大剣を振っていた。


 父上は、忙しい中でもこうして大剣の訓練をサボることはない。豪快なところばかり目立つけど、意外と真面目なのだ。


 そうだ!


「父上! ただいま戻りました」

「うむ。おかえり」

「父上、僕に大剣の稽古をつけてくれませんか?」

「ん? キースにか?」


 父上は素振りをやめると、少しだけ考えるような様子を見せた。


「いいだろう。木剣を持ってこい。オレの分もな」

「はい!」


 僕はアクアから飛び降りると、玄関に置かれている大木剣と木剣を持って父上の下に向かう。


「どうぞ」

「ありがとう。さて、やるか」

「はい!」


 片手剣の木剣を構える父上。僕も大木剣を正眼に構える。


 見つめあう僕と父上。


 父上は動かない。僕が動くのを待っている。


「せあ!」


 なら、動く!


 大剣はその重さによる破壊力が最大の武器だ。


 ならば、重力を味方につけて最高の一撃を!


 僕は大上段に大剣を振り上げると、父上の右腰に向かって振り下ろす。


 僕と父上だと、身長差がありすぎる。だから、届く範囲で一番の急所を狙う。


 父上は余裕をもってバックステップを踏む。


 大剣は大質量武器だ。その性質上、軌道を変えるのも難しいし、その勢いを止めるのも難しい。


 そのままでは、大剣を振り切った状態を父上にさらすことになる。そんな大きな隙を見逃す父上ではない。


 このままでは負けるだろう。


 僕が敢えて力を抜いた状態で大剣を振っていなければ!


「ぐ……っ!」


 僕は歯を食いしばって大剣の勢いを殺し、今度は三歩踏み込んで切り上げるように大剣を振るう。


「ほう?」


 父上は面白くて堪らないとばかりにニカッとした笑顔を見せる。


 不意打ちのつもりだったんだけど、父上にはまだ余裕があるみたいだ。ちぇっ。


 父上が小さく右にステップを踏んだ。


 たったそれだけの動作で、僕の必殺の切り上げが回避されてしまう。


 このままでは負ける……!


「あああああああああああああああああああああああああああ!」

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