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059 ディアナの秘密

「あれ?」


 自室の中。僕はアクアの上に座って、一人で水族館のように魚やカニなどを作って魔法の練習をしていると、ふとディアナがいないことに気が付いた。


 ディアナは基本的にいつも僕のそばにいるけど、たまにこうしてふらりと姿を消すことがある。その間、ディアナがどこで何をしているのか、僕は知らない。


「いったい何をしているんだろう?」


 べつにディアナがどこで何をしていてもディアナの自由なんだけど、いつも僕の傍にいるディアナがいないと気になってしまう。


「アクア、ディアナを探しに行ってみよう。食べていいよ」


 僕がそう言うと、アクアが水の触手を伸ばして次々と宙を泳いでいた水でできた魚を捕食していく。


 なんとなく、アクアが嬉しそうにしているのがわかった。今まで食べるのを我慢していたからね。アクアは待てができる賢いスライムなのだ。ぷりちーだね?


 アクアの食事が終わると、僕はアクアに乗ったまま移動を開始した。


 アクアは触手を伸ばして自分でドアも開けれるから移動が楽だ。賢いし、かわいいし、最強かな?


 それから、食堂や父上の書斎、物置部屋やキッチンまで探してみるけど、ディアナの姿はどこにもいなかった。


「どこにいったんだろう?」


 べつにディアナに用があるわけじゃないから、探さなくてもいいんだけど、あの何を考えているのかよくわからないディアナが、僕の護衛よりも優先する事柄に興味があった。


 ディアナは基本無表情だから、何を考えているのかあんまりわからないことが多い。でも、僕の護衛を完璧にこなそうとしているのは知っている。一時期はアビーが僕を毒殺しようとしているのではないかと本気で疑って監視して、アビーから苦情が来たくらいだ。


「外に行ってみようか」


 僕の言葉にアクアが移動を開始する。玄関を抜けて庭に出ると、そこにもディアナの姿はなかった。


「どこに行ったんだ?」


 庭に生えてる木の裏を見たり、草むらをかき分けてみたけど、やっぱりディアナは見つからない。


「うーん……。ん?」


 その時だった。コココッと何かが硬いものを叩くような音が聞こえた。まるでキツツキが木を叩いているような音だ。それはどうやら屋敷の裏から聞こえてきているみたいだ。


「アクア、行ってみよう」


 アクアはぽよんと一回弾むと、屋敷の裏に向かって進み始める。


 スライムって歩くときに振動がないから、乗っているのはかなり快適だ。やっぱりスライムは最高だぜ!


 屋敷の裏に近づいていくと、コココッという音が大きくなる。やっぱり誰かいるみたいだ。


 ディアナだろうか?


 一応、屋敷の陰からそっと覗くと、そこには誰もいなかった。


「あれ?」


 さっきまで聞こえていたコココッという音もなくなっていた。人のいた形跡もない。


「屋敷の裏ってこんなことになってたんだ……」


 屋敷の裏はちょっとしたスペースになっていて、丸太が何本か縦に置かれている。その丸太には、びっしりと黒いものがくっ付いている。


「なんだこれ?」


 丸太に近づいてみると、それが艶消しされた黒くて短い鉄の棒であることがわかる。


「見たことあるぞ……」


 たしか、これはディアナが父上との模擬戦の時に使っていた棒手裏剣だ。これが木に刺さる音が、コココッという謎の音の正体なのだろう。


 ここに棒手裏剣があるということは、ディアナがさっきまでここにいたということだ。


 だけど、ここにはディアナの姿が見えない。


「いったいどこに――――」

「ご主人様、何か御用ですか?」

「ほえ⁉」


 その時、背後から声をかけられて驚いてしまった。アクアも驚いたのか、ビクリとぷにぷにボディーを震わせる。


 慌てて振り向くと、そこにはいつもの無表情を浮かべたディアナの姿があった。


「なんだ、ディアナか……。驚かせないでよ……」


 びっくりしすぎて、心臓が口から飛び出るかと思ったよ。いつの間に僕たちの背後に回ったのだろう?


 やっぱり暗殺者としての性なのだろうか?


「申し訳ございません」


 ぺこりと頭を下げるディアナ。


「べつに怒っているわけじゃないんだ。頭を上げてよ」

「はい」

「それで、ディアナはここで何をしてたの?」

「練習です」

「練習?」

「練習しないと強くなれませんので」


 そう言って、ディアナが棒手裏剣の刺さっている丸太に近づくと、棒手裏剣を抜いていく。


 そして、流れるような動作でロングスカートを捲った。


「ディ、ディアナ⁉」


 この子はいったい何をする気なんだ⁉


「はい?」


 なぜかスカートを捲った状態でこちらを向くディアナ。


「えっ⁉」


 そして、僕は驚くことになる。


 なんと、ディアナのスカートの裏側には、びっしりと棒手裏剣が縫い付けられるように収納されていて、真っ黒になっていた。


 いつもこんなにいっぱい棒手裏剣を持ち歩いてるの⁉


 たしかに棒手裏剣は一つ一つは軽いだろうけど、それでも金属製だ。こんなに持っていたら、かなり重たくなるんじゃないだろうか?

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