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056 お爺ちゃんと大剣

「これがオレの親父、キースのお爺様の墓だな」


 その墓の前の地面には、鉄の棒が刺してあった。鉄の棒には茶色く砂に汚れた革が巻いてある。これ、何だろう?


「こいつはな、親父が愛用していた大剣の柄だな」

「大剣の柄……?」


 何でそんな物が刺さってるんだろう?


「親父は大剣の名手でな。王都で騎士団相手に剣を教えていたんだぜ? すっげーだろ?」


 父上はまるで自分のことのように嬉しそうに話す。その様子だけで父上がお爺ちゃんのことを大好きで尊敬していることが伝わってくる。


 しかし、次の瞬間、父上の顔が曇る。


「親父はキースが生まれてくるちょっと前に死んじまってな。一目、キースを見てほしかったんだが……」

「そっか……」


 お爺ちゃんにとって僕は初孫になるのかな。僕にはまだわからない感覚だけど、世のお爺ちゃんお婆ちゃんが孫に甘いといわれているのを考えると、僕の誕生を何より楽しみにしていたかもしれない。


「親父、また来たぜ。今日はキースも連れて来たんだ。見てくれよ、こんなに大きくなったんだぜ? ほら、キースも挨拶してくれ」

「初めまして、お爺様。キース・アクロイドです」

「本当にできた息子でな。親父も見てたら驚くぜ? 親父も聞いてただろ? キースはアクロイドの悲願に挑むつもりだ。もちろん、オレも解決に全力を尽くすつもりだぜ? 任せてくれよ」

「僕も頑張ります!」


 父上が誓うのに合わせて、僕ももう一度誓う。


 必ず、アクロイドの呪いを終わらせてみせる!



 ◇



 お墓参りから帰ってきた後、僕は自室で机に向かっていた。


「キース様は数学はできるのですけど、国語がちょっと……」


 僕の家庭教師に就任したシンディーは、困った顔をしている。本人の言葉通り、僕の国語のテストの結果が芳しくなかったからだ。


「なかなか難しくてね……」


 でも、僕としては声を大にして言いたい。日本で六年以上も英語を勉強したのに習得できなかった僕だよ? 異世界の文字相手にむしろ健闘している方だと。


「読みはできていらっしゃるのですけど、書きの方が苦手なようですわね。こちら、単語が間違っておりますわ」

「はい……」


 読みの方はわからない単語があってもその前後から類推できるけど、書きになるともう記憶力勝負だ。


 でも、まだシンディーから勉強を教わって一年にもならないけど、前世の英語よりはできている気がする。やっぱり言語を話せるのが大きいのかな?


「間違った単語は十回ずつ書き取りをしてみましょう」

「はい」


 単語の意味を確認しながら、僕は単語を書きとっていく。


 見ての通り国語が苦手な僕だけど、その学習意欲は高い。


 なぜかって?


 だって、国語ができれば、歴史書が読めるようになるんだ。『レインボー・ファンタジー』のガチ廃人だった僕にとって、歴史書は大好きなゲームの設定資料集みたいなものだ。早く読みたいよね?


 でも、歴史のお勉強より、まずは読み書き計算らしい。


 まぁ、わからなくはないけどさ……。早く歴史を勉強したいよ!



 ◇



 次の日。


 今日は朝から警備隊のみんなと一緒に剣の稽古の日だ。腰に木剣を差し、後ろにディアナを従えて屋敷の庭へと急ぐ。


「みんな、おはようございます!」

「「「おはようございます、坊ちゃん」」」


 僕が庭に行くと、もう警備隊のみんなが揃っていた。


「おはよう! 皆、揃っているな?」


 しばらくすると、愛用の大剣を担いだ父上が姿を現す。


「今日も張り切って稽古だ! っと、その前に……。キース!」

「はい!」

「試練を乗り越えたお前に、オレからのプレゼントだ」


 父上に呼ばれたので父上の前に行くと、今までよりも大きな木剣を渡された。


 それは大きいという言葉では不足なくらい巨大な木剣だった。刀身は細めだけど、その長さは僕の身長よりも若干大きいくらいだ。


「お前には大剣の素質があるって話はしただろ? だから、今日からその大剣用の木剣で稽古だ!」

「はい!」


 父上から渡された大木剣はかなり重たい。構えてみたけど、持ってるだけでぷるぷる腕が震えてしまう。


「はっはっはっ! まあ、最初は誰でもそんなもんだ! これからは筋肉も付けないとな!」

「はい……!」


 大木剣を構えていると、返事をするのも一苦労だ。


「キースは大剣の素振りだな。他の皆もいつも通り素振りからだ」

「「「「はい!」」」」


 警備隊のみんなと一緒に元気に返事をする。僕もだいぶ体育会系的なノリに染まってきたね。


「キース、いったん体の力を抜いてみろ。大剣を扱うにはな、コツがいるんだ。まずはこう持つ。そして、腹に力を入れろ。腹と腰がすべての基本だ。腕の力だけで振ろうとするなよ? 体全体を使って振るイメージだ」

「はい!」


 その後、父上からマンツーマンで大剣の振り方を教えてもらった。意外にも父上の教え方はわかりやすかった。父上ってちゃんと考えて剣を振っているんだなぁ。あまりにも意外すぎて僕は父上の横顔を見つめてしまう。


「どうした? 腕が止まってるぞ?」

「は、はい!」

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