↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
52/143

052 スローになった世界

「いやあ! 今日は本当によくやったぞ、キース! お前は見事試練を乗り越えた! さすがだな!」


 アクアに乗った僕は、父上に頭を撫でられながら村への帰路へとついていた。


 僕たちの後方には、僕と一緒にアクアに乗ってるディアナ、その後ろには木こりたちが並び、その後ろには大量のアクアスライムたちが木材やモンスター素材を運び、警備隊のみんなは、アクアスライムたちを守るように並んでいる。


「ゴブリン、ホーンラビット、リザード。キースはもうこのあたりに負けることはないな。次はセンチピードといきたいところだが、あいつは装甲が硬いから真剣じゃないと難しいか」


 センチピードは、たしかこの辺りに出現するムカデのモンスターだったはずだ。ゲームでも物理防御力が高かったけど、その防御力の高さはこの世界でも共通らしい。


「キースが真剣を持つのは二年後か。楽しみだな」

「二年後ですか?」


 二年後といえば、僕はちょうど七歳になることだ。何かこの辺りの風習で決まっているのだろうか?


「うむ。この辺りでは七歳なると、刃物を持つことを許される許刃の儀がある。ディアナも刃物を持ってるだろ? まあ、この辺りの伝統行事みたいなもんだ」

「なるほど……」


 ゲームでは出てこなかったけど、そんな風習があるんだね。『レインボー・ファンタジー』のガチ廃人としては、この世界のことが知れて嬉しい。


「どうだ? 早く七歳になりたいだろ? わかるぞお。オレも子どもの頃、早く七歳になりたくてたまらなかったからな」


 僕の嬉しそうな顔を見て勘違いしたのか、父上がそんなことを言った。


 たしかに、僕と同じように五歳でゴブリンを狩っていた父上なら喜びそうだね。


「今日のキースの動きを見て思ったんだが……」


 その時、父上が急に真剣な顔をして話し出す。


 僕も背筋を正してその後の言葉を待った。


「実戦になると、キースは急に太刀筋がよくなる。しかも、動きが正確で素早い。たまにいるんだが、どんなに練習しても実戦になると固まっちまう奴がいるんだ。こういう奴になかなか剣の道は難しい。だが、キースは逆だな。実戦の方が動きがいい。お前は強くなれるぞ!」

「ありがとうございます!」


 たぶん、すべてがスローになった世界で動いていたからだろう。


 すべてがスローになった世界。その正体はわからない。でも、戦闘ではかなり役立つ能力だ。それは父上ほどの歴戦の戦士から見ても僕が上達したように見えるらしい。


 問題は、任意では発動できないという点だね。今のところ、体が危険を感じた時に発動する危機回避能力という感じだ。


 事実、ゴブリンとの戦闘が三回目以降になると、体がゴブリンを脅威と感じなくなったのか、能力は発動しなかった。


 じゃあ、初めての相手なら発動するのかというと、ホーンラビットというツノの生えたウサギの相手をする時は発動しなかった。


 もっと詳しい発動条件を調べる必要があるかもしれない。そして、いつでも発動できるようになれば最高だ。


「今日のキースの動きを見て思ったが、キースはやっぱり大剣向きかもしれねえな」

「大剣ですか?」

「うむ。キースは同年代の子どもと比べると背が高いからな。それに、太刀筋が綺麗だ。こういう奴は大剣が向いてる」


 僕にはよくわからないけど、父上の目から僕は大剣向きに映るようだ。父上ほどの実力者がそういうのならば、間違いはないだろう。


「僕、大剣を練習してみます!」

「そうだな。これからは大剣用の稽古メニューを考えてみよう。強くなろうな!」

「はい!」


 父上も僕には強くなって欲しいみたいだ。それは僕のこの世界を見て回りたいという目的とも合致する。


 モンスターの蔓延る世界だからね。僕自身が強くないと世界を見て回るなんて夢のまた夢だ。僕は強くなりたい。


 でも、父上は何で僕に強くなって欲しいのだろう?


 やっぱりこのアクロイド男爵領は辺境だから、強さが重視されたりするのだろうか?


「父上、僕が強くなったら嬉しいですか?」

「うん? そうだな。キースにはこのアクロイド男爵領の始まりについて話したことがなかったな」

「アクロイドの始まり……?」


 そういえば、聞いたことがなかったな。僕のゲーム知識では、この土地は誰の領土でもなかったはずだ。領地を貰えたということは、ご先祖様が大活躍でもしたのだろうか?


「いまからざっと百年前。人間と魔族の大戦争があったんだ」


 百年前。ちょうどゲームの時代だ。主人公たちが魔族の奉じる邪神を封印した戦いである。主人公たちのやったこと。それは暗殺に近い。人類連合と魔族が戦っている戦場を迂回して、地上に姿を現した邪神に近づき、邪神を倒した。


「その時、人類を守る最後の砦、グラッツヴァール大要塞ってのがあってな。オレたちのご先祖様は、そこを守る兵士長だったらしい」

「グラッツヴァール……!」


 僕は驚きを隠すのを苦労した。


 だって、グラッツヴァールは――――!


「そのうちシンディーから習うだろうが、グラッツヴァール大要塞は陥落した。だが、魔族はそれ以上進軍できなくなったんだ」

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。