↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
46/143

046 剣術稽古

「ですから、キース様は今後、剣を習うというのは理に適っていると思いますの。今でこそ、魔法剣士という言葉は魔法も使える剣士が名乗る肩書ですが、大昔は魔法も剣技も一定以上修めたものしか名乗れないものだったとあります。そして、一番重要なのは……」


 そこでシンディーは言葉を区切って、まるで恋している少女のように視線を僕に向ける。


「一番重要なのは、キース様ならロストマジックの再現も可能ではないかという点ですわ」


 ロストマジックか……。


 『レインボー・ファンタジー』の主人公は、邪神を封印するために、邪神を奉じる魔族を倒すために、エルフの国『アディエルソン』で修行する。その時、人間の国では失伝してしまった古代魔法を習得するのだけど、この古代魔法がいわゆるロストマジックと言われているものの正体だ。


 古代魔法はMPを大量に消費するけど、その威力は抜群だ。それ故に、エルフたちは主人公に邪神封印という目的遂行のために古代魔法を伝授したけど、主人公が他の人に古代魔法を伝授することを許さなかった。


 シンディーが古代魔法を知らないということは、主人公はエルフたちとの約束を守ったのだろう。


 まぁ、主人公はエルフたちと制約の魔法を結んだから、人に古代魔法を教えたくても教えられなかったかもしれないけどね。


 でも、僕は『レインボー・ファンタジー』のガチ廃人だ。もちろん、古代魔法の詠唱も覚えている。


 とはいえ、ゲームの主人公はすべての属性魔法が使えたけど、僕は水しか使えない。たぶん、使えても水の古代魔法だけだろう。ちょっと悔しい。


 しかし、シンディーの前で使うのは避けた方がよさそうだね。何で知ってると聞かれたら困るし、エルフたちの反応も心配だ。


 でも、シンディーが僕に剣を熱心に勧めてくる理由がわかった気がする。


 シンディーの言うロストマジック、古代魔法を最後に使えた人間であるゲームの主人公。彼は剣も魔法も使えた。たぶん、剣術がロストマジックのカギになるとでも考えているのかもしれない。


 ん? 待てよ?


 そこで僕は思い出した。ゲームの主要キャラたちは、みんな魔法の他にも攻撃手段を持っていた。例えば剣だったり、槍だったり、ハンマーだったり、弓だったりだ。


 そして、『レインボー・ファンタジー』に登場するモンスターの中には、魔法に対して高い耐性を持っているモンスターも登場する。僕もゲームの主人公たちのように冒険をしたいということは、魔法以外の攻撃手段があった方がいいかもしれない。


「なるほど……」


 魔法だけでもなんとかなるけど、魔法以外の攻撃能力も欲しいな。


 それに、断るのも大変そうだし、ここは素直に剣を習おう。


「僕、剣を習います!」

「そうか! やはりアクロイドの男はそうでなくてはな! では、さっそくやるぞ!」

「あなた、まずは朝食を食べないと」

「はっはっはっ! そうだったな!」


 立ち上がりかけて、母上の言葉でまた座り直す父上。そして、もりもりと朝食を食べ始めた。


 父上は大男だからね。たぶん、二メートルは軽く超えてるね。だから食べる量も半端ない。僕もたくさん食べて、父上ほどではないにせよ背丈は欲しいなぁ。


 そして、朝食が終わった後、僕は父上と母上、そしてシンディーと一緒に館の庭に出た。もちろん、僕の腰には父上から貰った木剣を装備である。父上も僕に合わせてか、いつもの大剣ではなく、木剣を持っていた。


「いいか、キース? まずは素振りからだ。キースはまだ体ができあがっていないからな。実際に打ち合いをするのはもっと後だな。今から手本を見せるから、よく見てるんだぞ?」

「はい!」


 父上は木剣を正眼に構えると、剣を頭の上に振り上げて、振り下ろす。その動きは流れるように澱みはなく、美しいとさえ思った。


 そのまま十回ほど素振りをすると、父上はこちらを向いた。


「こんな感じだな。キース、やってみろ」

「はい!」


 僕はできるだけさっき見た父上の動きを真似るように素振りをしてみせる。


「うーむ……」


 父上は僕を難しい顔で見ていた。


 え? そんなにひどかった?


「キース、お前は何を斬るんだ?」

「え?」


 突然、なぞなぞのような問いかけを父上にぶつけられて困ってしまう。


「お前からは斬る覚悟が伝わってこない。これじゃあ棒を振り回しているのと変わらんぞ?」

「斬る覚悟……」


 僕はハッと思った。


 そう。僕が剣術を習うのは、戦うためだ。戦うためには相手がいる。そして、その相手を斬って倒す。言葉を飾らずに言うなら、殺す覚悟が必要だ。


 僕は誤解していたのかもしれない。素振りは、正しいフォームを覚えるためにやるものだと思っていた。


 でも、父上は違う。素振りから斬る覚悟を僕に問うてきた。


 きっと、アクロイド男爵領で生きるためには、必要な覚悟なのだろう。


 日本の剣道をお遊びとは思わない。あれは心を磨くものだ。


 でも、この世界での剣術は生き死にを賭けたものになる。故に、まず覚悟を持たないといけないのだ。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。