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045 気付き

「キース、今日から剣術を練習するぞ」

「え?」


 それはいつもの朝食の席だった。突然、父上がそんなことを言う。


 僕にとって、それは寝耳に水だった。


 だって、僕は魔法使いだ。しかも、シンディーが言うには、かなりレアな魔法使いらしい。僕は魔法使いの適正が高いと解釈している。


 事実、あれから何度も父上と一緒に狩りに出かけたけど、僕が勝てないモンスターはいなかった。


 てっきり僕は、魔法使いとして成長すればいいのかと思っていたんだけど、違うのだろうか?


「父上、僕は魔法使いになるつもりです。剣を習う必要があるのですか?」


 僕は素直に疑問をぶつけてみると、父上はチッチッチッと人差し指をまるでメトロノームのように振る。


「オレと模擬戦をしたキースならわかると思うが、魔法使いってのは接近戦に弱い。ここまではいいな?」

「はい」


 たしかに、あの時の僕はとにかく父上に近づかれないように動いた。だって、父上の武器は大剣だ。大剣の届かない範囲から攻撃し続ければ、理論的には勝てるはずである。


 まぁ、結果は引き分けだったんだけどさ。ちぇっ。


「だが、もしキースが剣を使えたらどうだ?」

「僕が剣を……?」

「そうだ! 取れる手段が増えるだろ? 敵に接近されても、剣で応戦すればいい」


 たしかに父上の言うこともわからないわけじゃないだけど……。


「魔法と剣術、どちらかを集中して鍛えた方が早く強くなれるのではないですか?」

「それについては私から説明しますわ!」


 バーンッと食堂のドアを開けて現れたのは、シンディーだった。いつもながらグラマラスな体型をぶかっとした修道服で隠している。


「シンディー、もう来たのか? 早かったな」

「それはもうキース様のことですもの。居ても立っても居られませんでしたわ」


 父上がシンディーを呼んだのかな?


 でも、シンディーはどちらかというと治癒魔法使いのイメージしかない。シンディーも実は剣を使えるのだろうか?


「シンディー、朝食は済ませましたか? よろしければ一緒に食べましょう」

「ありがとうございます、奥様。ご相伴に与りますわ」


 そう言って椅子に座るシンディー。


「どうぞ、シンディー様」

「ありがとう、アビー」


 アビーはシンディーの訪問を予想していたのか、すぐにシンディーの朝食を用意する。アビーに礼を言って、シンディーはこちらを見てきた。


「キース様、ディアナには満足していますか?」

「うん。ディアナはいつも僕によくしてくれるよ。それよりも、話って? シンディーも剣を使うの?」

「剣? 私は使いませんわよ?」

「え?」


 シンディーは僕が剣を習うことを勧めるために来たんじゃないの?


「ですが、キース様は剣をお習いになった方がよろしいかと」

「それはどうして?」


 僕としてはこのまま魔法を極めていきたいんだけど、剣を習うメリットって何だろう?


「それは、キース様がすでに水魔法を極めておられるからですわ」

「え?」


 それは初耳だ。僕がもう水魔法を極めている? そんなバカな。


「本当ですわ。これまで何度もキース様の魔法について訊いてまいりましたが、キース様の魔法は、人類史上類を見ないほど魔法の高みにいますわ」

「えぇー……」


 シンディーの僕への評価、高すぎない?


「さすがにそれは……」

「いいえ! そんなことございませんわ!」


 さすがに否定すると、テーブルにバンッと手を着いてシンディーが立ち上がる。


「キース様は自由に魔法を操れるんですよね? それはとてもすごいことなんですよ! すべての魔法使いの夢と言っても過言ではありませんわ! キース様に足りないものがあるとすれば、それは想像力です!」


 テーブルに身を乗り出すようにして、そう叫ぶように言ったシンディー。興奮しているのか、鼻息が荒い。


「想像力……」


 シンディーに言われてハッとする思いがした。


 たしかに、最近の僕には自由な発想が失われていたかもしれない。それは、『レインボー・ファンタジー』の知識があるからだろう。最近は、こんな魔法があったなと思い出して、それを再現していることが多いのだ。


 そういう意味では、赤ちゃんの頃の方が魔法を超能力だと勘違いしていたから魔法の使い方が自由な発想で使えていたと思う。


 魔法で水族館も再現したくらいだからね。


 それを考えれば、今は型にはまっていると思う。


「想像力……」


 想像力かぁ。たしかに、再現しようと思えば、ゲームで登場した水魔法なら全部再現できるんじゃないかな?


「うーん……」


 ちょっと考えてみる。たぶんだけど、水魔法の最高峰、タイダルウェーブすら僕なら再現できるだろう。


 そういう意味では、僕はもう水魔法を極めていると言ってもいいかもしれない。


 この気付きは大事にしよう。そして、正しく自分の力を理解しよう。魔法も言ってしまえば道具だ。道具の性能は正しく理解しないといけない。


 そうしないと、道具の性能を正しく引き出せないからね。

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