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044 アクロイドの日々

 アクアスライム。


 『レインボー・ファンタジー』では、アクアスライムは水の神殿を守るNPCとして登場するスライムだ。しゃべることはできないけど、水の神殿のお掃除なんかをしていた。


 そんな性質があるからなのか、アクアから分裂したアクアスライムたちは、村人たちの言葉を理解して、そのお仕事を手伝っている。


「アクア! 行くぞ!」


 窓からは子どもたち『赤のキツネ』に率いられて、十匹ほどのアクアスライムが村の中を移動しているのが見えた。


 アクアスライムは温厚な性格なのか、子どものお遊びにも付き合ってくれるのである。


 『赤のキツネ』のネイサン、ロニー、ミックもたくさんの部下ができて大喜びだ。


「あ! キース様だ!」

「おはよう、みんな。今日は何するの?」

「今日はこいつらに畑の水やりを教えるんだ」


 『赤のキツネ』のリーダーであるネイサンが胸を張って答える。その顔はとても誇らしげだ。


 アクアから分裂したアクアスライムたちだけど、僕がアクアのことをアクアと呼んでいるからか、みんながアクアスライムたちのことをアクアって呼び始めちゃったんだよね。ちょっとわかりづらい。


「いいね。昨日、父上がアクアスライムを使った水やりを試してみたけど、成功したみたいだよ。畑に行く時は、ちゃんとマスクをするんだよ? がんばってね」

「はい! じゃあ、失礼します。よし、行くぞ!」


 ネイサンの号令で『赤のキツネ』の面々とアクアスライムたちが畑の方に向かってぞろぞろ歩き出す。


 村の人たちもその姿を微笑ましそうに見ていた。


 今のところ、村人たちとアクアスライムたちの共存は上手くいってるみたいでホッとした。


 すべては、アクアスライムたちが予想以上に従順だったからだろう。人を襲うことなんてもちろんないし、当初危惧されていた作物をダメにすることもなかった。確実に人の役に立っている。今では、『赤のキツネ』のような子どもたちの遊び相手も任されるまでになっている。


 まぁ、僕の予想していなかった使い方もされているみたいだけどね。


 それは、一家に必ず一匹はアクアスライムがいることだ。そんな彼らの役割は、ウォーターサーバーが近いだろう。料理や飲み水にアクアスライムから水を貰っているのである。


 まぁ、アクロイドの大壺から自宅に水を運ぶのも大変だし、重労働だ。


 当初はアクアスライムが出す水を飲む人は少数派だったけど、今ではみんな飲んでいる。


 アクアスライムが出す水は冷たくておいしいと評判になっているくらいだ。


 一年を通して温暖で、雨が降らないアクロイド男爵領では、冷たいというのはそれだけでご褒美になるくらい貴重なのだ。


 アクアスライムは魔力を食べる生き物だ。村人たちに与えている水も魔力で創っているのか、たまに僕に魔力を貰いに来る。その時は感謝を込めて撫でながら、たっぷり魔力を注いであげるんだ。


 やっぱりこの村にはスライムが必要だと思った僕の直感は正しかったね。こんなに役に立つし、なによりかわいい! ぷりちーだ!


 村人たちもアクアスライムのかわいさにメロメロなのだろう。前より笑顔が増えた気がする。やはりスライムは偉大だ!


「すべてのスライムを揃えたいなぁ……」


 そんなことを呟いたら、ペチンとお尻を叩かれた。


「ほあ!?」


 驚いて後ろを見ると、くねくねと透明な触手が揺れている。その付け根は、僕が座っているアクアへと繋がっていた。


 僕が他のスライムも揃えたいなんて言ったから嫉妬したのかな?


「冗談だよ。僕はアクアがいればそれで十分さ」


 そう言ってアクアのぷにぷにな表面を撫でると、しゅるしゅると触手が引っ込んでいく。どうやら許してくれたらしい。


 僕はアクアにダイブして、全身でアクアのぷにぷにを感じる。冷たくて気持ちいいなぁ。


 まぁ、スライムを全種類集めたいのは本当だけど、さすがに人に害のあるスライムもいるから難しいかな。アクアたちが村人たちと共存できているのは、アクアスライムという種族だからというのが大きいからね。


 だって他のスライムときたら、強酸でなんでも溶かすスライムとか、超高熱のマグマでできたスライムとか、危険なスライムが多すぎる。


 そんな彼らにもかわいいところはあるんだけど、ちょっと人との共存は難しいし、飼うのも難易度が高すぎる。


 ちょっと残念だけど、仕方がないね。


 いや、逆に考えよう。このアクアスライムたちが村人たちに受け入れてもらえた状況が奇跡だと。


 普通はモンスターなんて人にとっては討伐対象でしかないからね。受け入れてもらえているこの状況は奇跡なんだ。


 そんなことを考えていたら、コンコンコンッとノックの音が飛び込んできた。


「どうぞ」

「失礼します。ご主人様、今日もモンスター討伐のお時間となりました。ご準備をお願いします」

「わかったよ、ディアナ。着替えたらすぐに行くね」

「かしこまりました。お手伝いいたします」

「いらないよ! 外で待ってて!」

「かしこまりました」

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