↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
43/143

043 お祝いと呪い

 そして、『レインボー・ファンタジー』のガチ廃人だった僕には、この地を蝕む呪いの正体がなんとなくわかる。


 だって、植林が上手くいかなかったのは、何か別の問題があったかもしれないけど、この土地だけ雨が降らないのはどう考えてもおかしい。


 それには必ず理由があるはず。そして、僕はその理由についてある程度見当がついている。


 本当は今すぐにでも解決したいけど、それはちょっと難しい。戦闘が予想されるからね。まずは、強くならないと。


 今日、父上たちと一緒に狩りに行ったわけだけど、あんまり強くなった実感はない。もしかしたら、レベルアップはゲームの主人公たちだけの特権で、僕のようなモブには適用されないのかもしれない。


「それはあんまり考えたくないけど……」


 レベルアップがないと、かなり厳しいものがある。『レインボー・ファンタジー』を極めた僕は、できる限り低レベルでのゲーム攻略を試したことも何度もあるけど、けっこうシビアだったんだよなぁ。


 できれば、モブにもレベルアップシステムが適用されているといいけど……。


 もし、僕の思った通りなら、アクロイド男爵領は呪いから解放され、蘇るはずだ。


 そうすれば、この広大な領地はアドでしかない。


 僕は空を見上げる。水のヴェールに覆われた向こうに見える空は、嫌になるくらい晴れていた。


 アクロイド男爵領が呪いから解放されたら、この地に雨も降るようになるだろうし、植林も上手くいくはずである。この水のヴェールもお役御免かな。村人たちの肺を定期的に洗浄する必要もなくなるだろう。


 そしたら、僕がこの村にいる必要もなくなる。


 僕はこの世界を冒険したい。それこそ隅から隅まで『レインボー・ファンタジー』の世界を楽しむつもりだ。


 どうやら百年前の主人公はサブクエストをクリアしていないみたいだからね。サブクエストやエンドコンテンツをクリアして回るのもいいかもしれない。


 そのためにも、やっぱりこの地の呪いをどうにかしないとね。



 ◇



 その日の夕食は父上が狩ったサンドリザードの尻尾肉のステーキだった。


 僕の大好物である。やったね!


 しかも、僕の夕食を料理してくれたのはなんとディアナらしい。護身術に料理。本当にディアナはなんでもできるね。


「キースが無事に帰ってきてくれて本当によかった。あなた、キースの活躍をもっと聞かせてください」

「まだまだあるぞ。実はな――――」


 母上は父上に僕の活躍を聞きたがっていた。父上もちょっと脚色を加えて楽しそうに僕の活躍を母上に聞かせている。ちょっと恥ずかしい思いがした。


「キース、本当にがんばりましたね。あなたはわたくしの誇りです」

「ありがとうございます、母上」


 パクッとサンドリザードの尻尾肉のステーキを頬張る。いつもよりちょっと苦い? サンドリザードの個体差なのだろうか? 日本でもイノシシの肉は時期によっては食べれたものじゃないなんて聞くし、サンドリザードにもおいしい時期とかあるのかもしれない。でも、脂が乗ってておいしいな。


 父上の話では、サンドリザードは尻尾に栄養を溜める習性があるようで、尻尾のお肉が一番おいしいらしい。そんな尻尾のお肉を優先的に食べられるのは領主一族だからだろう。


「それにしても、今日の食卓はやけに豪勢だな。いくらキースの初陣だとしても奮発し過ぎじゃないか?」


 父上の言う通り、食卓には所狭しと料理が並んでいる。それ自体は嬉しい。でも、悲しいけど、アクロイド男爵家の財政はあまりよろしくない。父上が心配するのもわかる。


「大丈夫ですわ。村の皆さんがキースの初陣祝いにたくさんの贈り物をしてくれたのです。それに、キースが皆さんの肺をお掃除したことにもお礼の品が来ていますの。わたくしたちでは食べきれないくらいいただいてしまったので、今はアビーが保存食作りに精を出しています」


 初陣って、べつに戦争に行くわけじゃないのに大袈裟だなぁ。でも、村の人々が僕を祝福してくれたみたいで嬉しい。


 それに、わざわざ肺の洗浄のお礼を持ってきてくれた村人もいるみたいだ。お礼なんてべつにいいのにね。でも、その心が嬉しかった。


 僕は将来、世界を股にかけて冒険をしたいけど、このアクロイド村が故郷なのは変わらない。僕の帰ってくる場所はここなのだ。


 だから、この村人には幸せになってほしい。


 そのためにも、そして恩返しのためにも、早くこの地の呪いを解かないとね。僕が冒険に出るのは、それからだ。


「そりゃ、今年の収穫祭は盛大にしないとな。辺境伯様にお願いしてみよう」

「あなた、また借金ですか?」


 母上が心配そうな顔で父上を見る。


「なあに、ちょっとだけだ。そんなに心配しないでくれ」


 借金かぁ。アクロイド男爵領は赤字経営なので、辺境伯に借金がある。アクロイドの人々は慎ましく暮らしているので、大した額ではないらしいけど、毎年借金してたら膨大になるよね?


 代々アクロイド家は辺境伯に借金してきた。父上も辺境伯に借金するのが当たり前みたいな感覚があるので、僕がなんとかしないと。


 なんとかして借金返済の方法も考えないとなぁ。五歳で借金返済を考えなくてはならないとはね……。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。