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042 村人たちの肺の洗浄

「じゃあモートン、アクアスライムに座って、口を大きく開けてくれ」

「はい」


 村の人たちに注目されながら、僕はついにモートンの肺を洗浄する。


 右手の人差し指から魔力を出し、水にする。その水をヘビのように操り、僕は口を大きく開けているモートンへと差し向けた。


「モートン、大きく息を吸って……。いくよ!」


 ついにモートンの口の中に水を侵入させていく。


 ここからは時間はかけられない。


「ん?」


 モートンの肺の中は、予想と違い頑丈だった。頑丈というよりも、分厚い?


 そんなことを思いながらも、僕はすぐにモートンの肺の洗浄を終わらせた。


 長い間アクロイドで生活してきたモートンだからか、父上よりも多くの砂が回収できた。これで少しは呼吸が楽になってくれるといいな。


「こ、これは……!」


 モートンが目をカッと見開いて、驚いた顔をしている。


「大丈夫、モートン?」

「爺ちゃん、大丈夫か!?」

「長老!」

「やっぱダメだったんじゃ……」


 みんながモートンを見守る中、モートンは両手の拳を突き上げて立ち上がる。


「かつてないほどに呼吸が楽になった! すごいぞこれは!」


 どうやら成功したみたい?


 僕はホッと胸を撫で下ろす。


「「「「「おお!」」」」」

「すげー! あんな元気な長老、初めて見たぞ!」

「肺の洗浄か……。ありかもな」

「まだ怖い気持ちはある。だが、試してみてもいいかもしれねえ」

「キース様、オラもお願いします!」


 あんなに息が苦しそうだったのに、今のモートンは咳もしてないし、呼吸も苦しそうじゃない。モートンを見守っていた村のみんなも喜びの声をあげる。中には、肺の洗浄に対して興味を持ってくれた人もいるみたいだ。


 長老のモートンが無事に肺洗浄を終えた。この意味は大きい。


「ありがとうございます、キース様! このモートン、このご恩は忘れません!」

「いやいや、僕もモートンに礼を言わないと。ありがとう、モートン!」


 モートンが率先して手を上げたりしなければ、村の誰も怖がって肺の洗浄をさせてくれなかったかもしれない。


「これが、モートンの肺の中に入ってた砂だよ」

「これが……」


 それは、ほんのちょっとの、目に見えるかどうかのもわからなくらいの砂の粒だ。


 この小さな砂の粒が、モートンを苦しめていた原因。


「ありがとうございます……!」


 モートンが僕の手を両手で取って、深く頭を下げる。僕の手に自分のおでこをくっ付けるような感じだ。


 これは母上に習った覚えがある。目下の者がする最高の礼だ。


 長年、塵肺で苦しんできたモートン。その苦しみの原因が取り除かれたのがよほど嬉しかったのだろう。


「すげー! キース様すげー!」

「オラもやってもうぞ!」

「んだな!」

「並べ並べ!」


 今では肺洗浄を受けるために順番に並んでいる村人たちの姿があった。


「では、キースの魔法を望む者は一列に並べよ。それから、今日は大量のモンスターの素材がある。仕分けも手伝ってくれ」


 父上の言葉に従って、村人たちが動き出す。


「キース様、お願いします!」

「いくよ?」

「はい! がばばばばばばばばばばばばば!?」


 僕は次々と並んだ村人の肺を洗浄していく。並んでいる村人の中には、大人もいれば子どももいる。子どもの肺は柔らかくて繊細だ。細心の注意を払って洗浄していく。


 まぁ、いざという時はシンディーの治癒魔法があるから、多少気は楽だね。


 いつも魔法の練習をしていたのがよかったのか、僕は失敗することなくすべての村人の肺を洗浄することができた。


「呼吸が楽になった! 今ならいつまでも歌えそうだ!」

「おめえの歌なんて誰も聞きたくねえよ! でも、いつもより声が出るな」

「んだんだ。喉がつるつるで、まるで油を塗ったみてえだ!」

「そんなに変わったのかぁ」

「俺たちはあんま変わんなかったな」


 やっぱり農作業などで水のヴェールの外に出る機会のある者たちほど違いを感じるみたいだ。子どもたちの中にはそんなに変化を感じない者もいるようだ。


「キース様、ありがとうございます!」

「坊ちゃん、感謝しますぜ!」

「キース様万歳!」

「いやいや。みんなも僕を信じてくれてありがとう。これからも定期的に肺の掃除しようね」

「「「「「はい!」」」」」


 そして、肺の洗浄を終えた村人たちが、父上の指示に従って持ち帰った木やモンスターの素材を解体し始める。


「はぁ……」


 その様子を見ながら、僕は考える。


 アクロイド男爵領は、男爵領としては破格の広さを誇っている。伯爵領とか侯爵領とか、上級貴族の領地と比べても引けを取らないどころか、たぶんアクロイド男爵領の方が広い。


 なぜそんな広大な土地を男爵なんかに与えられたか。


 それは、この地が領地のほとんどが砂漠一歩手前のような荒野だからだ。この土地は呪われている。まず雨が降らないし、何度も植林しても失敗してしまったのだ。こんな土地は誰も欲しがらなかった。


 だから、僕のご先祖様は男爵だけどこんな広大な土地を貰えたわけだね。

お読みいただき、ありがとうございます!

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水だから色んなものを治療出来そうですね。血液でも臓器でも血管でも。万能じゃん?
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