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039 分裂アクア

「今日はこのくらいにするか」


 その後、父上が今日の活動の終わりを告げる。


「「「了解です!」」」


 父上の号令に機敏に反応する警備隊のみんな。


「はぁくたびれた」

「まだまだ仕事はここからだぞ!」

「もうひと踏ん張りじゃ」


 木こりたちはもうヘトヘトな様子だ。


 木こりたちが倒した木は十一本、他にも狩ったモンスターの素材など、荷物が大量だ。これを何回も往復して村まで運ぶまでが今回の目的である。


 夕暮れにはまだ時間があるけど、荷物を運ぶ時間も考えたらギリギリになるかもしれないなぁ。


「この倒した木を運ぶのが一番怠いんだよなぁ」

「それは言いっこなしじゃて」

「早く分解しちまおうぜ」


 木こりたちが倒した木は、どれも一抱えはある立派な木だ。人の手で運べるような重さじゃない。だから、持てる重さまで木を小さく割って運ぶらしい。


 もちろん、木を運ぶのは警備隊のみんなも手伝うことになる。僕は初めての狩りだと浮かれていたけれど、みんなは村で生きるために必死でやってることなんだと理解させられた。


「僕も木を運べたらよかったのにね……」


 そう言って、僕は乗ったままだったアクアの表面を撫でる。


 僕も手伝いたいけど、まだ五歳の体は力がない。悔しい。


 アクアはまるで僕を励ますようにぷるぷる震えていた。


 その時、アクアが僕の右手をぱくっと咥えた。


「ご飯が欲しいの? 仕方ないなぁ」


 アクアに魔力を流すと、嬉しそうにぷるぷる震えながら魔力をどんどん吸収していく。


 アクアが喜んでいると、なんだか僕も嬉しくなって魔力の大盤振る舞いだ。好きなだけ吸うといいよ!


 アクアは遠慮しているのか、ちょっとずつしか吸わないんだよねー。ちょっとしか魔力が減ってる感じがしない。


「ん!?」


 しばらくアクアに魔力を与えていると、驚くべきことが起こった。


 なんと、アクアが増えたのだ!


 僕の乗っているアクアの他にも、アクアスライムがいるのである。


「え? どういうこと?」

「増えました」

「え?」


 その瞬間を見ていたのか、ディアナがポツリと呟く。


 増えた? どういうこと?


 そんなことを思っていると、アクアの一部がにゅんっと伸びた。そして、分裂して新たなアクアスライムが生まれる。


 新たに生まれたアクアスライムは、のそのそと木こりたちが倒した木に向かうと、よいしょっとばかりに持ち上げたのだ。


「もしかして……!」


 もしかして、アクアは僕の嘆きを聞いて、それなら僕の代わりに自分が運ぼうとしている……?


「うお!? 坊ちゃんのスライムが増えとる!?」

「見ろ! 木を持ち上げるとぞ!」

「もしかすっと、運んでくれるのか……?」


 分裂したアクアスライムたちは、「そうだ!」と言わんばかりに木を持ったままぽよんぽよん弾んだ。


「こいつは驚いたな。キースが命じたのか?」


 気が付けば背後にいた父上に問いかけられていた。


「違うんです、父上。アクアが僕が手伝えないのを悔しがってるのを知って、自分で考えて行動してくれたんです!」

「スライムが自分で……? 今日は驚くことばかり起こるな……。さすがに驚き疲れたぞ……」


 そう言って父上は頭が痛いと言わんばかりにおでこに手を当てていた。


「だが、これで一気に輸送の問題が解決するかもしれん! キース、スライムはもう増やせないのか?」

「どう、アクア? まだ増やせる?」


 アクアはまるで「任せとけ!」と言わんばかりにぽよんぽよん弾む。ついでに僕の体も弾む。


「父上、できそうです!」

「よし! じゃあ、できる限りスライムを増やしてくれ。アクアと言ったか? やるじゃないか!」


 父上がアクアの表面を撫でる。


 父上なりにアクアに歩み寄ってくれた瞬間かもしれない。


「ぷにぷにで冷たいんだな。クセになりそうだ」

「ですよね! それだけじゃなくて、とっても力持ちで、頼りになるんですよ! しかも、かわいい! 見てください、このまるで雫のようなこの流線型。これはもう癒し! 癒しの究極系ですよ! しかもですね、こうして座ることもできるんですよ! そう! 座りながら、寝ながら移動できるんです! これはかわいいだけじゃない! 実用性も兼ねているんです! かわいいのに! こんなにかわいいのに! それだけじゃないんです! アクアは――――」

「わかった、わかった。とにかく、キースがスライムが好きなのはわかった。では、スライムをがんばって増やしてくれ」

「わかりました! がんばろうね、アクア!」


 アクアは肯定するようにぽよんぽよん弾んでいた。ついでにアクアに乗っている僕もぽよんぽよん弾む。


 それからアクアは、総勢二十匹以上のアクアスライムを生み出した。それによって木はもちろん、モンスターの素材などもアクアスライムたちが持ってくれることになった。


「こいつは楽ちんですな」

「スライム様様だ」

「こいつら、触ると気持ちいいぞ!」


 アクアスライムたちによって楽ができて、警備隊のみんなも木こりのみんなも嬉しそうだ。


 アクアがいてくれてよかったなぁ。

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