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038 初めての狩り

 その時、ピシッとディアナがアクアスライムから立ち上がった。


「どうしたの?」

「ゴブリンです」

「ゴブリンか。どっち?」


 ディアナがすっとトムの方を指差す。


「アクア、あっちに行こう」


 指示を出すと、僕を乗せたまま意外にも速いスピードで移動する。この移動方法楽だなー。


「来ました! ゴブリンが四匹!」


 アクアの移動に少し遅れてトムがゴブリン発見の報告があがる。


 やっぱりディアナの索敵能力は見事だね。


「キースも来たか。……なんだ、そのそれは? スライムに乗っているのか?」

「はい! 便利で気持ちいいですよ!」

「そ、そうか……」


 父上は何と言ったらいいのかわからないとでも言わんばかりに微妙な顔をしていた。どういう感情の顔なんだろう? アクアはこんなに気持ちいいのに。


「スライムって乗れるんですな……。あ! それよりも、ゴブリンが来てますぞ!」


 トムもアクアに乗った僕に微妙な顔をしつつも、ゴブリンが来たことを告げる。


 茂みを割って現れたのは、報告の通り四匹のゴブリンだ。


「キース、いけるか?」

「やってみます!」


 父上に頷くと、僕は魔法を発動する。


 その時、ちょっとアクアが僕の魔力を吸収していたけど、見逃すことにした。


 アクアって食に貪欲なのかもしれない。


 そんなことを思っている僕の目の前に、透き通った無数の氷柱が出現する。


 僕が腕を振り上げると、氷柱はゴブリンたち目掛けて高速で飛翔していった。


 その結果生まれるのは、無数の氷の棘に貫かれたゴブリンの死体だ。青い血の池が地面に広がっていく。


 倒したモンスターは、ゲームのようにアイテムを残して消えることはない。まるで洗っていない獣のような匂いが鼻につく。


「ふぅ……」


 今日、僕はモンスターを倒した。その命を奪ったんだ。


 しかも、相手はゴブリン。人型のモンスターである。


 正直、魔法を使う前は少し怖いものを感じた。


 でも、実際に殺してみると――――。


「よくやった、キース! それでこそオレの息子だ!」

「おわ!? 父上!?」


 突然、僕は父上に抱き上げられ、まるで高い高いをされるように持ち上げられた。そのまま父上がくるくる回るものだから、僕の視界もぐるぐる回る。


「初めてでゴブリンを倒すとは、やるじゃないか! いや、キースならできると信じていたぞ! これでお前もアクロイドの戦士だ!」

「坊ちゃん! おめでとうございます!」

「おめでとうございます」


 父上、トム、そしてディアナ。みんながゴブリンを倒したことを祝ってくれる。


「お! ついにやったんですね! おめでとうございます、坊ちゃん!」

「おめでとうございます、坊ちゃん!」

「こりゃお祝いせな!」


 他の警備隊の二人や、木こりたちまで手を止めて拍手している。


 そうか。僕は――――。


 今まで、僕は命を奪うことを恐れていた。それはたぶん、前世で日本人として生きた記憶のせいだろう。


 どうしても、命を奪うのはかわいそうだと思っちゃうんだよね。


 そのくせ、自分は加工されたお肉を毎日のように食べていた。


 まぁ、矛盾の塊だったわけだけど、今日少しだけわかったことがある。


 それは、ゴブリンたちよりも、僕はアクロイド村のみんなの方が好きだということだ。


 僕がゴブリンたちを倒さなければ、いつかゴブリンたちがアクロイドのみんなを傷付ける日が来るかもしれない。


 そんなのは嫌だった。


 まぁ、これが僕のエゴだというのもわかっている。


 でも、それでいいんだと思えた。


 大事なのは、それを誰かの責任にしないこと。自分のしたことに責任を持つこと。


 今まで僕は、どうにかしてモンスターの命を奪うことを正当化しようと考えていた。


 でも、そんなのは考えなくていいんだ。


 これは人によっては当たり前のことなのかもしれない。


 しかし、僕にとっては大きな気付きだった。


 たぶん、僕はもうモンスターの命を奪うことに躊躇しないだろう。


「うっぷ!?」


 そんなことを父上にぐるぐるされながら考えていたら、気持ち悪くなってきた。


「ち、父上、気持ち、わる……」

「うお!? 吐くなよ! 頼むから吐くなよ!?」


 このままの体勢で吐いたら、父上にかかっちゃうからね。父上も焦るわけだ。


「ここでいいか?」

「はい……」


 父上が僕をアクアの上に乗せる。アクアの冷たいボディーが気持ちいい……。


 その後も、僕はモンスター発見の報告がある度にアクアに乗って現場に急行した。


 父上も僕をレベル上げしようと思っているのか、モンスターを戦うことに挑戦させてくれた。


 もし僕が倒せなくても、父上がなんとかしてくれると思うと、かなり安心する。


 僕も父上の期待に応えるように、ホーンラビットやゴブリン、ボアやサンドスネークなどなど、いろいろなモンスターを倒したよ。


 僕自身は実感はないけど、これだけ倒せば僕のレベルも上がっているんじゃないだろうか?


 まぁ、僕はステータス画面が見れないからわからないけどね。

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