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036 スライム実験

 スライム。


 一口にスライムと言ってもその種類はさまざまだ。電気をその身に蓄えるサンダースライムや、溶岩の体を持つマグマスライムなど、派生モンスターがいっぱいいる。


 メタ的なことを言えば、ゲームを作る時、スライムの色を変えるだけでいいから、いろんな種類がいるのだろう。


 その中でも、僕の目の前にいるのは、酸の体を持つオーソドックスなスライムだ。その特徴は、魔力を集めている点と、その変異性にある。


 先ほど父上は、スライムは植物を食べると言ったが、正確には違う。


 スライムは、物質に含まれているマナをその身に蓄えているのである。


 マナとは、魔力とも呼ばれることもある魔法の素である。ゲーム的に言うなら、MPだね。


 そして、どんな種類のマナを取り込んだかによって、スライムは進化していくのだ。


「待てよ……?」


 そこで僕はちょっと考えてみる。


 たしかゲームでは登場したけど、本当に可能なのかな?


 でも、そんなスライムがこの地にいたら便利そうだよね。


「よし!」


まぁ、スライムはいくらでもいるだろうし、試してみよう。ダメで元々。その時は、スライム好きの僕としては悲しいけど、僕の経験値になってもらおう。


 僕はスライムの傍へとゆっくり歩いて行く。


「あ! キース! いくら弱い酸とはいえ、顔に当たったら大変だぞ!?」

「まぁまぁ父上、ここは僕に任せてください。ディアナもそれでいいかな?」


 コクリと頷くディアナを見て、僕は指先に魔力を集めながらスライムへと手を伸ばす。


 すると、僕の魔力に反応したのか、スライムがこちらに近づいてきた。


「キース、気を付けろよ?」

「はい。でも、大丈夫そうですよ?」


 スライムは、僕の伸ばした指をぷにっと咥えると、そのまま僕の魔力を吸っていく。僕もそれに逆らわず、スライムに魔力を与え続ける。


 やっぱり想像した通り、スライムはひんやりとしていて、まるで水の中に手を入れたような感覚がした。


 スライムはプルリッと体を震わせると、消化途中だった草や葉っぱを体の外に出していく。たぶん、草や葉っぱからマナを集めるよりも、僕から貰った方が効率がいいと思ったのだろう。


 ちょっと濁ったような色をしたスライムだったけど、だんだん澄んだ水のように透明になってきた。まるで水まんじゅうのようだ。かわいい。


 そして、ぷるぷると波打つように震え出すスライム。何かが完了したことがなんとなく僕にもわかった。


 この世界はゲームの世界かもしれないけど、僕は主人公のような特殊能力は持っていない。例えば、モンスターの名前がわかる能力。この目の前のスライムが、僕の望む通りの進化をしてくれたのかわからない。


 主人公だったら、モンスターの名前もわかるし、アイテムの名前もわかるのに、現実って不便だね。


 僕の勘が確かなら、このスライムはアクアスライムという体が水でできたスライムになったはずなんだけど、ちょっと自信が持てない。


「もっと欲しいの?」


 僕がスライムに問いかけると、スライムがぽにょんぽにょんと弾んで、僕の指先から魔力を吸い始めた。その吸引力は、さっきよりも強い気がする。


「スライムが返事をした……? バカな、スライムは知性なんてないモンスターじゃないのか……?」


 後ろで父上が驚いた声をあげ、僕の隣では、ディアナがいつもは眠そうな目を見開いていた。ディアナも驚いているのかな?


 そして、僕も驚くことになる。


 なんと、スライムに魔力を注ぐと、その分スライムの体が大きくなっていくのだ。もう最初の頃に比べると二回りは大きい気がする。最初は僕が抱えられそうな大きさしかなかったのに、今ではちょっと無理そうだ。


「なんだか大きくなってないか? どうなるんだ、これ? というか、こんなに綺麗なスライムは見たことがない。モンスターを倒すのがもったいないと思ったのは初めてだ……」

「ダメですよ、父上。このスライムは飼いましょう!」

「飼う!? スライムを飼うのか!? いや、都会では掃除やトイレにスライムを利用しているが……。だが、いくらキースの頼みでもそれだけはダメだ。スライムを村に入れたら、せっかく育った野菜をスライムが食べてしまう」

「そんなことしないよね?」


 僕がスライムに問いかけると、スライムはまるで「そうだ、そうだ!」と言わんばかりにぽよんぽよん弾む。


「これは、頷いているのか?」

「そうですよ、父上。このスライムは、僕の魔力で成長したスライムです。野菜を食べるより、僕から魔力を貰った方が効率がいいと学習したはずです。もしかしたら、言うことも聞いてもらえるかも……」

「学習? スライムにそんなことできるわけないだろ?」


 父上の言葉に反抗するように、スライムはたぷたぷとその表面を波打たせた。


「わかるみたいですよ?」

「そんなバカな。こいつはただ音に反応しているだけだ。オレの言葉が本当にわかるなら、キースの周りを三回回ってみろ」

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