↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
27/83

027 キースとマークの模擬戦②

「ふぅ……」


 オレは、水に濡れた前髪を頭に撫でつける。


 窮地に追い込まれたオレは、すべてのウォーターボールを大剣で斬り裂き、活路を開いたのだ。


 キースのウォーターボールは非常に重たく、腕が疲れた。当たり所が悪ければ、一発で意識を持っていかれるだろう。


 このレベルの魔法を連射できるとは……。頼もしいと思えばいいのか、厄介だと思えばいいのか……。


 本当はもうすこしキースに魔法を使わせてやりたかったが、これは早く終わらせた方がいいな。次に何が出てくるのか……怖すぎて試す気にもなれない。


 やっぱり父親の矜持として、一度目で負けるのは避けたいからな。


「いくぞ?」


 巨大な水球の中、キースの体がビクッと震えたのが見えた気がした。


 オレは縮地走法を使ってキースに肉薄しようとする。


 子ども相手に大人げない?


 とんでもない。キースはもう子どもの枠を優に超えている。下手に手を抜けば、負けるのはオレだ。


 やはり、オレの勘は正しかったな。


 先ほどのウォーターボールの壁だって、魔法を斬ることができない奴には必殺の威力だろう。


 キースがかなりの実力者であることはわかった。今回はこのくらいにして――――!?


「な!?」


 縮地で走ろうとした瞬間、右足を引っ張られて最初の一歩を踏み出せなかった。


 右足を見れば、まる水がスライムのようにオレの右足首に絡みついていた。


 どういうことだ!?


 だが、キースの魔法の特異性を考えれば、この事態は想定してしかるべきだったかもしれない。


 オレは右足に絡みついた水と、左足にも迫る水を大剣で断ち切る。


 だが、その隙を見逃すキースではなかった。


 キースを包んだ球体から発射されたのは、まるで投網のような水の網だ。


 あれでオレを捕らえようというのだろう。


 ナメられたものだ。だが、足が止まってしまうことには変わりない。


 キースはオレに近づかれたくはないらしい。


 まぁ、魔法使いは誰だってそうだな。とにかく距離を取って、剣の届かない距離で戦おうとする。


 魔法と剣では間合いが絶対的に違う。その違いを有利に利用するのは当たり前のことだ。


 そんな魔法使いの戦い方をキースは本能で理解している。頼もしいこと限りないが、今は厄介なことこの上ない。


 オレは迫りくる投網を大剣で斬ろうとした直後、勘に従って地面を転がるように避ける。


 キースが自分から離れた水も操れるのは知っている。先ほど、オレの足首に絡みついた水なんかがそうだ。


 もし、オレがキースを普通の魔法使いだと思って魔法を斬ったらどうなっていただろう。おそらく、水が全身に絡みついてきたに違いない。


 今はまだ足を引っ張ることくらいしかできないようだが、これ以上濡れるとマズいか……。


 やはり、キースとの模擬戦は早々に――――!?


「ごば……」


 なんと、オレの顔を覆うように水がへばりついてくる。しかも、取れない。水が鼻や喉に侵入してきて、呼吸ができない


 そうか! オレが転がった地面には、先ほどのウォーターボールを斬った後に残った水がまだ残っている。その水を利用したか!


 まさか五歳児がこんな搦め手でくるとは思わなかった。


 だが、オレも負けるわけにはいかない。


 呼吸ができないというのなら、もう勝ち方に拘っていられない。なんとしてもキースに勝たねば……!


 オレは顔にへばりつく水によって歪んだ視界の中、転がった状態から立ち上がると、すぐに勘を頼りにキースへと疾走する。


 しかし、キースもただじゃ近づけさせてくれない。水の投網を連射してくる。


 キースとしては、あとはもう時間稼ぎをすれば勝てる状況だ。厭らしいことにオレを近づけさせまいとあの手この手で妨害してくる。


 それらすべてを避け、キースの包まれた水球に肉薄したのは、残りの呼吸が十分の一もない頃だった。


 もうすでに頭がボーっとしてきた。


 だが、父親の威信をかけて負けるわけにはいかんのだ!


 目の前には水の球体に守られたキースがいる。


 千載一遇の好機! このまま水の球体を斬り飛ばし、キースを気絶させる!


 水球に向かって斜めに大剣を振り下ろすと、ものすごく大きな横向きの力が加わって大剣の軌道が外側にズレて弾かれた。


 水がオレの大剣を弾く!? そんなバカな!?


 その時、オレは気が付いた。


 この水球は、キースが自分を守る最後の砦として用意したものだ。一筋縄ではいかないのは当たり前かもしれない。


 視界は水に覆われて、歪んで役に立たない。頼りになるのは弾かれた手の感覚と勘のみ。


 面白い!


 やってやるぞ!


 オレは素早く大剣を大上段に構える。ただただ威力のみを求める構えだ。


 残された呼吸はもうない。


 キースが何かしようとしているが、努めて意識の外に置いた。


 ただただ己と向き合う。


 先ほどの手の感覚を信じるならば、水球は高速で回転しているようだ。


 故に、大剣が流されて弾かれる。


 ならば、邪魔するすべては斬り裂くのみ!

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。