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024 模擬戦開始

 ひょんなことから父上と模擬戦をすることになってしまった。なんでも、父上を倒さないと村から出る許可が貰えないらしい。


 僕としては丁度いい機会なのですぐに了承したよ。だって、魔法を使った戦闘ってすべての男の憧れだと思うんだよね。僕も寝る前に自分の魔法でどうやって戦闘をするのか考えるのが楽しくてついつい遅くまで起きているくらいだ。


 今まで考えてきた魔法を試せる機会がやっと回ってきたんだ。これを喜ばないなんて嘘である。


 父上から貰った木剣を腰に差し、みんなでぞろぞろと庭に向かう。


「キース、怖かったらすぐに降参するんですよ? 降参のポーズは武器を手放して両手を頭の上に上げるんです」


 やっぱり心配なのか、母上が少し悲しそうな顔でそう言う。


「わかりました」


 僕としてはやるからには勝つつもりである。


 まぁ、そうは言っても、僕はまだ戦闘初心者である。この村を守るために日々訓練している父上には勝てないかもしれない。父上も父親として威厳があるだろうしね。


 でも、父上に勝たないと村の外に出れないからなぁ。本気でやらせてもらうよ。


「ちょっと待っててくれ」


 父上はそう言うと、食堂に入っていく。お腹でも空いたのだろうか?


 そう思っていると、父上はおもむろに食堂の壁に飾られていた大剣を手に取った。


 ピカピカに磨かれた見事な装飾が施された大剣だ。


「オレはこれを使うことにする」

「あなた!?」


 父上がそう宣言すると、母上が悲鳴のような声をあげた。


 どうしたんだろう?


「それは貴族院の大会で優勝した時に贈られたものではないですか!? そんなものを使って、いったいどうするつもりですか!?」

「オレの勘が、これを使えと言ってるんだ。すまんが、オレはオレの勘に従わせてもらう」

「ですが――――」


 貧乏なこの家には不釣り合いなほど立派な大剣だと思っていたけど、どうやら父上が貴族院の大会で優勝した時に貰ったものらしい。


 貴族院と言えば、ゲームでも登場した貴族の学園だ。たしかにゲームでも武術魔法大会があったけど、どうやらその伝統は国が統一されても続いているらしい。


 それにしても、父上は大会で優勝したのか。僕はゲームでしか知らないけど、それってけっこうすごいことなのでは?


 もしかしたら、父上は僕の想像以上に強いかも?


 でも、僕も早く外に出たいんだ。そして、『レインボー・ファンタジー』の世界を全身に感じたい。


 それに、もしかしたらこの地の異常気象の原因もわかるかもしれないし……。


 この地は呪われている。そう勘違いしてしまうほどこの地には雨が降らない。少なくとも、僕が生まれてから一度も雨は降っていない。


 僕の予想が確かなら――――。


「絶対キースには怪我させない! だから、許してくれ! さあ、もう行くぞ!」

「絶対ですよ? 絶対ですからね!?」


 僕が考え事をしている間に結論が出たのか、父上は母上を振り切るように庭に出て行った。


「僕たちも行こうか」

「はい」


 コクリと頷くディアナ、シンディーとアビーを連れて僕たちも庭に出る。庭では、大剣の振り心地を確かめるように父上がブンブン大剣を振っていた。


 あんな鉄の塊、人間が持てるとは思えないのだけど、父上はまるで木の枝でも振っているように、いとも簡単に大剣を扱っている。信じられない怪力だ。


 まぁ、思い返してみれば、ゲームのキャラクターたちもどう考えても物理的に持つことは不可能な武器を軽々と持っていたし、ひょっとしたら、この世界の人々はみんな超人なのかもしれない。


 恐ろしいね?


「まずは、ディアナから実力を見せてもらおうか」


 そう言って大剣を構える父上に向かって、ディアナがコクリと頷いた。


 ディアナの実力はかなり気になるところだ。それに、父上の実力も気になっていた。二人が最初に模擬戦をしてくれるのは、父上にどうしても勝ちたい僕からしたら、かなりラッキーだ。


 とはいえ、シンディーの話ではディアナは凄腕らしいけど、まだ七歳の少女でしかない。さすがに父上の勝ちは動かないんじゃないか?


「ディアナ、オレを殺す気で全力でこい!」

「よろしいのですか?」

「うむ!」


 その瞬間、キンッと甲高い音が響き渡った。


 何の音だろう?


 そして、いつの間にか父上が大剣で身を守るように大剣を動かしていた。


 何だ? 何が起きた?


 そんなことを思っていると、父上が苦笑を浮かべて口を開く。


「さすがに開始前に攻撃するのはなしだ」

「失礼いたしました」


 父上の言葉にペコリとディアナが頭を下げた。


 え? 今、ディアナが攻撃したの? まるで見えなかった……。


 それどころか、ディアナの攻撃の挙動すらわからなかった。


 なのに、そんな見えない攻撃を父上は凌いだらしい。


 まるで、主人公格同士の戦闘を見ていることしかできないマンガやアニメのモブになった気分だ。


 いや、まぁ、僕は正しくモブなんだけどさ……。


 こんなことで本当に父上に勝つことができるだろうか……?

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