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019 命の危機!?

 どうしよう? 軽い気持ちでディアナの護身術について訊いたら、とんでもないものが出てきちゃった。どう見てもこれは暗殺術だよ!


 え? え? 僕って命狙われてるの?


 いや、逆に考えるんだ。ディアナは自分のスキルを僕に見せてくれたということは、僕に害意はないということにならないか?


 ちょっと弱いか……?


 でも、ディアナが僕を殺そうと思っているのなら、さっき殺していたはずだし……。


「えっと……、ディアナは僕に害意はないの……?」

「? ありません。キース様は私のご主人さまです。ご主人様を害するメイドはいません」


 相変わらず無表情なディアナは、淡々とそう言った。


 表情からディアナの心情を読み取るのは難しそうだ。


「それはよかったよ……。ところで、このことはシンディーは知ってるの?」

「もちろんです」

「じゃあ、悪いけどシンディーを呼んできてくれないかな? 話したいことがあるんだ」

「かしこまりました」


 すくっと立ち上がり、物音一つ立てずに部屋を出て行くディアナ。


「はぁ……」


 僕は知らず知らずのうちに太い息を吐いていた。


 ディアナを僕専属のメイドにと言い出したのはシンディーだ。シンディーの狙いがわかれば、ディアナの狙いもわかるかもしれない。


 なんでシンディーはディアナを僕のメイドになんて言い出したんだ?


 このことは父上や母上は知っているんだろうか?


 謎ばかり深まっていく。


 でも、やっぱり最初はシンディーにその真意を問い質さないと!


 そんなことを決意していると、部屋の中にノックの音が飛び込んできた。


「ご主人様、シンディー様をお連れいたしました」

「……どうぞ」


 僕は覚悟を決めて入室を許可する。


「失礼いたします」

「失礼いたしますわ」


 ディアナがドアを開けると、シンディーが部屋の中に入ってくる。


「早々に呼び出してすまないね、シンディー。ちょっとディアナのことで訊きたいことがあって……。とりあえず、座ってくれない?」

「失礼いたしますわ」


 シンディーが僕の正面に置かれた椅子に座る。ディアナは僕の後ろに控えるように立っていた。


 ディアナに背後を取られると、かなり緊張してしまう。どうしてもディアナが次の瞬間には僕の首を掻っ切るのではないかという妄想に取りつかれてしまうんだ。


「それで、訊きたいこととは何でしょう?」


 シンディーが笑顔で問いかけてくる。


「それは……」


 ゴクリと喉が鳴る。これほど緊張したのは、転生して初めてかもしれない。


「シンディー、ディアナは何者なんだ?」

「私の姪になりますわ。アクロイド男爵が従者を探していらっしゃると聞いて、お勧めしたのです」

「それは本当か?」

「それはどういうことでしょう?」

「ディアナの護身術を見せてもらったが……異常だった」


 僕が言ったその時、シンディーの目に理解の色が浮かんだ。


「そういうことでしたの。本来ならもう少し慣れてから打ち明けようと思ったのですが……」


 この言い方……。


「やっぱり何かあるのか?」

「こうなってしまっては、変に隠すのも警戒されてしまいますわね。正直にお答えしますと、ディアナは要人を守るために特殊な訓練を受けたメイドになります」

「特殊な……」


 ディアナの動きは、間違いなく暗殺に特化したものだと思っていた。


 要人を守るためとは言うが、やられる前にやる感じかな?


「ついでに言うと、私の姪でもありませんわ」

「えっ!? 違うの!?」

「ええ。違います。赤の他人ですわ」

「えぇ……」


 もう何が本当なのかわからなくなりそうだ。


「ディアナは先代のマクマホン辺境伯が作った養成所でメイドとして育てられた孤児ですわ。弱冠七歳にしてすべての教科を満点で終業した天才です。そのため少し値は張りましたが、当代のマクマホン辺境伯には貸しがありましたので、快く譲ってくださいましたわ」

「孤児……? マクマホン辺境伯……? 養成所……?」


 マジか……。そんな情報、初めて聞いたよ!


 え? そんな情報は『レインボー・ファンタジー』にはなかったぞ!?


 当たり前か。だって、先代のマクマホン辺境伯が作ったらしいし。僕は嫌でもこの百年で世界が動いていることを理解させられた。


 たぶん、このマクマホン辺境伯の件など氷山の一角で、僕のゲーム知識が通じない場面はこれからも多々あるだろう。


 これは気を付けないとな……。僕が知っているのは百年前の情報であって、今の情報じゃないんだ……。


「キース様、本題はここからになります」

「まだあるの……?」


 もう頭がパンクしそうなんだけど、シンディーはいつにもなく真剣な表情で頷いた。


 どうやら真面目な話らしい。


 僕は居ずまいを正すと、シンディーの話を待った。


「これは全面的に私のミスなのですけど、もしかしたら、キース様の命が脅かされるような事態になる可能性が……」

「はい!?」


 え? なんでそんなことになってるの!?


 僕はまだ何もしてないよ!?

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