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018 ディアナと自己紹介

 シンディーとの話し合いも終わり、僕は自室に戻ってきた。


 そして、内なる喜びを発散するように自然とガッツポーズをしていた。


 僕の生きる目標は決まった。


 それは、この世界を自由に遊び尽くすこと。


 本来ならゲームをクリアするはずの主人公はもう百年も前の人物だ。主人公がやり残したことを僕が残らずやってやる。


 思えば、僕は今『レインボー・ファンタジー』の世界を五感で感じているんだなぁ。そう思うと、かなり興奮する。


 この世界に転生して五年。もう五年も『レインボー・ファンタジー』をプレイできていないんだけど、その記憶は色褪せることなく僕の記憶に刻まれている。


 僕はまだ五歳だから、冒険に出るのはまだまだ先のことになるだろう。


 本当は今すぐにでも冒険に繰り出したいけど……。さすがに五歳ではなぁ……。


 その時、ふと視線を感じて振り返る。


 そこには、ディアナがまるで待機しているように控えていた。


「うお!?」


 僕一人だと思っていたからめちゃくちゃ驚いた。いったいいつの間に入ってきたんだ?


「ディアナ、だっけ? どうしたの? 僕に用事でもあった?」

「いいえ。私はご主人様のメイドでございます。いついかなる時でもお傍におりますが、どうぞお気遣いなく」

「えぇっと……」


 いや、気になるよ! なんなら渾身のガッツポーズを見られて恥ずかしいよ!


「あの、ディアナはいつでも僕の傍にいるつもりなの?」

「はい。基本的にそうなるとお思いください」

「そっかー……。さすがにトイレの中には入ってこないよね?」

「トイレのお世話もできますが?」

「トイレのお世話って何っ!?」


 どうやらディアナは本気でいついかなる時でも僕の傍にいるつもりらしい。


 でも、日本社畜の庶民ソウルが、四六時中他人に傍にいられたら緊張してしまう。


 うぅーん。これも貴族として生まれたなら慣れないといけないことなのかな?


 一応、がんばってみるか……。


「と、とにかく、トイレは一人で大丈夫だから一人にしてくれないかな?」

「かしこまりました」


 無表情なディアナがコクリと頷く。


 よかった。話のわからない子じゃないみたいだ。


 そういえば、一応ディアナに自己紹介されたわけだし、僕専属のメイドになったわけだけど、僕はディアナのことをなにも知らない。


 自己紹介と言っても名前しか聞いてないしね。


 それに、僕自身のことをディアナに話したわけでもない。


 これからずっと傍にいるのだとしたら、お互いにお互いのことを知っているべきではないだろうか?


 そうだね。ここは自己紹介をやり直そう。


「ディアナ、ここに座って」

「はい」


 僕はディアナに椅子を勧めると、自分は隣の椅子に座った。お互いに向かい合うような形だ。


「ディアナ、キミのことを教えてくれないか?」

「? ディアナはディアナでございますが?」

「そうじゃなくて、例えばどこで生まれたとか、好きな食べ物とか、趣味とか……。そうだね。最初は僕がお手本を見せようかな。僕の名前はキース・アクロイド。ここ、アクロイド村の生まれだよ。好きな食べ物はお肉かな? 特にサンドリザードの尻尾肉が好きなんだ。趣味は水魔法になるのかな? 最近はリアルな猫を創るのにハマってるんだ。どう? こんな感じだけど、できそう?」

「やってみます」


 ディアナは少し考える様子を見せた後、その小さな口を開く。


「私はディアナ。マクマホンの生まれで、好きな食べ物は……甘いものでしょうか? 趣味と呼べるものはあまりありませんが、護身術を習いました」


 マクマホンは、たしかアクロイド男爵領の北にあるマクマホン辺境伯領の領都だったはずだ。そこの生まれだとすると、かなり生活水準にギャップがあるのではないだろうか? ディアナがアクロイド村に馴染めるかどうかちょっと不安になる。


 そして、好きな食べ物は甘いものか。これは年頃の女の子らしくてかわいらしいね。


 それよりも気になるのは、護身術というワードだ。


「護身術ってどんなことをやるの?」


 柔道みたいな感じだろうか?


「そうですね……」


 その瞬間、ディアナの姿がブレた。


「動かないでください」


 気が付けば、首元にヒヤリと冷たいものが押し当てられている。


 これって、刃物!?


 いったいいつの間に!?


 というか、その刃物をどこから出したんだ!?


 混乱で頭がいっぱいになって、まともに考えられない。


「失礼いたしました。実際に見ていただいた方がわかりやすいかと思いまして」


 すると、ディアナそう言って僕の首元から刃物を離していく。


「ふぅ……」


 僕は重苦しい息を吐き出し、改めて無表情で椅子に座っているディアナを見た。


 その手には先ほどまで握られていたはずの刃物がない。


 先ほどの動きは、断じて一朝一夕でできるようなものではなかったと思う。


 暗器の扱いもかなり熟練したものに感じた。


 これが護身術? そんなバカな!


 もしかして、ディアナって……暗殺者なのでは!?

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