017 見えた目標
オブライエン王国とリンドグレーン王国。共に『レインボー・ファンタジー』に出てきた国の名前だ。それが今ではサザーランド王国という一つの国になっているらしい。
でも、作中では一緒に一つの国になることもなかったし、そんなフラグも立っていたわけではなかった。なんでこんなことになっているんだろう?
もしかして、誰かが歴史を改変した?
僕と同じように転生者がいるのだろうか?
それとも、ただ自然とそうなってしまったとか?
例えば、仮に『レインボー・ファンタジー』の世界があったとして、正しくゲーム通りの歴史をたどらなかったとすればどうだろう?
その場合、主人公たちはどうなるんだ? 邪神の復活は?
とりあえず、今がいつの時代なのか確認しないと!
最悪の場合、もう今にも邪神が復活する可能性がある!
残された時間の猶予はどのくらいなんだ!?
「今はいつなの?」
「いつ? 統一歴百五年、秋の十四日ですわ」
「統一暦……?」
聞いたことない暦だ。名前からして、オブライエン王国とリンドグレーン王国が統一された日から数えた暦なのだろう。
暦から今がいったいいつなのか知るのは一筋縄ではいかないみたいだ。
しかし、僕も『レインボー・ファンタジー』の廃人を自称するものである。リンドグレーン王国暦で今が何年なのかわかれば、どんなイベントが起きるかは覚えている。
「じゃあ、オブライエン王国とリンドグレーン王国が統一されたのは、リンドグレーン王国暦でいつのこと?」
「質問は一つずつの約束でしたが、まあいいでしょう。オブライエン王国とリンドグレーン王国が統一されたのは、リンドグレーン王国暦三百六十六年頃のことです。そして、その年が統一暦一年目になりますわ」
「はい……?」
その時、僕はひどい間抜け顔をさらしていたことだろう。だって、僕はずっと勘違いしていたんだ。
その勘違いとは、僕が生まれたのは、『レインボー・ファンタジー』の主人公たちと近しい年代だと勝手に思い込んでいた。
もしかしたら、神様的存在が、主人公たちの邪神討伐を手助けするために僕を転生させたのだと、そう思い込んでいた。
それがまさか、『レインボー・ファンタジー』のゲームクリアの百年以上後に転生するとはさすがに思わないじゃん?
ということは、あれか? 僕は主人公たちに会えないのか?
正直、かなりがっかりだ。主人公も気になるけど、ヒロインたちを遠くからでもいいから一目見たかったのに……。
くそう。陰から主人公を助けたり、謎の強キャラムーブをしたり、主人公の知恵袋的存在にもなれないなんて……。できることならなりたかった。モブでもいい。主人公たちに一目置かれるようなキャラになりたかったよう……。
「キース様? いきなり驚いたと思ったら、今度は落ち込んで……。どうしたのですか?」
「いや……。すべては過ぎたことだよ……」
そう。過ぎてしまった。ゲームの時代はもう百年も前だ。ここはゲームのエンディングから百年以上後の世界。
そうか。百年以上も経ってるから、僕の知識と噛み合わないところがあったのか。おかげでここが『レインボー・ファンタジー』の世界だと確信を持つのに随分と時間がかかってしまった。
たしかにゲームのヒロインにはオブライエン王国とリンドグレーン王国の二人のお姫様がいたもんなぁ。主人公はどちらとも結婚したのかな?
まぁ、邪神討伐のために国力をすべて傾けた後の国だ。仲が悪いという設定だったけど、生き残るために共に戦って友情でも芽生えて統一でもしちゃったのかな?
まぁ、そのあたりはシンディーが改めて歴史の授業で教えてくれるだろう。
そして、シンディーはここはサザーランド王国の南端だと言っていた。ということは、『レインボー・ファンタジー』の世界地図で言うところのあの岬だろう。たしかに、ゲームでも砂漠みたいな土地だった。
「あ……」
ひょっとして、この干ばつの原因って……!
もしかして、主人公は……。
「サイドストーリーや、ゲームのやり込み要素をクリアしていない……?」
「はい?」
気が付くと、シンディーどころか隣に座った母上も不思議そうな顔で僕を見ていた。
「な、なんでもないですよ! そう、なにもないです」
そう言いながら、僕は考える。
それは主人公たちの行動についてだ。冷静に考えれば、国家が傾くほどの被害を被った邪神の復活。それを解決しなくてはいけないのに、辺境にあるダンジョンやエンドコンテンツをクリアする余裕なんてないよなぁ。
ということは、主人公がクリアしていないダンジョンや、裏ボスなども放置されている可能性が高い。
そして、それに挑戦するべき主人公は、さすがに百年経てば死んでいるだろう。
つまり、この世界には挑戦者を亡くしてしまったイベントが無数に転がっているはず。
そして、僕はもちろんすべてのダンジョンを踏破済みだし、すべての裏ボスを倒し、すべてのイベントを回収した『レインボー・ファンタジー』廃人だ。
これは、僕の出番ではないだろうか?
もう主人公たちに遠慮する必要もないしね。
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