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016 国の名前

 応接間には僕と母上、シンディーとディアナの四人が残っていた。父上は用事があるようで、席を外している。 


「さてキース様、本日もよろしくお願いいたします」

「うん……」


 あの後、ディアナの紹介とシンディと父上の話も終わり、いつものようにシンディの僕への質問タイムとなった。


 シンディの質問タイム。だいたい一週間に一度やってくるのだけど、この時間がわりと退屈なんだよなぁ。


「そんなに退屈そうな顔をなさらなくても……」


 シンディーが僕の顔を見て苦笑していた。


「では、こうしましょう。私が一つ質問いたしますから、それにお答えいただいたら、今度は私がキース様の質問になんでも答えますわ。お互いに順番に質問していきましょう」

「え?」


 これまで、僕がどんなに質問しても何も答えなかったシンディー。そのシンディーが、何でも質問に答えてくれるという。どういう風の吹き回しだろう?


 僕の不思議そうな顔に気が付いたのか、シンディーが苦笑を深めながら口を開く。


「これまでは誰が教師になるかわからなかったので慎んでいましたが、私がキース様の教師になることが正式に決まりましたので、これからはキース様の疑問にお答えしますわ」

「ほえー」


 よくわからないけど、シンディーなりに僕に気を使っていたのかな?


「では、さっそく質問にまいりましょう。キース様はどうやって無詠唱で魔法を発動しているのですか?」


 またこの質問か。


 シンディーは、僕が魔法を無詠唱で使うことにすごく関心を持っている。


 他の人が魔法を発動する時は、詠唱をおこなう。この詠唱をおこなうと、自動で詠唱した魔法が発動するのがルールらしい。


 僕も何度か詠唱での魔法を試してみたけど、僕の場合、水の魔法しか発動しなかった。


 そして、水の魔法を詠唱すると、体内の魔力が勝手に動いて体の外に飛び出した。


 詠唱というのは、魔力を強制的に動かす手段な気がする。


「まず、体の中に魔力の塊があるんだ。それを動かして、例えば指先から出す。そうすると、魔法になるんだ」


 たぶんだけど、僕みたいに魔力を直接動かせるようになれば、誰でも無詠唱で魔法を使えると思う。


「魔力の塊……。たしかにあるとはされています。その魔力を感知できる術があればいいのですが……。うーむ……」


 シンディーは考え込むような仕草を見せる。


 この世界の普通の人は魔力を感知できないみたいだ。まぁ、生まれたばかりの頃から体内にあるからね。難しいのかもしれない。


 その点、僕は前世で魔力のない体を経験しているので、魔力というものが認識できた。


 たぶん、僕とシンディーたちの違いはこの一点しかないだろう。


 でも、その違いはかなり大きな違いを産んだ。


 それが、魔法の自由度だ。


 シンディーたちは、詠唱を使った限定的な魔法しか使えないのに、僕は自由に水を操ることができる。


 シンディーは、僕の無詠唱の謎を解明して、魔法の自由度を高めたいと考えているようだ。


「私からは以上です。キース様は私に質問はございますか?」

「そうだなぁ……」


 聞きたいこと。それは山ほどある。僕はこの世界について知らないことが多すぎる。


 でも、まずはこの世界が『レインボー・ファンタジー』の世界なのかどうかが知りたすぎる!


 それを知るためには……!


「この国について教えてくれないか?」


 この世界にはまだテレビも新聞もないのか、それともこの地が田舎すぎてないだけなのか、情報を得る手段がなさすぎる。


 僕はまだ自分の住んでいる国の名前すら知らないのが現状だ。どうにかしたい。


「へぇ」


 シンディーの視線がなぜか鋭くなった気がする。


「知識欲のある子は好きですわ。キース様に教育を施すのが楽しみです。この国の詳しい歴史などは、また後日、詳しくいたしましょう。さて、この国についてですが、まずは基本的なことから始めましょう。まずこの国は大陸の南部にあり、ここアクロイド男爵領は、国の南端に位置しています。この国、サザーランド王国ですが

――――」


 サザーランド王国?


 『レインボー・ファンタジー』をやり込んだ廃人である僕でも知らない名前の国だ。


 生まれ変わってもう五年の月日が経っているけど、さすが『レインボー・ファンタジー』に登場した国名を忘れはしていない。


 やっぱり、この世界は『レインボー・ファンタジー』の世界ではないのか?


 魔法の詠唱とか、共通点があったからもしかしてと思ったけど、冷静に考えればゲームの世界に転生するなんてあるわけ――――。


「旧オブライエン王国と旧リンドグレーン王国が一つになり、今のサザーランド王国が誕生いたしました」

「えっ!?」


 オブライエン王国とリンドグレーン王国。どちらも『レインボー・ファンタジー』に登場した国の名だ!


 ということは、やっぱりこの世界は『レインボー・ファンタジー』の世界なのだろうか?


 でも、僕の知る限り、オブライエン王国とリンドグレーン王国が一つの国になるなんて聞いたことがないぞ? サザーランド王国なんて名前も聞いたことないし……。


 何かがおかしい。僕の知っていることと、微妙に噛み合わない。


 この僕の知る『レインボー・ファンタジー』との同じ部分と違う部分、どうなってるんだ?

お読みいただき、ありがとうございます!

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