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140 大成功と心配

「おお! すっげえぞ! 砂糖がどんどん白くなっていきやがる!」

「さすがだぜ、ジム! やっぱりお前は最高だ!」

「スラちゃんもすごいわ! こんなに真っ白なお砂糖が作れるなんて!」


 アクアに座った僕の目の前では、大きな人だかりができていた。その中では、アクアスライムたちによる砂糖作りで一番難しいと言われている作業『洗い』がおこなわれている。


 人の手でやるとなると、かなり難しいらしいが、水のスペシャリストであるアクアスライムたちにとっては、簡単な作業だったらしい。できあがった砂糖を見せてもらったけど、日本で売られていてもおかしくないほど真っ白だった。


 マクマホン辺境伯の言葉を信じるのなら、このできならば、砂糖の中でも高級品として高く売れるはずだ。


 アクアスライムたちにとっても、そして、村人たちにとってもこれまでの頑張りが実った瞬間だね。


 そして、僕は大きな鍋に残っている独特な甘い香りのする大量の液体を見つめる。これが廃糖蜜。ラム酒の原料になる原料なのだ。


 しかし、これがラム酒の原料になることは知っているけど、僕もどうすればこれがラム酒になるのかまではわからない。


 だから、以前の砂糖作り実験で得られた廃糖蜜をお酒造りメンバーに丸投げしていた。父上に上がってくる報告を聞いていると、どうやら少量ずつ造り方を変えながら、ラム酒を造っているらしい。


 たぶん、今回の廃糖蜜も、お酒造りメンバーの実験に使われることになるだろう。ぜひとも彼らには成功してほしいね。


 言ってしまえば、アルコール度数なら、アクアスライムたちによって高められる。あとはちゃんとアルコールを醸造できるかどうか、おいしいお酒になるかどうかだ。


 マクマホン辺境伯の手紙によると、この国では砂糖が作られてはいない。全部輸入品だと書いてあった。


 ということは、砂糖を安定して作れるようになれば、大儲けできる可能性が高い。しかも、アクアスライムたちによって洗われた砂糖は、輝かんばかりの真っ白さだ。他で生産されている砂糖の品質がどの程度かは知らないけれど、これならば十分戦えると思う。


 そして、ラム酒。


 この国で今まで砂糖が作られていないということは、ラム酒も造られていないのではないだろうか。


 ならば、この国で生まれた新たなお酒として高値で売れる可能性もある。


 最後に、港。


 今、父上たちが、多くの村人やアクアスライムたちを動員して整備しているのが、この港だ。


 アクロイド領の南端に港ができることによって、今まで北にあるローダス山脈に隔てられ、陸の孤島になっていたアクロイド領は、新たな海路という手段を取ることができるようになる。


 モンスターの多く生息する危険なローダス山脈を登るよりも、簡単に物資を手に入れられるようになるだろう。


 それだけじゃない。


 港を使って、アクロイドの民が、自由に商売ができるようになる。これはかなり大きい。


 今まで、アクロイド領は、マクマホン辺境伯が派遣してくれる行商人しか売り買いのチャンスがなかった。だが、港ができれば、そのチャンスが大きく広がることは間違いない。


 今のアクロイド領には、火酒をはじめ、砂糖や酒、水や品種改良したアクロイド芋など、売り物がたくさんある。外貨獲得の大チャンスだ。


 それに、船となれば運べる量も馬車とは桁違いに多いに違いない。いったん軌道に乗ったら、もういくら生産しても追いつかないほど売れに売れまくっても、港があれば対応できるだろう。


 さすがにそんなに上手くはいかないかもしれないけど、アクロイド領の未来は明るい。いや、僕たちが明るくするんだ!



 ◇



 そんなわけで、みんなのがんばりもあり、その日のうちに大量の真っ白な砂糖が生産された。村人たちも、マグマスライムたちも、アクアスライムたちもがんばって作った、まさに友情の大勝利である。


 まぁ、まだアクアスライムたちは、マグマスライムたちへの警戒を解いていないみたいだけどね。そのうち、両者の関係もよくなるといいなぁ……。


 砂糖作りという共同作業をしてるんだし、少しでも仲良くなってくれるといいね。


 お酒造りメンバーも、あらたな原料が手に入って嬉しそうだったなぁ。少しだけ彼らと話したけど、何か手応えを感じているらしい。このまま、がんばってラム酒の製造に成功してほしいね。


 そんな順風満帆に思えるアクロイド領だけど、問題というか、僕の懸念していることが一つだけある。


 それは、母上のことだ。


 母上のお腹は、もういつ生まれてもおかしくないと噂が流れるまでに大きくなっている。


 新しい家族が増える。そのこと自体はとても嬉しいし、祝福されるべきものだ。たぶん、男の子が生まれても、女の子が生まれても、素直に喜ぶことができると思う。思うんだけど……。


 僕はどうしても醸造施設で聞いた男の慟哭が忘れることができなかった。

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