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139 大規模砂糖作り

 明けて次の日。


 その日は久しぶりに村に大勢の村人たちとアクアスライムたちの姿があった。


 村人とアクアスライムたちは、先ほどから村の中央の広場と、畑を往復している。彼らが持っているのは、まるで青竹のような棒だ。


 実はあれ、収穫されたサトウキビである。


 スライム栽培から遅れて数週間。ようやく畑のサトウキビが収穫期を迎えたのだ。


 今、サトウキビ畑は、天辺がまるでススキのような白色の穂のようなものに覆われている。サトウキビってあんな感じになるんだね。知らなかったよ。


 あの白い穂のようなものが生えたら、サトウキビの収穫時期らしい。


 広場に集められたサトウキビは、そのまま二つのローラーが付いている破砕機のようなものに挟まれて、ガギュッと絞られて茶色いジュースを吐き出す。


 吐き出された茶色いジュースは、大きな中華鍋のようなものに注がれていく。その下では僕がフリーデンを使って集めてきたマグマスライムたちが中華鍋を温めていた。


 フッジサンをはじめとするマグマスライムの一族は、今や二十匹ほどに増えている。普段は各家庭や施設の竈で仕事をしているのだが、今回は村を挙げての大仕事だ。マグマスライムたちにも総力を挙げて手伝ってもらっている。


 そう。今日は砂糖作りの日なのだ。


 マクマホン辺境伯から送ってもらったサトウキビの苗は立派に育ち、それらを収穫して砂糖を作る。目指すは最高級である真っ白な砂糖だ。


 砂糖は現在、南の国からの輸入に頼っており、自国で生産できていない。ここで国産の砂糖を作ることに成功したら、その意味は大きい。


 しかも、砂糖はただでさえ高級品として扱われている。大規模な砂糖作りに成功すれば、その利益は計り知れない。アクロイド男爵領の新たな産業となり、火酒の製造と同じく、貴重な外貨獲得の手段になるだろうね。ぜひとも成功してほしい。


 一応、アクアスライム栽培で先にできた少量のサトウキビを使った実験的な砂糖作りでは、ちょっと茶色だったけど、砂糖を作ることができた。


 でも、こんなに大量のサトウキビを使った砂糖作りは初めてだ。砂糖を作る手順は実際に経験したけど、それが産業として成立するくらいの大量生産が成功するかは未知数だ。


 まぁ、僕はあんまり心配していないけどね。


 最も大事なのは、砂糖作りに成功するかじゃないからだ。


 一番の懸念点であったのは、アクロイド村でサトウキビを育てることができるかだ。その結果はもう成功している。


 できれば今回も砂糖作りを成功してほしいけど、サトウキビの収穫は今回が最後じゃない。であれば、いつかはアクロイド村流の砂糖の生成方法が確立するだろう。


 サトウキビ畑を見れば、もうすべてのサトウキビが刈り取られ、代わりに短い棒のようなものが地面に刺さっている。サトウキビは、アクロイド芋と同じように、種ではなくても挿し木栽培で増やすことができるのだ。ようするに、クローンを作る感じで増やしていくようなものかな。


 もちろん、サトウキビを品種改良するならば、アクロイド芋の品種改良をした時のように、サトウキビの種を作る必要があるだろう。でも、現状のサトウキビは、砂糖を作ることができるし、サトウキビとして合格だと思う。


 だったら、無理に品種改良する必要もないだろう。品種改良と簡単に言うけど、優良な個体というのはなかなか現れない。品種改悪になる場合も十分にあるからね。


 僕はもうアクロイド芋の品種改良で、もうたくさんだというほど失敗を経験している。サトウキビまで品種改良を目指さなくてもいいだろう。それこそ、砂糖が作れないようなったら大変だ。


 村人たちとアクアスライムたちの手によって、次々とサトウキビが破砕機で割られ、茶色いジュースになっていく。サトウキビジュースの集まった大鍋を熱していくマグマスライムたち。そんなマグマスライムたちに、村人たちが薪をプレゼントしていた。


 フッジサンをはじめとしたマグマスライムたちは、薪をもぐもぐしながら火力を高めていく。すぐにサトウキビジュースから湯気が出始めた。


 このままサトウキビジュースを煮詰めていくのだけど、マグマスライムは指示を出せばすぐに火力を調整してくれるのは便利だね。


 アクアを説得してでも連れてきた甲斐があったよ。


 マグマスライムたちが活躍しているのが気に入らないのか、なんだかムスッとした様子のアクア。そんなアクアに座って見ていると、父上の指示でどんどん順調そうに砂糖作りが進んでいく。


「大丈夫だよ、アクア。アクアスライムたちにも活躍の機会はあるから」


 そう言って、僕はアクアを撫でる。


 なにもアクアへの気休めで言っているわけじゃない。本当にアクアスライムたちに手伝ってほしいことがあるのだ。


 それは、洗いという作業。


 サトウキビから作れる砂糖は、黒糖だ。この黒糖を文字通り水で洗うことでだんだん白くしていく。でも、これはかなり面倒で繊細な作業が必要らしい。


 そこで、アクアスライムたちの出番である。洗いをアクアスライムたちに頼むのだ。


 上手くいくといいなぁ。

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