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136 港を造る

 父上から港を造る許可を貰った翌日。


 僕は朝からさっそくアクアに乗ってディアナと一緒にアクロイド男爵領の南端に来ていた。切り立った断崖の遥か下では、波が断崖に叩き付けられ、白く弾けているのが見えた。しかし、その音は遠すぎて聞こえない。海面からここまでそれだけ距離があるということだね。


「うーん……」


 そんな断崖の端に立って、僕は海の中を探っていた。海面のさらに下。海の底の形や海面までの距離などを把握しているのだ。


 僕がやろうとしていることは簡単だ。今僕のいるアクロイド男爵領の南端の断崖を斬り飛ばし、ちょうどいい感じに埋め立てるという作戦である。


 だが、言うには易く、おこなうのは難しい。


 僕に使える魔法は、水と無属性しかない。フリーデンの力を使っても、断崖を斬ることはできても、操作することはできない。


 もし僕が土魔法が使えたら、土や岩を操って、かなり簡単にできたんだろうなぁ。すべての属性が使えた主人公がかなり羨ましい。


 でも、いくら羨ましがっても使える属性が増えるわけじゃない。属性は生まれ持ったものだからね。つまり先天的に決まるものだ。後天的に増えるわけじゃない。


 だったら、僕は持っている手札でできることを考えるべきなのだろう。


 だから、僕は僕のできることをするよ。


「よし、こんなものかな?」


 集中するために閉じていた目を開けると、目の前に変な形をした水の塊があった。これが、この辺りの海面と海底をスキャンして作った海底マップだ。


 自作の海底マップを見ると、アクロイド男爵領の南端から海底が深さ奥に行けば行くほど深くなっていくのがわかった。とはいえ、その角度は一定じゃない。


「なるほどねー。これなら、あの作戦でいくか」


 実は、この海底がどうなっているのかのデータが欲しかったのだ。


 データが集まったなら、あとは実行だね。


「アクア、移動するよー」


 声をかけると、アクアは触手を伸ばす。その触手の先はグッと親指を立てた人間の手の形を作っていた。器用だね。ぷりちーだね。愛おしいね。


 僕は座ったままアクアの表面を撫でる。手に伝わるのは、まるで水まんじゅうを触っているような感覚。冷たくて気持ちがいいね。


 それから僕たちは、アクアに乗ったままアクロイド男爵領の南端からまっすぐ北のローダス山脈を目指すように進んでいく。


「この辺りかな」


 僕がそう言うと、アクアが即座に止まる。ひょっとしたら、アクアは今から僕がやろうとしていることがわかっているのかもしれないね。


「よいしょっと」


 僕はフリーデンを担いで、アクアから飛び降りた。


「このくらいの角度だな……」


 何度も角度を確認し、僕はついにフリーデンを振りかぶる。フリーデンの刃には、昨日父上や母上に見せた時よりも濃い青色の刃が形成されていた。


 使ったのは、僕の体内試験管十本分の濃い水の魔力だ。そして、その副産物として生まれた無属性の魔力を試験管三本分で、僕はガチガチに強化し、残りの七本分を振り上げたフリーデンの後ろ刃に形成する。


「斬る……ッ!」


 その瞬間、目に見えないような速度でフリーデンが振り抜かれる。


 後ろ刃に発生させていた無属性の刃。それを爆発させて、強力と呼ぶのも憚られるような、もはや暴力的な推進力を発生させる。そして、一気に濃い水属性の魔力を解き放ち、巨大な水の刃を形成。アクロイド男爵領の赤土の大地をスパッと切り裂いた。


「うぐぐ……」


 大剣を一回振っただけだというのに、凄まじいまでの負荷だ。無属性の魔力で身体能力の強化をしていなかったら、おそらく僕の体は負荷に耐え切れず、爆散していたことだろう。


 でも、やった甲斐はあったようだね。


 目の前には、まるでまっすぐ走った断層のように、少しずつ滑り落ちていく大地が見えた。


 そう。僕は大地を斜めに斬り、それを滑らせることに成功したのだ。


 あとは、大地の断層に染み込んだ水を操って、このまま少しずつアクロイド男爵領の南端を滑らせていく。


 そして生まれるのは、傾斜の浅い滑らかな坂道と、坂道の先にある海抜三メートルくらいの広大な三角形の大地だ。


「うん。予想以上に上手くいったね!」


 一応こうなることを目指していたとはいえ、まさかぶっつけ本番で本当にできてしまうと、自分でもびっくりである。


「これで、港の完成かな?」


 一応、海底の状況を確認しながら呟く。


 大雑把だけど、これで完成と言ってもいいだろう。


 アクロイド男爵領は、もともと切り立った断崖の下に海があった。その大地をフリーデンの力をフル活用して斬って滑らせる。


 そうして生まれるのは、まるで船着き場のように切り立った断崖だ。これなら、海底を掘ったりしなくても、大きな商船がそのまま接岸できるだろう。


 あとは、アクアスライムたちに手伝ってもらって、港の形を整えてもらえば、本格的な港の完成で大丈夫だろう。


 とはいえ、僕はあんまり港に関する知識はない。そのあたりは父上や母上に丸投げかな?

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