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133 身体能力強化の魔法

『ふむ。まずは、その体に慣れるところからだな。そうだな……。まずはフリーデンを持ち上げてみるといい』

「え? うん……」


 僕はアクアの上に置いていたフリーデンを手に取って、持ち上げてみる。


「おあ⁉」


 フリーデンはもともとその大きさに反して軽い武器だ。でも、今はまるで羽毛でも持っているかのように、まるで重さを感じなかった。あまりに軽くて、後ろに転びそうになってしまったくらいだ。


『どうだ? 実感できたか?』

「そう、だね……」


 僕は右手に持ったフリーデンを上げ下げしながら答える。


 まだどれくらい僕の身体能力が強化されているのかはわからない。でも、身体能力の強化は成功しているようだ。


「ちょっと走ってみてもいいかな?」

『最初は軽くな。お前は変なところで思い切りがいいから心配だ』


 意外にも面倒見のいいガレスゴディアの言葉を聞いて、僕はまずは早歩き程度の速さで走り始めた。


「うお⁉」


 すると、まるで足裏が爆発したかのような感じがして、一気に足が前に持っていかれてしまう。


 僕の体はそのままお尻から地面に落ちて、ズサーッと前方に引きずられるように滑っていく。そのまま二メートルほど引きずられると、やっと止まった。お尻がちょっと痛い。


「なんだこれ……?」

『やはりこうなったか。身体能力強化の魔法は、慣れていないと肉体の制御が難しいぞ?』


 右肩に担いでいたフリーデンから、まるで笑うようなガレスゴディアの声が聞こえてきた。


 いや、難しいとかそんなレベルじゃなかったよ? 歩くのも難しいレベルだよ?


 僕は立ち上がると、今度はゆっくりと、慎重に歩き始めた。


「おお……」


 歩ける! 歩けるぞ! 身体能力強化の効果はまるで感じないけど!


 やっぱり、まずは早歩きから少しずつ慣らしていって、最終的には高速で走れるようになりたいところだ。


「うーん……」


 さっきは足の力が強すぎて、下半身が前に進みすぎて、後ろに転んでしまった。ならば、今度は最初から前傾姿勢になるのはどうだろう?


「よし! アクア」


 アクアが何事かとゆっくりこちらに近付いてきた。アクアの上には、ディアナがちょこんと座っている。


「これ、持っててね」


 僕はフリーデンをアクアに預けると、前傾姿勢を取って、意を決して早歩きを始める。


「おお!」


 ぐいっと後ろに引っ張られるような感覚を感じたけど、今度は転ぶことなく早歩きできた。


「は、速⁉」


 早歩きのはずなのだけど、足裏で小爆発するような衝撃と共に、僕の体はまるで弾むようにどんどん加速していく。早歩きというか、もう小ジャンプの連続と表現した方が適切かもしれない。


 早歩きなのに、もう明らかに僕の全力疾走よりも速いスピードが出ている。


「これが、身体能力強化の魔法!」


 すごいぞ! どんどん加速していく!


 少しずつ地面を蹴る威力を上げて、僕はさらに加速して氷柱の周りをぐるぐると回っていく。


 そして急停止すると、ズサーッと地面を滑る。そのまま後ろにバックステップを踏むと、まるで背中を強い力で引っ張られたように後ろに移動した。


 すごいな。少しだけ足に負荷がかかるけど、高速での急な方向転換も可能だ。


「これ以上のスピードを出すには、庭は狭いね」


 けっこう広い庭だけど、今は巨大な氷の柱が起立しているし、本気で走るには距離が短すぎる。


 かといって外に走りに行くのもなぁ……。


『どうだ? 身体能力が上がっただろう? 纏う魔力を増やせば、さらに身体能力が上がるぞ?』

「え?」


 どうしようか悩んでいると、ガレスゴディアの言葉が耳を打った。そして、その内容に驚いてしまう。


 考えてみれば当たり前のことかもしれないけど、使う魔力を増やせば、さらに身体能力を強化できるらしい。すごいね。


『あとは、体の一部に魔力を集めることで、体の一部だけ強化するという芸当もできるが……。まあ、それは後でもよかろう』

「へー」


 僕はガレスゴディアに魔力を全身にまんべんなく行き渡らせるように言われていた。だけど、わざと偏りを作って、体の一部をさらに強化するという荒業も存在するらしい。


 一口に身体能力強化の魔法といっても、その応用は広そうだ。


「ガレスゴディア、無属性の魔力は他にどんなことができるの?」

『キースよ、お前はマッサランと同じ真なる魔法使いだ。魔法とはイメージ、意志の力である。あとは自分で研究するのだな。おそらく、その方がお前は型にはまらずに伸びそうだ』

「なるほど……」


 型にはまらずに、か。


 たしかに、僕は魔力を自在に操ることができる。ならば、敢えて自分から型にはまらずに、自由に魔法を使ってみるのもいいかもしれない。


「よし!」


 僕は自分の中に五つの試験管を作り、無属性の魔力を生み出していく。まずは、無属性の魔力で何ができるのか確かめていこうかな。


 まずは、無属性の魔力をそのまま打ち出してみようかな? ちょうどいい的もあるし。


 その後も、僕の無属性の魔力の研究は進んでいった。

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