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132 氷柱と身体能力強化

「ひゃあああああああああああちべてえええええええええええええええ!」

「こいつは極楽じゃあ」

「ずっとここにいたい……」

「ほれ、仕事に行くぞ!」

「ああああああああああああああああああああああああああああああ……」

「いやだあああああああああああああああああああああああああああ……」


 父上の力を借りて村人たちに説明して、なんとか混乱は治まった。


「しっかし、こりゃすごいな。こんなに離れているのに、なんだか涼しい気がするぞ」

「まさか、アクロイド領でこんな涼しさを感じられるだなんて、思いもしませんでした」


 今では父上や母上もアクアスライムに座って涼みに来ているくらいだ。


 ちなみに、アクアスライムは新しいおもちゃを手に入れたようなはしゃぎっぷりで、できあがった氷の柱をよじ登ったりして遊んでいる。中には天辺で押し相撲のようなことをしているアクアスライムたちもいるようだ。先ほどから定期的にアクアスライムが落ちてきている。


 まぁ、なんとかなってよかったよ。


『これで、魔法の強化方法はわかっただろ? 魔力の属性濃度を上げることにより、魔法はその効果を飛躍的上昇させる』

「まぁ、うん。わかったけど……」


 そのおかげで、いろいろ大変だったんですけどね?


『次は身体能力の強化だな』

「え? 身体能力の強化って、火属性と光属性とかの魔法じゃないの?」


 自慢じゃないけど、僕は『レインボー・ファンタジー』に出てくる魔法をすべて覚えている。身体能力強化の魔法は、火属性と光属性しかなかったはずだ。


『ふむ。ニンゲンらしい解釈だ。たしかに、我の司る火属性の魔法にも、身体能力強化の魔法はある。だが、これは無駄が多いのだ』

「無駄が多い? どういうこと?」

『ニンゲンの魔法では、火属性も光属性も、一度体外で魔法を完成させてから、対象に身体能力強化の魔法をかける。その過程で、どうしても魔力のロスが生じる。なぜだかわかるか?』

「えーっと……。それは……どうして?」

『気付いていなかったのか? 魔力を体外に出すという行為自体が、魔力の消費させる行為だ。体外に出た時点で、魔力は霧散し始め、属性を失い、ただのマナに変換される。普通はな』

「ふーん……」


 なんだかあまりよくわからない。


『キース、貴様は魔力を魔力として体外に出せるだろう? 試してみるがいい。こういうことは体験してみるのが一番だ』

「わかった」


 僕は右手を胸の前に上げると、いつもアクアスライムたちにあげるみたいに魔力を出してみる。


 すると、にゅっと下から触手が出てきて、魔力を持っていってしまった。


「アクア……」


 下を見ると、満足そうな顔をしたアクアと目が合った。まるで悪びれていない。まるで「何か用?」とでも言いそうだ。


「今度は取っちゃダメだからね」


 アクアはちょっと不満な様子を見せたけど、頷いてくれた。


 よし。


「よっと」


 僕は、もう一度手のひらの上に魔力を出してみた。


「うーん……?」


 一見、何の変化もない。


 だけど、よくよく観察すると、魔力が加速度的に霧散していく。そして、たった五秒ほどで魔力はなくなってしまった。


「へー」


 今まで、魔力は体の外に出したらすぐに使っていたから気が付かなかったけど、思ったよりもずっと早い消失だ。これなら、ガレスゴディアの言っていた魔力の消費の意味がわかる。


『わかったか?』

「うん。めちゃくちゃ早いね」

『ニンゲンの魔法は詠唱が主だったか? それは確かに便利かもしれんが、詠唱している間は魔力が霧散し続けている状態だ。あまり賢い魔法形態とは言えんな』

「なるほど……」


 そういうものなんだ。僕は自分のことばっかりだったから気が付かなかった。だけど、詠唱はかっこいい代わりに非効率らしい。


『本題に戻るか。身体能力強化の魔法の話だったか? キースよ、まずは無属性の魔力を創るのだ』

「はい」


 僕は自分の中に試験管……。今後、無属性を使う機会が多いだろうし、もっと大きなものがいいかな? 自分の中に大きめの丸底フラスコを創って、沈殿方式で無属性魔力を創ってみる。


『……まだ二度目だというのに手慣れているな』

「そうかな?」

『ああ。末恐ろしい子どもだ……。もしかしたら、我はとんでもない間違いを犯してしまったかもしれぬと感じるほどな……』

「そういうのいいから。それで、どうやって身体能力強化の魔法を使うの?」

『うむ……。まず、無属性の魔力を全身に染み込ませる。この時注意すべきは、最初は全身均一にすることだ。偏りが生じれば、力のバランスが崩れ、体に無駄に負荷にかかる』

「こう?」

『……。お前は本当に覚えが早いな……』


 若干引いてるようなガレスゴディアの声が聞こえてくる。


 こちとら生まれた時から魔力を操ってるからね。これくらい朝飯前である。


「でも、あんまり変わった感じがしないんだけど?」


 ガレスゴディアの言葉によれば、これで身体能力強化の魔法ができているはずなんだけど、あんまり普段と違いを感じない。


 これでできてるのかな?

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