131 アイスピラー
「ガレスゴディア、その無属性魔法って何ができるの?」
『うむ。無属性魔法とは、一言で言えば強化と破壊の魔法だ。その応用力は、存外に広いぞ?』
「強化と破壊……?」
なんだか、文言だけ聞くとすごく危なそうな魔法だね。
『キース、お前の魔力量は世界でも屈指だ。あのマッサランをも超え、もしかすると原初のドラゴンすら凌ぐかもしれぬ』
「……それはさすがに言いすぎなんじゃない?」
『いや、この際言っておくが、ニンゲンが持っていい力の範囲を大きく逸脱しているのは確かだ。その魔力量を持つなら、理論よりも実践の方が早く身に付くだろう』
「うーん……」
なんだか自分が人外のような言い方をされてしまい、ちょっともにょもにょする。
「まぁいいや。それで、無属性魔法ってどうやって使うの?」
『その前に、キースは自分の中にある異常な魔力に気が付いているか?』
「異常な魔力?」
自分の体の中を探ると、そういえば体の中に疑似的に作った試験管の中に、無属性の魔力を抜いた残りの魔力。濃い水の魔力が残されていることに気が付いた。
「もしかして、この濃い水の魔力のこと?」
『そうだ。ふむ。もう本質に気付いているとは、さすがだな。その濃い水の魔力は、普通に使うだけでも魔法の威力を何倍にもしてくれるものだ。扱いには慎重になることだな』
まるで危険物であるかのような物言いに、少しだけ不安を感じる。
「……それって、体の中にあってもいいものなの?」
『害があるわけではないからな。そのままでもよかろう。まずはその濃い水の魔力を普通に使ってみて、通常の水の魔力との威力の違いを感じるがいい』
「そうはいってもなぁ……」
威力の違いを感じろということは、攻撃魔法の方がいいだろう。でも、威力が僕の想像以上に高すぎて、村の誰かが怪我をしてしまうことが怖い。
「うーん……」
ああ、あれなら危険は少ないかも?
「アイスピラー!」
僕が選択したのは、地面から氷の槍が生える魔法だ。これなら、上に伸びるだけだし、暴発して誰かに当たってしまうこともない。
この際だし、濃い水の魔力は使い切っちゃうつもりで……。
「でええええええええええええええええええええええ⁉」
デッカ⁉
僕の目の前にピキーンッと涼やかな音を立てて現れたのは、まるで高層ビルのような高さの立派な氷の柱だ。見上げると首が痛くなるレベルである。
「うおッ⁉」
さすがのディアナも驚いたのか、気が付いたら襟首を掴まれて、ディアナに押し倒されていた。
ディアナは僕に馬乗りになって、周囲を見渡している。
ああ。ディアナにはガレスゴディアの声は聞こえないから、いきなり攻撃されたと思ったのかもしれない。
「大丈夫だよ、ディアナ。これは僕が創ったものなんだ」
「…………」
まるで嘘がないか確かめるように、至近距離から僕の顔を凝視するディアナ。なんだかちょっと恥ずかしいのだけど?
そして、ようやく納得がいったのか、ディアナは僕の上から降りた。そして、マイペースにアクアの上に座る。
え? 僕って押し倒され損なの?
まぁ、いいか。ディアナはもともと無口だし。
「でも、デカすぎじゃない……?」
屋敷の庭で寝っ転がりながら見上げるのは、僕が生み出した氷の柱だ。
高さはどうだろう? 正確にはわからないけど、二十メートルくらいあるかも?
『初っ端から全魔力投入か。その思い切りの良さは嫌いではないが、加減を知るべきであったな』
「ああ、うん……。僕もそう思うよ」
『これでわかっただろうが、魔力の属性の濃さはそのまま効果の上昇につながる。魔力の属性の濃さを上げる行為。これを濃縮と言う。濃縮された魔力は、その効果を飛躍的に上昇させるのだ。ニンゲンとドラゴンでは、使う魔力の量は同じでも、その効果がまったく違う。これは魔力を濃縮しているか否かによるものだ』
「はえー……」
『キース、貴様の魔力の濃縮方法は極めて効率的だ。それだけ、強力な魔法が使えるということだぞ? 喜ぶといい』
「ああ、うん……。僕も喜びたいところだけど……」
「何じゃこりゃあああああああああああああああああああああああ⁉」
おそらく、庭の異変に気が付いたのだろう。父上が大剣を構えたまま、顎が外れてしまいそうなほど口を大きく開いているのが見えた。
それだけじゃない。
「ありゃ何じゃあああああああああああああああ⁉」
「でっけえええええええええええええええええええええ⁉」
「もしかすると、水晶か⁉ あんなバカでけえ水晶見たことねえぞ⁉」
「売ったら、すげえことになるんじゃ……?」
「なんかひんやりしねえか?」
「気のせい……じゃねえな。何じゃこりゃ?」
二十メートルもある氷の柱なんて、村のどこにいても気が付くだろう。続々と村人たちが農具を持って現れた。みんな、大きな氷の柱を見上げている。
常夏のアクロイド男爵領で、氷なんてまず見ないから、みんな困惑しているのがわかった。
この収集を付けないといけないのか……。父上にも事情を説明して手伝ってもらおう……。
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