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130 無属性魔法

「持ち帰ったマグマスライム、フッジサンと名付けたのですけど、マグマスライムは常に燃えているので、わざわざ毎回火打石で火を起こさなくてもいいんです! 火力の調節もしてくれるので便利なんですよ! そして、アビーの話だと薪の節約になります! 絶対に、砂糖作りに役立ってくれるでしょう! それにかわいい!」

「薪の問題はオレも頭を悩ませていたところだ。まさか、キースの方が先に越されてしまうとはな! そのフッジサン? はどこにいるんだ? 実際に見て確かめたい」

「厨房の竈の中ですよ。アビー、案内してあげて」

「かしこまりました。こちらです」

「うむ」


 立ち上がる父上に続いて、僕もアクアに乗ったまま後を追った。


「こちらになります」

「これか。ちょっと退いてくれよ」


 相変わらず三体のアクアスライムに監視されているフッジサン。


 そんなアクアスライムたちを退かして、父上が竈の前でしゃがんだ。そして、フッジサンを観察した後、おもむろにフッジサンに手を伸ばす。


「あ! 父上⁉」

「熱いな。この熱なら、砂糖作りにも役立ちそうだ」


 ヒヤッとしたけど、フッジサンの十センチ手前で手を止めて、父上はフッジサンの熱さを計っているようだった。


「こいつは何を喰うんだ?」

「今は薪を与えています。普通に料理するよりも消費する薪の量が半分以下になりました」

「半分以下! それはすごいな!」


 アビーの言葉に驚いている父上。


 ここで僕も情報を開示しようかな。


「スライムは魔力を食べるので、火属性の魔法ならフッジサンも食べられると思います。その方がフッジサンも嬉しいでしょうし、薪の節約にもなるかと」

「ほう。そうなのか。ファイアボールとかを撃ち込めばいいのか?」

「はい」

「そういえば、スライムを相手にする時は、相手の属性に気を付けろと学生時代に習ったなあ。まあ、フッジサンだったか? よろしくな」


 父上もフッジサンを認めてくれたので、僕はホッと胸を撫で下ろした。


 これで、大々的にマグマスライムを広めても問題ないだろう。


 やっぱり、領主である父上が認めたというのは、この村では最強の認可状だからね。



 ◇



 そんな一幕もあり、僕とディアナとアクアは、昼下がりのいい時間帯に、庭で日向ぼっこをしていた。


 まぁ、アクロイド男爵領は大陸の南端にあるし、日差しが強い。日向ぼっこというよりも、日焼けサロンのような気持ちだ。


 でも、僕はこの日向ぼっこを自分でも意外なほど気に入っている。果実のジュースに氷を浮かべて、気分はバカンスだ。背中に感じるアクアはひんやりと冷たいし、実にいい気分である。優雅だ。腹ごなしが済むまでこうしていようかな。


『さて、キースよ。そろそろ無属性魔法を習う気になったか?』


 のんびりくつろいでいると、せっつくようなガレスゴディアの声が聞こえた。


「無属性魔法?」


 そういえば、ガレスゴディアが前にも言っていたような……。


 というか。


「無属性魔法って何?」


 僕が知っているゲーム『レインボー・ファンタジー』にはそんな魔法は存在しなかったはずだけど……?


 もしかしたら、神話の時代にはあったけど、失伝してしまった魔法なのだろうか?


『うむ。ニンゲンの基準を改めてみれば、キースの言葉もわからんでもないな。ニンゲンが無属性魔法の存在を知らないのも無理はない。というのも、これはマッサランやキースのような、真なる魔法使いしか使うことのできない魔法だからな。言ってしまえば、我らドラゴン族の魔法と言ってもいいだろう。本来であればニンゲンが使うことを想定した魔法ではない』

「えーっと……。つまり、普通の人間は使い方はもちろん、存在すら知らない魔法ってこと?」

『そうなるな』

「それを、僕が使える……」


 それって、単純に考えてもすごいことなのでは?


 僕としては、手札が増えるのは嬉しいところだ。


 まぁ、その分シンディーが言っていたように研究機関に狙われる可能性が上がったような気もしないでもないけど、元々狙われているんだ。大した違いはない。


 それより、手札を増やして対抗手段を増やした方が有意義だろう。


「ガレスゴディア、僕にも無属性魔法を教えてよ!」

『キースならば自力でたどり着きそうではあるが、教えてやってもよいぞ? 無論、対価は頂くがな』

「対価って、魔力?」

『うむ。我が望むものはそれしかない。可能ならば、現界できるほどの魔力が欲しいが……。まあ、多くは言わん』

「わかった!」


 僕は考えるまでもなく頷く。


 それはガレスゴディアへの信頼もあるし、もし騙されたのだとしても、僕はガレスゴディアの魔力を減らすこともできる。


 だから、ガレスゴディアに魔力を与えることに対して、実はあんまり抵抗はないんだよね。


「それで、無属性魔法ってどんな魔法なの?」

『うむ。無属性の魔法は、一言で言えば純粋な力になる』


 純粋な力?


 もしかして、無属性魔法って物理的な魔法なのだろうか?

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