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127 ミニフッジサン

 なるほどね。


 フッジサンに魔力を過剰供給すると、余った魔力で分裂して別個体を作るって感じかな?


 なんだか背後から感じる視線が鋭くなった気がするけど、今は気にしないでおこう……。


 今は、誕生したミニフッジサンをどうするか考えないと。


 ミニフッジサンは、見た感じ、ちょっと小さめのマグマスライムって感じだ。


 しばらくはここに置いておく?


 でも、ここにはすでにフッジサンがいるからなぁ。料理のお手伝いは、正直なところフッジサンだけでも大丈夫だろう。


 そうなると、このミニフッジサンをどうするかだが……。


「うーん……」


 アビーは助かると言っていたし、竈はこのお屋敷にしかないわけじゃない。各家庭にあるだろう。ここは各家庭に一匹ずつ配っちゃおうかな?


 砂糖を作る時、フッジサン一人では力不足ということもあるかもしれないし、できればマグマスライムは複数体欲しいと思っていたところだ。


 アクアスライムとケンカして、倒されちゃう危険もあるしね……。


「フッジサン、ごめんけど、この子は貰っていくよ。大丈夫。悪いようにはしないから」


 そう断ってから、僕はフリーデンを使って誕生したばかりのミニフッジサンを拾い上げた。


 フッジサンはにゅっと短く触手を伸ばすと、バイバイと手を振っている。


 フッジサンも触手出せるんだ……! しかも、短くてちょーかわいいじゃん!


 思わず抱きしめたくなったけど、フッジサンは高熱の塊だ。触ることすらできないのはかなり悔しい。


 それにしても、このミニフッジサンはフッジサンの子どもみたいな感じかと思っていたけど、親子の情とかはなさそうなのが意外だった。


 意外にもさっぱりしたお別れである。


 まぁ、泣いて別れを惜しむ姿を見なくて済んだのはありがたいけどさ。


『またスライムの運搬か……。貴様には女神さまに対して敬意が足りないのではないか? 普通、そんな使い方など思いつきもしないぞ?』


 小言を言ってくるガレスゴディアを無視して、僕はアクアに乗った。


「アクア、長老の家に行こう」


 アクアに指示を出すけど、アクアは動こうとしなかった。


 下を見ると、ツーンッと「私、不満です」と言わんばかりに目で訴えかけてくる。


「あぁ……」


 そういえば、フッジサンを見張ってたアクアスライムたちと、フッジサンには魔力を与えたけど、アクアには魔力を与えていなかった。


「ごめん、ごめん。ほら、機嫌直してよ」


 僕は右手にフリーデンを持ち、左手でアクアの頭を撫でながら魔力を渡していく。


 しばらく魔力を与えると、ようやくアクアは機嫌を直したのか、ちょこちょこと動き始めた。


 そんなアクアに乗ったまま、僕たちは長老であるモートンの家に向かう。


 モートンの家のドアをアクアがノックすると、奥からモートンの声が聞こえてきた。


 しばらくすると、ドアが開いてしゃっきりと背筋の伸びたモートンが姿を現す。


「おや、これはこれはキース様ではありませんか! どうぞ中へお入りください」

「お邪魔します」


 モートンの家の中に入ると、すぐにアクアスライムもぽよんぽよんと出迎えに来てくれた。マグマスライムにはない躍動感があってかわいいね。


「今日はどうなさいましたか? その武器と……先に火が着いていますね……?」

「モートン、厨房ってどこ?」

「厨房ですか? そこを曲がって右ですが……」

「ちょっと入るよー」


 もうすぐお昼だからか、厨房では一人の女性が料理に勤しんでいた。


「あら? キース様ではありませんか? どうなさいましたか?」

「ちょっと竈を借りるよー」

「竈を? あ、お義父様、今キース様が竈を借りると」

「竈?」


 どうやらモートンの娘らしい女性の隣を通って、厨房の奥にあった竈の前に行く。


 料理中なのだろう。竈の上には鍋が置かれ、竈の中には大きな薪が燃えていた。


 その薪の上にミニフッジサンを置くと、はむはむっとミニフッジサンが薪を食べ始めた。


「いいかい? 上にある鍋を融かしたり食べたりしたらダメだよ? いいね?」


 無言でコクリと頷くミニフッジサン。かわいいね。


「キース様、これはいったい……。もしかして、スライムですか?」

「そうだよ、モートン。これはマグマスライムっていうんだ。見ての通り、とっても熱いから触っちゃダメだよ?」

「わかりました。なるほど、これを料理に利用するのですか?」

「うん。ご飯に薪をあげてね。火力の調節もできるし、たぶんだけど、薪の節約にもなるよ」

「薪の節約! それは助かりますなぁ」


 モートンがうんうんと頷いている。


 アクロイド男爵領は、もともと木々が少ないからね。植林もしているけど、薪の確保はいつだって頭を悩ませる問題だ。アクロイド芋って生だとさらにマズいらしいからね。


「このモートン、キース様の考えが読めましたぞ! このスライムを砂糖作りにお使いになるつもりですな?」

「そうだよ。父上が薪に困っていたからね」


 やっと軌道に乗り始めた砂糖作り。それをつまらない理由で頓挫させるわけにはいかないのだ。

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