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126 フッジサンに魔力を

 僕の魔力を水色だとするなら、試験管の中には、八割の無色透明な魔力と二割の青い魔力があった。


 試験管の底に、まるで泥のように沈殿した青い魔力は無視するとして、この残り八割の無色透明な魔力は、本当に無属性の魔力なのだろうか?


「ガレスゴディア、これって成功なの?」

『上出来の部類だろう。マッサランもこんなに早く習得はしなかったぞ。さすがに二日、三日はかかるものと思っていたが……。キース、貴様の魔力の扱いは、マッサランを凌ぐやもしれん』

「そうなの?」


 そんな神話の英雄と肩を並べてしまっていいのだろうか?


 もしかすると、ガレスゴディアなりのリップサービスなのかも?


『どれ、我がその魔力の質を試してやろう』


 僕は思わずジト目でフリーデンを見てしまう。


「そう言って、無属性の魔力が欲しいだけなんじゃないの?」

『それもあるが、そもそも指導したら魔力を貰い受ける約束だったではないか』

「それもそっか」


 僕は試験管の蓋を開けると、創ったばかりの無色透明な魔力をフリーデンに注いでみる。


『素晴らしい。キース、貴様の魔力はデタラメだな』

「それって褒めてるの? 貶してるの?」

『無論、褒めている。まさか、まさかこれほどの高濃度の純粋な無属性の魔力だとは……! キース、貴様は魔法の素質だけならマッサランをも超えるぞ!』


 さすがにそれはリップサービスが過ぎるんじゃない?


 まぁ、それだけ魔力を貰えたことが嬉しかったのだろう。


「これならフッジサンにあげても大丈夫かな?」

『うむ。この我が保証しよう』

「やった! アクア、厨房に行こう!」


 アクアはジトッとした目で僕を見上げながら、いつもよりもゆっくりな、のそのそと形容できそうなスピードで移動し始めた。


「大丈夫だって。ちょっとあげるだけだから。ほんのちょっとだけ」

『キース、貴様のそのスライムへの好意はどこからくるのだ? 普通は、無属性の魔力を練られるようになったら、真っ先に無属性の魔法を習得しようとするものなのだが……』

「好意? 違うよ」


 これこそが愛なのさ!



 ◇



「フッジサーン!」


 アクアがいつもより気持ち乱暴に開けた厨房のドア。


 他の仕事をしているのか、アビーの姿はなかった。


 だが、代わりにそこには三匹のアクアスライムが、まるで竈の中にいるフッジサンを見張るように鎮座していた。


 いや、これって見張るようにっていうより、監視ですよね?


 たしかに、フッジサンがうっかりお屋敷を燃やしてしまったら大変だけど、なにもそんなに厳重に監視しなくても……。


 でも、アクアスライムたちを悪者にはしたくないし……。


 困った僕は、魔力で黙らせることにした。


「はーい、みんなありがとねー」


 フッジサンを監視していたアクアスライムたちに魔力のご褒美をあげつつ、僕はアクアから降りてフッジサンへと近づいていく。


 かわいそうに、天敵に睨まれてすっかり怯えてしまったのか、フッジサンはプルプルと震えていた。


 そんなフッジサンに、僕は右手を伸ばす。


 フッジサンの熱がぼんやりと伝わってくる距離。だいたい三十センチくらいの所から、フッジサンに向けて無属性の魔力を注ぐように渡していく。


 フッジサンも僕の出す魔力が自分の害にならないとわかったのか、積極的にハムハムと口を動かして無属性の魔力を食べていた。


 か、かわいい……!


「フッジサンもありがとね」


 ふぅ。フッジサンのかわいらしい姿に、思わずありったけの無属性魔力を与えてしまったぜ……。


 だが、僕に後悔はない!


 フッジサンに与えた魔力の量を察知したのか、なんだか背後からものすごく重たい視線を感じるけど、気のせいだよね? 気のせいであってくれ……!


 でも、これもフッジサンがかわいいのがいけないんだ。ぱくぱくはずるいよ! 魔力あげたくなっちゃうだろ!


 だから、僕のせいじゃない。悪いのは僕じゃない。


 でもだからってフッジサンをいじめるのはやめてね!


 魔力を十分以上に摂取できたからか、フッジサンがなんだか安らいだ顔でテカテカしていた。心なしか、体積も増えて大きくなった気もする。


 そんなキミもキュートだよ!


「でへへ……」


 そんなフッジサンを見ていたら、急にフッジサンがぷるぷる震え出した。


 どうしたんだろう? やっぱり、僕の無属性魔力に何か問題があったのか⁉


「フ、フッジサン? 大丈夫?」


 声をかけても、フッジサンは反応しなかった。ずっとぷるぷる震えている。


 しかし、次の瞬間には、フッジサンはまるですっきりしたような表情を見せた。その光景はなんだか、喉のつっかえが取れた人のようだ。


「大丈夫? 苦しそうだったけ――――なはっ⁉」


 その時、僕は飛び上がらんばかりに驚いた。


 だって、フッジサンの横に、二回りは小さなミニフッジサンがいたからだ。


 もしかして、フッジサンがぷるぷる震えていたのは、分裂していたからなのかな?


「すげー! やったね、フッジサン! おめでとう!」


 僕の言葉にぷにゅぷにゅと嬉しそうに体を揺らすフッジサン。


 そんなフッジサンを見て、ミニフッジサンも真似するように体をゆらゆらさせていた。


 か、かわいい……!


 いや、尊い!

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