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123 シンディーに訊いてみよう

 僕はアビーにフッジサンを託すと、すぐに二匹のアクアスライムが厨房に現れた。彼らは珍しく厳しい視線でフッジサンを見ている。きっとフッジサンを監視しているのだろう。


「意地悪はダメだからね。フッジサンは村のために働いてもらうつもりだから」


 僕は現れた二匹のアクアスライムに魔力を与えながら諭していく。


 アクアスライムはお互いの顔を見ると、今度は「本当にいいの?」と言わんばかりにアクアの方を向いた。


 もしかしたら、アクアがこのアクアスライムたちを呼び寄せたのだろうか?


 アクアは仕方がないとばかりにコクリと頷く。


 まぁ、アクアにもフッジサンの必要性は散々伝えてきたし、アクアスライムを束ねるアクアが認めれば、おのずと他のアクアスライムたちも従ってくれるだろう。


 厨房を後にした僕は、フリーデンを担いだままシンディーのいるだろう小さな教会に併設された治癒院に来ていた。


 アクアも慣れたもので、そっと触手を伸ばしてドンドンドンッと強めに治癒院のドアを叩く。


「どうぞ。お入りください」


 どうやらシンディーも珍しく起きているみたいだ。


 まぁ、もうお昼だしね。さすがに起きていてほしいところである。


 アクアの触手が器用にドアを開けると、僕とディアナはアクアに乗ったまま治癒院の中に入った。


 相変わらず薄暗くて薬品臭い所だね。幸いにも怪我人はいないのか、治癒院に人はいなかった。


 奥から現れる少しやつれた様子のシンディー。


 やつれたというか、眠そうかな?


 たぶん、また文献を漁っていたのだろう。


 シンディーは教会の人間とは違う顔として、学者の一面がある。最近は、神話について調べているようだ。いろんな知り合いに資料や文献などを送ってもらったらしい。


 最近のシンディーは充実しているのか、やつれているように見えて、その目はキラキラと輝いていた。


「あら? キース様とディアナではありませんか。どうかされましたか?」

「ちょっとシンディーに訊きたいことがあってね。今、時間大丈夫かな?」

「もちろん大丈夫ですわ。立ち話もなんですし……と思いましたが、キース様はいつも通りアクアに座っているのでしたね。ここでお話を伺いますわ」


 そう言って、シンディーは近くにあった患者用のベッドに腰かけた。


「ありがとう。えっと、シンディーは魔力から属性を抜く方法って知ってる?」


 単刀直入に訊くと、シンディーは驚いたように目を見開いていた。


「どこでそんな……。まさか、ガレスゴディアからですか?」

「うん。ガレスゴディアが言うには、魔力から属性を抜く方法があるらしいんだ。シンディーなら何か知ってるかなって」

「なるほど……」


 シンディーは考え込むように顎に手を当てて少し俯いていた。


「結論から言いますと、私は魔力から属性を抜く方法を知りません。おそらく、知っている人間はいないかと。これは私の推察なのですが、まず魔力から属性を抜く前提条件として、詠唱ではなく、魔力をそのまま使用できる人間である必要があると思います。魔力を操れなければ、属性を抜くもなにもないですからね。ですが、私の観測範囲では、そんな器用なことができるのはキース様しかいらっしゃいません」

「そっかぁ……」


 シンディーが知っていれば、シンディーに教えてもらおうと思ったのだけど、どうやらシンディーは知らないどころか、知っている人はいないのではないだろうかという話になってしまった。


 でも、シンディーの話には頷ける話もあった。


 たしかに、魔力を直接操れなければ、魔力の属性を抜くことができないというのはなんとなく直感的にわかりやすかった。


 やっぱり、ガレスゴディアに教えを乞うしかないかぁ。


 ガレスゴディアに魔力を与えることに不安がないわけじゃないけど、話している限りでは、ガレスゴディアは無暗に人を襲うような性格をしていないという信頼もある。


 たぶん、大丈夫だろう。たぶん……。


『なんと情けない。ニンゲンとは、こんな簡単なこともできぬのか。だが、言われてみれば、我の知っているニンゲンの基準がマッサランとキースになっていたのに気付かされたわ。これはニンゲン全体の基準を下げることも検討しなくてはならんな』

「ああ……」


 そっか。ガレスゴディアの知ってる人間ってマッサランが基準なのか。それなら、人間が堕落したとかいう認識を持っても仕方ないかもしれない。


 でも、そもそも人類最高峰の英雄を人間の基準にしないでもらいたい。ハードルが高すぎるよ!


「なんか、ガレスゴディアの人間の基準がマッサランになっていたみたい……」

「それは……」


 ガレスゴディアの認識を伝えると、さすがのシンディーも絶句していた。


 まぁ、そうだよね。その気持ち、わかるよ。


「そういうわけだから、僕はガレスゴディアに教わることにするよ。上手くいくかはわからないけど……」

『なに、そんなに難しいことではない。キースならばすぐに習得できるだろう』


 そうだといいけど……。

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