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122 フッジサン

「マグマスライムくんにも名前が必要だよね? どうしようかな?」


 下からまるで必要ないと言わんばかりにジト目をしているアクアの視線を感じるけど、名前がないのは不便だ。


 僕は改めてマグマスライムを見る。


 マグマスライムの姿は、まるで富士山のように綺麗な山の形の岩部分があり、その山頂からマグマがねっとりと流れている感じだ。


 その流れ出したマグマは、マグマスライムの体を流れると、マグマスライムの体の下部へと吸収されていく。


 例えるならそうだなぁ。マグマを山形の岩でぐるりと囲った感じかな?


「うーん……。フッジサンにしようかな? どうだろう?」


 僕はマグマスライムに名前について尋ねてみると、マグマスライムはゆっくりとコクリと頷いた。


「よし! 決まりだ! 今日からキミは、フッジサンだ! よろしくね、フッジサン!」


 そう言うと、ゆっくりと右に動いたり、左に動いたりしていた。


 喜んでくれているのだろうか?


 マグマスライムは粘度が高いからか、やっぱりそんなに早く動けないみたいだ。


『はぁ……。カイヤ様が御覧になれば、なんとおっしゃるか……』


 そんなガレスゴディアの小言を無視して、僕はフッジサンをフリーデンの上に乗っけると、急いで村に帰る。


 初めて『炎帝の祠』を出たフッジサンは、外の景色を不思議そうにキョロキョロと見ていた。


 そんなフッジサンだけど、フリーデンの端っこに張り付いているのは、少しでもアクアから離れたいからかもしれない。


 アクアが不機嫌そうにフッジサンを見ているからね。


「アクア、そんなに睨んだらかわいそうだよ。フッジサンは、もう僕たちの仲間なんだから、優しくとまではいわないけど、普通に接してあげてよ」


 アクアの頭を撫でながら言うと、アクアは頷いたけど、やっぱりフッジサンのことが気になるのか、ずっとフッジサンのことを見ていた。


「キース様がお帰りになったぞ!」

「大剣の練習に行かれたのかねえ」

「何か大剣の先に付いてるぞ!」

「あれは……火?」

「いや、なんだろうなぁ……?」

「ただいま、みんな!」


 村人たちに帰りの挨拶をすると、僕はアクアに乗ったままお屋敷の台所に急いだ。


 台所では、昼食の準備をしていたアビーがいた。ちょうど竈の中に木を入れて、火を着けようとしているところだった。


 ちょうどいいタイミングで帰ってこれたみたいだ。


「アビー、ただいま」

「キース坊ちゃま、おかえりなさいませ。お腹がお空きですか? 今から昼食の準備をいたしますので、もう少しだけ待っていただけると……。あ、そうだわ。蒸かしたアクロイド芋ならありますが、召し上がりますか?」


 アビーは人好きのする柔らかい笑みを浮かべて問いかけてくる。


 でも、僕の目的はご飯ではないのだ。


「実はアビーにプレゼントがあってね」

「まあ! キース坊ちゃまが私に?」

「うん! これなんだけど……」


 僕がフリーデンの先っぽに引っ付いているフッジサンを指差すと、アビーは初めてその存在に気が付いたと言わんばかりに目を大きく開いて驚いていた。


「これは……新しいスライムですか?」


 アクアスライムの前例があったからか、アビーは驚きはしたもののフッジサンを前にしても取り乱したりはしなかった。


 話が早くてありがたいね。


「うん! 見ての通り、火の力を持ったスライムなんだ。名前はフッジサン。フッジサンは、そこにいるだけで高温だから、絶対に素手で触っちゃダメだよ? 実は、竈の中にフッジサンを入れて、その熱で料理したら、アビーの負担も減るんじゃないかなと思って」

「そうなのですね。お気遣いありがとうございます。素手では触らないように気を付けますね。それで、このフッジサン? は何を食べるのでしょうか?」


 僕は竈にフッジサンを入れると、フッジサンはおいしそうに薪を食べ始めた。


「薪でいいと思うよ。フッジサンにあげる分を考えても、今までより薪を節約できると思う」

「それはすごいですね! いつでも火を着けられるだけでも大助かりですのに」


 アビーの視線をたどると、そこには火打石があった。


 たしかに、火打石はある。でも、火打石で火を着けるのって意外と面倒なんだよね。


 火打石で生み出せるのは、小さな火花でしかない。小さな火花をいくら薪に叩き付けても、薪が燃え上がることはないだろう。小さな火花を大きな火にするためには、いろいろと下準備が必要なのだ。


 例えば、もう再利用もできないくらいボロボロになった糸くずや、木の皮や繊維を解して作った、小さな火花でも燃やせるものを用意する。そこに火打石で生み出した小さな火花を落とすことで、やっと火が着くのだ。


 そして、その火をだんだん大きくしていくのである。


 火打石は確かに便利な道具かもしれないけど、手間がかかるのも事実だ。


 その点、マグマスライムはいつでも燃えている。


 マグマスライムの体に薪を近づければ火が着くのはもちろん。薪をご飯にあげれば、いつでも利用できて、すぐに火の調整もできる高性能な竈の完成だ。

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