121 ガレスゴディアの提案
マグマスライムをテイムできた。
あとは、マグマスライムを村まで運ばないとね。
見たところ、マグマスライムは粘度が高くて、そんなに速く動けないみたいだ。
マグマスライムを運べればいいんだけど、そうなると今度はどうやって運ぶのかが問題になってくる。
マグマスライムの正確な温度はわからないけど、素手で触ったら火傷じゃ済まないだろう。
かといって、アクアに持ってもらうのと、マグマスライムが死んでしまうかもしれない。
そこで僕が考えたのが――――。
「じゃーん!」
よいしょっと両手で持ち上げたのは、初雪を思わせる真っ白な刃のない大剣だった。
そう。みんな大好き最強武器候補の一角、フリーデンである。
『ふむ。待ちくたびれたぞ。ようやく我の出番か?』
もちろん、フリーデンの中にはガレスゴディアも健在だ。
「いや? 実は用があるのはフリーデンの方で、ガレスゴディアには用はないんだよね」
『なんだと? まあ、フリーデンは神造兵器だ。その用途の幅は計り知れないだろう。それで、何にフリーデンを――――』
「よいしょっと」
ぐだぐだ何か言っているガレスゴディアを無視して、僕はフリーデンの先っぽを使って優しくマグマスライムを持ち上げた。
さすがフリーデン。マグマスライムの熱さでもなんともないぜ!
『……待て。待つのだ、キース。貴様、フリーデンをなんと心得る? 畏れ多くもカイヤ様が手ずからお造りになった神造兵器だぞ? まさか、ただのスライムの運搬ごときに使うわけではないよな?』
「え? その通りだけど? 本当はフライパンとか使おうかと思ったのだけど、フライパンに穴が開いたら嫌じゃん?」
マグマスライムの温度がわからないから、鉄でも溶かせたらフライパンに穴が開いてしまう。
ここアクロイド領では、鉄は貴重なんだ。フライパンをダメにしたら、さすがに怒られてしまう。
「その点、フリーデンならガレスゴディアの炎を受けても大丈夫だったんだから、絶対に大丈夫だよね」
『いや! いやいや、待つのだキース。神造兵器だぞ? 神が造った兵器だぞ? 正しく扱えば、それこそ破格の力を手に入れられるというのに、それを貴様はよりにもよって一番最初にスライムの運搬ごときに使うのか⁉』
なんだかひどい言われようだ。まるで僕の頭がおかしいみたいじゃないか。
「これも仕方ないんだよ、ガレスゴディア。フリーデンは僕が実戦で使うにはちょっと大きすぎる」
『それはそうかもしれんが、なにもこんなことに使わなくてもいいだろう? なんならそのスライムは松明で挟んで運べばいいではないか。なにもフリーデンを使わずとも……』
「それだと、マグマスライムが食べちゃうでしょ!」
『食べるなと命じればいいではないか!』
「やれやれ……」
ガレスゴディアは何もわかっていない。このマグマスライムはガレスゴディアの魔力から生まれた、ガレスゴディアの息子と言っても過言ではないというのに……。ネグレクトかな?
「さっきのマグマスライムのかわいい顔を見れば、松明がマグマスライムにとって魅力的なおやつであることなんて丸わかりでしょ? そんなおやつをお預けするなんて……。そんなひどいこと、僕には想像すらできなかったよ……。キミにはがっかりだ、ガレスゴディア」
『なん⁉ 我か? この場合、悪いのは我なのか⁉』
「そうだよ?」
何を当たり前のことを言ってるんだろうね。
『松明など与えずとも、直接魔力を与えればよいではないか。他のスライムにはそうしているのだろう?』
「え? 僕は火の魔法は使えないよ。僕は水の魔力しか持っていないんだ」
そんなことは原初のドラゴンであるガレスゴディアなら見ればわかりそうなものだけど……?
『たしかに、キースの持っているのは水の魔力だ。しかし、魔力の属性を抜けば問題ないだろう?』
「はい?」
魔力の属性を抜く? そんなことできるの?
『その反応は……。まさか、そんな基礎の魔法技術すら、ニンゲンは忘れてしまったのか?』
ガレスゴディアにとっては当たり前のことらしく、なんだかひどく驚かれてしまった。ガレスゴディアが愕然としているのがわかる。
「少なくとも、僕は知らないよ。まぁ、僕は魔法の授業を受けたことがないから、人間が忘れているのかまではわからないけど……。魔力から属性を抜くってどうやるの?」
『ふむ……。我にはニンゲンがどうやっていたのかは知らんが、貴様はマッサランと同じ真なる魔法使いだ。我のやり方が参考になるかもしれぬか……』
ガレスゴディアは少しだけ悩むような様子を見せると、こう切り出した。
『あまりこういうことは好きではないが、背に腹は代えられん。キースよ、我が魔力から属性を抜く方法を教える代わりに、我に魔力を分けてはくれぬか?』
「えぇー……? どのくらい?」
『少しだけでよいぞ。小さな我が顕現できるだけでよいのだ』
「暴れ出したりしない?」
『しないと誓おう』
「じゃあ、とりあえず、シンディーに訊いてみてからね。もしかしたら、シンディーが知っているかもしれないし」
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