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120 マグマスライムテイム

 まるで溶岩が溢れている活火山を逆向きに天井に張り付けたようなフォルム。


 マグマスライムが一体だけダンジョンの天井に引っ付いている。


 これだけ探してやっと見つけた一体だ。確実にテイムしたい。


「うーん……?」


 なんだかこのマグマスライム、前に見た時よりも小さい個体なような気がする。


 もしかしたら、ガレスゴディアを封印してしまったので、魔力の供給が断たれてお腹が減っているのかもしれない。


 とはいえ、僕の水の魔力をあげたら死んでしまうかもしれないし、かわいそうだけど、こればっかりはなぁ……。


 近づくだけでじんわりと熱を感じるほど、マグマスライムは熱を発していた。


 この熱を、ぜひとも砂糖作りに役立てたい。


「さて……」


 肝心のマグマスライムのテイム方法だけど、僕にはいい案は浮かばなかった。


 ここは強硬突破しかないだろう。


 できれば、この手は使いたくなかったんだが……。


「やあ、マグマスライムくん? 元気?」


 気さくに話しかけてみると、やっぱり反応はない。


 人語を理解しているのかしていないのか。それが問題なんだけど、ここは理解しているものとして進めてみようと思う。


 僕は右手の人差し指を伸ばすと、勢いよく水鉄砲を繰り出した。


 水は、マグマスライムの周りを一周し、まるでマグマスライムを囲う檻のようにも見えた。


「マグマスライムくん? 見ての通り、僕は水を生み出せるんだ。つまり、キミを消火……。言葉を飾らずに言うなら、キミを殺してしまうことも簡単にできる」


 水に怯えたのか、僕の言葉に怯えたのか、マグマスライムはぷるぷると震え始めていた。


「そんなに怖がらなくてもいいんだよ? 僕は、キミをスカウトしに来たんだ! 話を聞いてくれると嬉しいんだけど、僕の言葉がわかるなら、下に降りてきてくれないかな?」


 すると、マグマスライムはべちゃっという粘着質な音を響かせて床に降りてきた。


「おぉ!」


 このマグマスライムは僕の言葉がわかるみたいだ。


 僕の話を聞くためなのか、マグマスライムは意外にも円らな瞳を開いて僕を見上げてきた。かわいい!


 これは運がいいね! 話ができるなら、交渉の余地があるぞ!


 まず、僕が敵じゃないことを示さないとね。


「ディアナ、使ってない松明を一本ちょうだい?」

「はい」


 ディアナから一本の松明を受け取ると、僕はマグマスライムに近付ける。


 すると、マグマスライムに触れる直前でボッと松明に火が付いた。


 僕はそのまま松明をマグマスライムに押し付ける。


 マグマスライムは「なに? なに⁉」って感じで目を真ん丸にして突かれるがままだった。そんな様子もかわいらしい!


「くっ……!」


 すっごくなでなでしたいけど、火傷しちゃうからできないのが悔しいほどだよ。


 そんなことを思っていたら、下からアクアが疑いの半目で僕を見上げていることに気が付いた。


 こ、これは、浮気じゃないから。す、スキンシップだから……。


「これは下に降りてくれたお礼だよ。食べて食べて」


 マグマスライムは迷うようなそぶりを見せたけど、最終的にはカパッと口? を開くと、はむっと松明を齧った。


 その途端、マグマスライムの目が輝きを増したように見えた。


 それから急いではむはむと松明を飲み込んでいくマグマスライム。


 よっぽどお腹が空いていたのかな?


 かわいそうに……。


 松明を食べ終わると、マグマスライムの円らな瞳が僕を見上げてきた。


 まるで「もっとちょうだい」とおねだりされているみたいだ。


 正直に言うと、身震いしてしまったくらいかわいい。もう僕の顔はでへでへだろう。


「でへへ。も、もう一本あげちゃおうかな……? へぶッ⁉」


 いきなり右頬に衝撃が走り、視界が左に流れる。


 前に視界を戻せば、アクアの触手がまるで威嚇するようにゆらゆら揺れていた。


「わ、わかったよ、アクア。話を進めるから。もう叩かないでよ」


 僕は座っているアクアの頭を撫でながら言うけど、アクアはまだ疑わしそうな半目で僕を見ていた。


 ここはこれ以上アクアの機嫌を損ねないうちに、早く話を進めてしまおう。


「えっと、マグマスライムくん、僕はキミの力を借りたいんだ。そしたら、毎日松明は無理かもしれないけど、木材ならあげられるよ? ここにいても、もう魔力は供給されないんだ。それはここにいるマグマスライムくんもわかるでしょ? だったら、僕の村に来て、キミの力を貸してほしいんだ。お仕事の内容は、ただそこにいるだけ! それなのに毎日ご飯が貰える! どうだろう? 悪い話じゃないと思うんだけど……? もしOKしてくれるなら、こっちに歩いてくれないかな?」


 話し終えてしばらく。僕の話を吟味しているのか、マグマスライムは目を閉じて考えているようだった。


 そして、しばらくすると、マグマスライムはゆっくりと僕が指定した方向に向かい始めた。


「これは、交渉成立でいいのかな?」


 ゆっくりとコクリと頷くマグマスライム。


 こうして、僕は普通のやり方とは違うかもしれないけど、マグマスライムをテイムすることができたのだった。

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