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119 解決案

「ねえ、アクア」


 その日の夜。


 僕はベッドで横になりながら、ベッドの横で丸くなってるアクアに話しかけた。


 アクアはぽよんと波打って僕の言葉に応える。


「僕、やっぱりマグマスライムをテイムしたいんだ……」


 僕の言葉を聞いて、アクアは二本の触手を伸ばすと、大きく×をつくる。


 しかも、猛反対を示すためなのか、触手で作った×をぶんぶん振り回していた。


 やっぱり、アクア的には他の種類のスライムをテイムすることには反対らしい。


 いつもの僕なら、ここで折れていた。


 でも、今回は折れるわけにはいかない。


 僕の頭によぎるのは、昼間の父上の言葉だ。


『消費する薪もバカにならんし、あの畑のサトウキビをすべて砂糖にするとなると、森が一瞬にしてなくなるぞ?』


 そう。薪である。砂糖作りには、大量の薪が必要なのだ。


 ガレスゴディアの影響で砂漠化一歩手前まで干上がってしまったアクロイド男爵領には、ガレスゴディアの影響から逃れた土地に一応森があるにはある。


 だが、そこまで広い森ではないし、木の本数もそこまで多くない。


 サトウキビ畑のサトウキビをすべて砂糖にしようと思えば、森が消えるというのは言い過ぎでも、砂糖作りを続けていたら、森の木が消えるのも時間の問題だ。


 植林しているといっても、木が育つには時間がかかるからね。


 そこで目を付けたのが、ガレスゴディアが封印されていた遺跡『炎帝の祠』にいたマグマスライムだ。


 マグマスライムなら、ただそこにいるだけで熱を生み出してくれる。これを砂糖作りに必要なサトウキビから搾った汁を煮詰めるのに使う予定だ。これほど画期的な計画はないと思えるほど満点の作戦である。


 アクアの心情を考えなければ、なのだが……。


「考えてもみてくれ、アクアだってこの村が豊かになった方がいいだろ? それには砂糖作りが欠かせないんだ。でも、そのための薪が圧倒的に足りない。そして、それを解決する手段がマグマスライムなんだ」


 ぶんぶんと×を作った触手を振っていたアクアだったけど、僕の話を聞いて少しだけ考えるような様子を見せた。


 今が攻め時かもしれない。


「それにさ、マグマスライムはその名の通り火属性のスライムでしょ? 当然、水属性のアクアたちアクアスライムには弱いんだ。マグマスライムがもし悪さをしたら、すぐにアクアたちが懲らしめられるよ? それに、マグマスライムの用途は限定的だから、村人が取られる心配もないよ? マグマスライムは危ないから、子どもたちの手の届く範囲には置かないし、アクアスライムたちには何も害はない。だから、頼むよ、アクア。村のためにもマグマスライムをテイムしたいんだ」


 懇々と説得すること三十分近く。ようやくアクアは触手で小さな○を作ってくれるのだった。


「ありがとう、アクア!」


 僕は嬉しくてアクアに飛び付くと、ひんやりとしたそのボディーがぷるんと震える。


 やっぱり、アクアはいい奴だね! 最高だ!



 ◇



 次の日。


 僕はディアナとアクアに乗ってアクロイド男爵領を南に進む。目指すは『炎帝の祠』だ。目的はもちろん、マグマスライムをテイムすることである。


 とはいえ、僕は魔物使いのような特殊な力は持っていない。アクアは僕が魔力を与えたから懐いてくれたけど、マグマスライムに僕の水の魔力を与えても死んでしまうだろう。


「うーん……。どうするかなぁ……」


 マグマスライムをテイムすることに決めて、アクアに許可までもらった僕だけど、テイムの方法までは考えてなかった。


 一応、案はあるにはあるけど……。できればこの手は使いたくないなぁ。


 そんなことを考えているうちに『炎帝の祠』へとたどり着く。


 ディアナが松明に火を着けて、さっそく探索だ。


 このままだと、マグマスライムを捕まえるのにかなり強引な方法を使わないといけないから、できれば代案が見つかってほしい……。


 襲い来るモンスターを察知した瞬間に爆殺し、マグマスライムを探す。


 モンスターの反応が察知した途端に消えるからか、ディアナが首を傾げているのが印象的だった。


 そのままどんどん『炎帝の祠』の迷路を突き進んでいく。


 途中で前回の冒険で回収し損ねたアイテムなどを回収しつつ、マグマスライムを探すんだけど、なかなか見つからない。


 ここ『炎帝の祠』のモンスターは、ガレスゴディアの魔力から生まれたモンスターだと設定されていたはず。


 だとすると、ガレスゴディアを封印した今、新たにモンスターが生まれない可能性だってある。


「いるといいんだけど……」


 その時、通路の先の曲がり角の奥が明るくなっているのが見えた。


 僕たち以外に『炎帝の祠』に潜っている者はいないはず。だとしたら――――!


「マグマスライムだぁああああああああああああ! アクア、早く早くゴー!」


 アクアに指示を飛ばし、迷路のような通路の曲がり角を曲がる


 そして、僕たちはついにマグマスライムとの邂逅を果たしたのだった!

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