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012 水のヴェールが村を救う?

「この魔法、すごいですわね……!」


 シンディーの研究対象になることが決まってしまった僕。


 その後、シンディーが自分で外に出て、僕の創った水のヴェールの性能を試してくれた。


 そして、治療院に戻ってきた開口一番にそう言った。


「な? すごいだろ?」


 なぜか得意げな父親とにこにこのクレア。クレアの笑顔に癒されるよ。


「すごいなんてものじゃございませんわ! すごすぎます! まさか砂を一切通さないとは思いませんでしたわ。これで村を覆えば、塵肺になる患者はいなくなるはず! 病気を根絶できますわ!」

「その塵肺って何だったか? 聞いた覚えはあるんだが……」


 父親が腕を組んで首をひねっていた。


 塵肺って何だろう? 僕も知らない単語だ。


「ご領主様には一度説明したはずですが……」


 そう言ってシンディーがやれやれと首を横に振っている。


「この地で呪いと言われているものの正体。それは塵肺ですわ。鉱山で働く者たちに多い病で、鉱山病とも呼ばれています。小さな塵や埃などを吸い込み、肺の機能が弱まるのですわ。有効な治療法は今のところありません。この地では、風が吹くと細かな砂が舞い上がります。おそらく、それが原因です。だから私は村の人々にマスクの着用を勧めているのですわ」

「ふむ……」


 シンディーの話を聞いて、父親が難しい顔で頷く。


 塵肺……。治療法がないというのが恐ろしい。じゃあ、この地で生きている限り、常に塵肺になるリスクを抱えながら生きなくてはいけないということなのか……。


 でも、対策がないわけじゃない。


 父親とシンディーが僕に期待するわけだ。


 シンディーが言ったようにマスクを着けるのも有効だろう。しかし、僕の水のヴェールの魔法の性能はその上をいく。


 あとは打ち水なんかも対策になるかもしれない。


「キース様、この水の魔法で村を覆うことはできますか?」

「あい!」


 そう。水のヴェールの魔法を使って村を包む。村の規模が小さく、家が一か所にまとまっているからできる荒業だ。さすがに村の外にある畑までは入らないけど、その時はマスクを着けてもらえばいいだろう。


「さすが我が息子だ! 頼りになるな!」

「キース、すごいですよ」

「キース坊ちゃまは村の希望になるかもしれませんね!」


 父親もクレアもアビーも僕を褒めてくれた。僕も俄然やる気が出てくる。


「善は急げと言います。さっそくやりましょう!」

「部隊の者たちには、村の者たちへの説明をさせよう。また驚いてしまうからな」


 シンディーの言葉に父親が頷く。


 そして、僕たちは村の中心に移動した。ここで村を覆う水のヴェールの魔法を使う。


「キース様、ここでいいですか?」

「あい!」

「頼んだぞ、キース!」

「キース、がんばってください!」

「キース坊ちゃま……!」


 父親たちの期待に応えて、僕はクレアの腕の中でまず周囲を確認する。


 ちゃんと村を包むように展開しないとだからね。


「てい!」


 そして、ついに水のヴェールの魔法を発動する。


 その瞬間、まるで空からレースの布が下りてくるように水のヴェールが村を包んでいく。


 農作業していた村人たちのざわざわした声が聞こえる。たぶん、トムたち部隊の五人が説明してくれるだろう。


「素晴らしいですわ! まさか、系統外魔法を無詠唱で、それもこんなにも広範囲で発動できるとは! ご領主様、クレア様、ご子息であるキース様は天才です!」

「ガハハハハ!」


 頭よさそうなシンディーに天才とか言われちゃうなんて驚いちゃうよね。父親なんて「ガハハハハ!」と豪快に笑って喜んでいるし、クレアも「よかったですね」なんて言ってにこにこ顔で僕の頭を撫でている。


「これで村の人々の塵肺の被害は激減するはずです。すでに塵肺の者たちもこれ以上症状が進行することがなく、呼吸が楽になるのではないでしょうか。まさか、ご領主様のご子息が、それもこの年齢でこの難題を解決なさるとは思いませんでしたわ。これも神の差配かもしれませんわね。なんにせよ、神に感謝するべきですわ」

「うむ! そうだな!」

「あなた、後で教会に貢物を持っていくのはどうでしょうか? きっと喜んでいただけるはずです」

「そうだな。クレアの言う通りだ。アビー、なにか適当なものを見繕ってくれ」

「かしこまりました」


 そんな話が大人たちの間で展開されている時、僕は神について考えていた。


 それは、僕がこの世界に生まれたことにも関係している。僕は、なぜ地球ではなく、この世界に生まれたのだろう? それには何か理由があるはずだ。その理由が知りたい。


 僕を転生させることができるのは、それこそ神のような超次元の存在に他ならないと思う。教会に行けば、神について何かわかるだろうか?


「あうあうあー!」


 僕はクレアの負担にならない程度に彼女の腕の中で暴れる。まだ言葉がしゃべれない僕の精いっぱいの教会に行きたいアピールである。


「キース? どうしたの?」

「さすがに疲れたのではありませんか? こんなにも大規模な魔法を使ったのですもの。宮廷魔法使いでもぶっ倒れますわよ」

「ふむ。では、今日はもう屋敷に帰るか」

「あうー……」


 そうじゃないんだけどなぁ……。


 言葉って偉大な発明品だね。

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