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117 お魚リターンズ

「今頃、父上たちは商談中かなぁ……」


 父上の許可をもらって、村にあるお酒をすべて火酒に変えてから、僕とディアナは、アクアに乗ってアクロイド村を出て、海の方へと向かっていた。


 村のみんな、お魚が大好きだからね。たまにこうして僕たちが供給しているのである。


 獲れる魚は毎回ランダムだから、脂ののったおいしいのから淡白なものまで幅広い。


 村人たちにも好みがあるので、なるべくたくさんの種類の魚が獲れるといいなぁ。


 僕が観測した範囲だと、若い村人は脂ののった魚を好み、歳を取った村人ほど淡白な魚を好むような気がする。まぁ、データは少ないし、その通りじゃないデータもあるんだけどね。


 例えば、長老のモートンは脂ののった魚の干物が大好物だし。


 干物と言えば、僕は村人たちに魚の干物の作り方を教えた。まぁ、魚を捌いて内臓を取って、よく海水で洗ってから干すだけだからね。簡単な作り方だ。


 鳥たちが干している干物を狙うこともあるけど、そこは頼もしい見張り役がいる。もちろんアクアスライムたちである。


 アクアスライムたちは、鳥が干物を狙って飛んでくると、魔法を使って撃ち落とすのである。


 これで鶏肉も手に入って一石二鳥である。


 そんな調子で、アクロイド村の食事情はかなり改善したと思う。


 あとは主食であるアクロイド芋がおいしければ言うことなしなんだけどなぁ。


「さて……」


 そんなことを考えていると、断崖絶壁にたどり着いた。この遥か下には、海があるのだが、釣りも無理そうな高さだね。


「よいしょっと」


 僕は適当に海を切り取るようなイメージでちょっと遠くの深めの位置の海水を持ち上げる。


 すると、まるで巨大なアクアリウムのような、さまざまな魚が入った四角い海水が海から姿を現した。


「うん。今日も大漁だね」


 持ち上げた海水の中には、大量の魚たちが、自分たちの運命を知らずに暢気に泳いでいる。


「お?」


 アクアリウムを移動して中に入っている魚たちを見ていると、まるでマグロのように大きな二匹も魚がいた。初めて見る魚だ。おいしいかもしれない。


「じゃあアクア、村に帰ろう」


 アクアに指示を出すと、アクアはいつものように動き出す。


 僕たちの後ろには、四角く切り取った海水のアクアリウムが付いて来る。


 それにしても、アクアに乗るのは楽だなぁ。


 アクアの速度は僕の小走りくらいだけど振動もないし、燃料もいらない。かなりクリーンな移動手段だ。


 まぁ、アクアスライムに乗るには、信頼関係を築かないといけないけどね。


 でも、『炎帝の祠』から帰ってきた時、トムがアクアの中に入って移動していたのが村人たちにかなり衝撃的だったのか、最近はアクアスライムに乗って移動している村人や、トムのように全身を浸かるようにアクアスライムに入っている人が散見される。


 やっぱり、みんなスライムが好きなんだなぁ。そうだよね。だってこんなにかわいいんだもん!


「お! 坊ちゃんのお帰りだぞー!」

「キース様がまた魚獲ってきてくだすった!」

「また魚が食えるぞ!」

「おい! 人呼んでこい! みんなで魚を捌くんだ!」

「おう!」


 僕たちがアクロイド村に近づくと、村人たちが僕たちに気が付いてわらわらと動き出す。


「おかえりなさいませ、キース様!」

「キース様、ありがとうございます!」

「魚! 肴!」

「キース様、ばんざーい!」

「おーい! 包丁持ってこーい!」

「捌くぜー! 超捌くぜー!」

「ただいまー。よいせっと」


 村人たちに迎えられながら村の中に入ると、僕は海から持ってきた海水の中から魚を出していく。


 ピチピチと地面を撥ねる魚たちを村人が各々捕まえて、流れ作業のように魚を捌いていく。このあたりは慣れたものだね。アクアスライムたちも捌いた魚を洗ったり大活躍だ。


「こいつは大物だなあ!」

「見たことないやつじゃないか?」

「うめえのかな?」

「食いでがありそうじゃわい」


 村人たちの視線が、マグロに似た魚へと注がれている。何回か漁に出ている僕も見たことがない魚だ。食べられるのかも怪しい。


「これは後でシンディーに食べられるか確認しよう。みんなは他の魚を捌いてよ」

「がってんでさあ!」

「やるぞー!」

「今日も宴会だ!」


 おかしな話だけど、村人たちにとって魚を捌くことは一種の娯楽に、いや、宴会という娯楽の前の下準備ということで、みんな楽しそうに作業している。


 とはいっても、さすがに村人総出で食べても、食べきれない量の魚がある。


 そういう場合は、干物にして保存食にする。


「これはただ焼いてもうまくないぞ! 干しとけ干しとけ!」

「こいつも干した方がうまい!」

「こいつは鍋に入れちまおう!」

「いいな! このちっちぇーのはどうする?」

「ヤギに食わしとけ!」


 みんなでわちゃわちゃしながら作業していく。僕はこの光景を見るのがけっこう好きだった。


 村のみんなで共同作業。いいね!


 よく見ると、『赤のキツネ』のメンバーも大人に教わりながら作業に加わっている。そうして、知識が次の世代へと受け継がれていくのだろう。

お読みいただき、ありがとうございます!

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