↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
116/143

116 火酒の報告

 そんなこんなで、僕はシンディーがマズいといった水分をポイッと捨てて、できあがった火酒を持って父上の書斎に乗り込んだ。もちろん、火酒の説明をしてもらうためにシンディーも一緒だ。


 アクアに乗って父上の執務室に入ると、父上は母上と一緒に小銭を数えながら難しい顔をしていた。


「お! キースか! どうしたんだ?」

「キース。シンディーもいますね。どうしたのかしら?」

「まあ、座ってくれ」


 父上と母上は僕たちを見ると笑顔を浮かべて僕たちを迎え入れていた。父上に促されて、僕たちは執務室に置かれたベンチに座った。


「父上と母上は何をされていたんですか?」

「あー……。まあ、金を数えてたんだ」


 僕が問いかけると、ローテーブルを挟んだ向かいのベンチに座った父上はちょっと誤魔化すような雰囲気を滲ませながら答える。


 たぶん、商隊が来るけど、お金が少なくて困っているのだろう。


 村人たちは楽しみにしていたけど、父上と母上が難しい顔をしていたということは、領地の経営はよくなったとはいえ予断を許さない状況なのかもしれない。


 たしか、マクマホン辺境伯への莫大な借金もあったし、それを返す必要もあるしね。


 今までは赤字だったから仕方がないと思っていたけど、下手に黒字になりそうものだから、借金の多さを実感してしまったのかもしれない。


 でも、村人たちは父上が何を買うのか楽しみにしている。それを否定するようなことをしたくないと考えているのかもしれない。


「それより、キースはどうしたんだ? シンディーも何か用事でもあるのか?」


 父上は話題を変えるように、僕たちに質問してきた。


 その質問を待っていたよ!


「実は、僕の魔法で、アクロイド芋のお酒から火酒を作ることができたんです!」

「かしゅ?」

「キース、それは何なのでしょう?」


 父上と母上は火酒の存在を知らないのか、首を傾げていた。


「シンディー、火酒の説明をお願いできる?」

「はい。ご領主様、奥方様、火酒というのは、火を近づければ燃えるほど酒精が強いお酒、もしくは飲むと喉が焼けるような酒精の強いお酒の総称ですわ。そして、この火酒ですが、このサザーランド王国では作られていません。すべての火酒は、北方にあるドワーフの国でのみ造られており、流通量が少ないのですが、サザーランド王国の富裕層で人気ですわ」


 澱みなく火酒について説明してくれるシンディー。すごく便利だ。


「この度、キース様がその火酒を造り出すことに成功しました。サザーランド王国では初のことですわ。まだブランド力がありませんので、ドワーフの国の火酒よりも多少は値段が下がるでしょうが、価値のわかる商人には高値で買い取ってもらえるかと」

「その高値ってどのくらいだ? せめて今の酒の十倍くらいは値が付くといいんだが……」


 シンディーの話を聞いて、父上が質問する。


 そうだ。父上にこれも報告しないと。


「父上、そのお酒なんですけど、火酒にすると五分の一くらいに量が減っちゃうんです」

「なに⁉ それだと……儲からなくないか?」


 父上が訝しげに呟く。


 しかし、それに笑顔で応じるのはシンディーだ。


「ご安心ください、領主様。現在の火酒の取引価格を見ますと、多少値切られたとしても、従来のお酒の売値の千倍はいきますわ」

「へ……?」

「せ、千倍ですか⁉」


 驚きすぎて呆けてしまったかのような表情を浮かべる父上と、驚愕しすぎてローテーブルに身を乗り出してしまった母上。父上はそうでもないけど、ここまで取り乱す母上はかなりレアだ。


 というか、アルコール度数を上げるだけでそんなに価値が跳ねあがるんだ。すごいね。


 まぁ、前世でもお酒の値段ってピンキリだったし、そういうものなのかもしれない。


 それにしても千倍はすごいけどね。


「せせせ千倍って、いくらだ⁉ もしかして、金貨が貰えるのか⁉」

「最低でも大金貨での取引ですわ」

「大金貨⁉」


 再起動した父上が指折り数えるけど、父上の遥かに上をいく金額が提示されて、また固まってしまった。


「し、シンディー? 本当なのですか? 本当に、そんなすごいものをキースが?」

「はい、奥方様。私がこの目で確認いたしました。この火酒は、このアクロイド男爵領を救うカギになりますわ!」


 母上の問いかけにシンディーがそう返すと、母上は居ても立っても居られない様子で立ち上がると、まるで僕に飛び込むように抱きしめてきた。少し大きく目立つようになってきた母上のお腹が僕の胸にぶつかる。


「すごい! すごいわ、キース! キースのおかげで、このアクロイド男爵領は生まれ直すのですわ! あなたも! あなたもキースを褒めてくださいまし!」

「あ、ああ!」


 母上の言葉でまるで石化から解放されたかのように父上が動き出す。


 父上は立ち上がると、僕たちの傍までやってきて、その長い手を伸ばして僕と母上を纏めて抱きしめた。


「キース、よくやってくれた! お前はオレの誇りだ! まったく、お前って奴は本当にすごいぜ!」

「ありがとうございます、父上、母上」


 これで、外貨獲得の手段もできた。二人が喜んでくれて、僕も嬉しいよ。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。