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113 特産品係就任

 僕はモートンとシンディーから聞いたことを父上にその日のうちに報告した。したのだが、父上は自分にはよくわからんと言い、僕とシンディーをアクロイド男爵領の特産品係に任命した。


 とりあえず、わかる者に押し付けてしまえという考えが透けて見えるね。


 父上が領主で大丈夫なんだろうか?


 ちょっと心配になる。


 でも、自分にはわからないからと反対されるよりはよっぽどいい。


 そういう意味では、父上は懐の広い領主だ。


 シンディーとの話し合いから数日後。


「ふむふむ……」


 アクロイド男爵領の特産品係を拝命した僕は、アクアに乗ってお屋敷の庭に来ていた。もちろん、ディアナも一緒である。


 そんな僕たちの目の前にあるのは、もう僕の背丈くらいには成長したサトウキビの生えたアクアスライムたちだ。


 僕はもう収穫できるのかなと思ったんだけど、父上やシンディーによるとまだまだらしい。


 サトウキビの収穫時期は、サトウキビに花が咲いてからになるようだ。


 僕は早くサトウキビを収穫したいよ。


 でも、アクアスライムたちに植えると、なぜか植物の成長が早くなるのか、畑に植えたサトウキビよりも倍くらいの大きさになっていた。


 アクアスライム栽培が流行る未来が見えそうだよ。その分、魔力が必要だけどね。


「今日もありがとう」


 僕はサトウキビを植えたアクアスライムたちに一人ずつ声をかけながら魔力を注いでいく。


 どうやらサトウキビには水が大量に必要なのか、隣でアクアスライム栽培しているアクロイド芋よりもアクアスライムたちが小さくなっていた。


 ちょっと多めに魔力を与えた後は、今度はアクロイド芋を植えたアクアスライムたちの方に移動する。


「キミたちもありがとね」


 アクロイド芋を育てているアクアスライムたちに魔力を与えると、嬉しそうにぽよぽよ揺れていた。かわいいね?


 庭のアクアスライムたちに魔力を与え、作物の育ち具合を観察すると、僕はそのまま村へと繰り出した。


「キース様! おはようございます!」

「キース様だ! お前ら、ご挨拶だ!」

「「「おはようございます!」」」

「うん。おはよう、みんな」


 村人たちに挨拶しながら、僕は畑の方を見に行く。


「おぉー」


 そこには、びっしりと緑が生い茂っていた。これがすべてアクロイド芋だ。しかも、その一角には、品種改良第三世代のアクロイド芋もある。


 アクロイド芋の品種改良は、今のところ順調に進んでいる。実際に品種改良したアクロイド芋を食べた村人たちは、狂喜乱舞した。


 あのマズかったアクロイド芋が、少しだけマシになったのである。具体的には、後味として残っていたエグ味が少しだけ軽減され、少し甘みが増した気がする。


 まぁ、それでもまだマズいの領域を出ないのだけど、アクロイド芋は毎日食べるものだからね。その味が改善されるのは村人たちにとっても望むところだったらしい。


 めちゃくちゃ感謝されちゃったよ。父上も母上も、アビーやシンディーまで大喜びだった。


 ディアナ? ディアナはあんまり食に興味がないのか、無表情で食べていたよ。


 今、村人たちは積極的に第三世代のアクロイド芋から蔓を採取して、クローン栽培をしている。


 今まで育てていた第一世代のアクロイド芋は、全部お酒用に回してしまえというような勢いだ。


 なんと、そのためにアクロイド芋畑を拡大までしてしまったらしい。


 いやはや、人の食への執念ってすごいね。


 そういえば最近、けっこうな頻度で村人たちから「また海の魚が食べたい」とお願いされるんだよね。


 塩はまだまだあるから頻繁に海に行く必要はないんだけど、海の魚の味は、すっかりアクロイド村の人々の胃袋を鷲掴みしてしまったらしい。


 たぶんだけど、村人たちの食生活を見ていればわかることがある。


 それは、圧倒的にタンパク質が足りないということだ。


 村人たちの普段の食事は、アクロイド芋が主であり、そこに野菜や、父上や警備隊が狩ってきたモンスターの肉や、村で育てているヤギが追加されるだけである。


 しかし、モンスターの肉もヤギも有限だ。村人総出で分け合ったら、一人当たりの量なんてたかが知れている。


 それに、今はもうそんな必要はないらしいけど、昔あったひどい飢饉の時にはアクロイド芋の蔓まで食べていたらしい。


 こうして考えてみると、タンパク質だけではなく、いろいろと必要な栄養が足りていないのだ。


 そんなところに栄養満点の海の魚食べ放題をやったものだから、みんなその味が忘れられなくなってしまったのである。


「今日は海に行くのもいいかもしれないなぁ」


 僕はガレスゴディアとの戦闘で見せた戦闘能力が評価されたのか、ディアナを連れていれば、アクロイド男爵領の中ならば自由に村の外に出てもいいという父上のお墨付きも貰ったしね。かなり自由に動けるようになった。これでレベル上げもしたい放題である。


 村では畑が大きく拡大され、アクロイド芋の生産もうなぎ上りだし、もう最初からお酒を造る目的でアクロイド芋が生産されているくらいである。

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