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112 シンディーとの話し合い③

 アクロイド男爵領にだけある特産品。


 やはりここの問題からは逃れられないようだ。


 そうだ。シンディーならアルコール度数九十以上のお酒に需要があるのか知っているかもしれない。実際に作る前に、シンディーに確認しておこう。


「シンディー、アルコー……えっと、酒精が強いお酒って需要あるかな? 火を着ければ燃えるレベルのお酒になると思うんだけど、僕としては――――」

「はい……?」


 僕が話し始めたら、シンディーが「また何を言ってるんだこいつは」みたいな顔をして僕の方を凝視してきた。


 これは……ダメっぽい?


 やっぱり飲み方も書いて売らないとダメなのかもしれない。


 というか、まず商人が買ってくれるかどうか……。


「その、火を着ければ燃えるというのは本当ですの⁉」


 シンディーがバッとローテーブルの上に身を乗り出すようにして訊いてきた。


「え? うん。できると思うよ?」

「それができたら、アクロイド男爵領はすべてが変わりますわ!」

「え? そんなに?」


 すべてが変わるって、さすがに大袈裟じゃない?


「そんなにです! 運命が変わると言っても過言ではありませんわ!」


 僕が信じていないと思ったのか、シンディーが、腕を振って力説する。


 しかし、シンディーの振った指の先が本の塔にぶつかって、ガラガラと崩れ始めた。


 でも、シンディーはそんなことにはお構いなしで、ジッと僕を見つめている。


「そんなにすごいことなの?」

「すごいなんてものではありませんわ! 燃えるほどのお酒、もしくは燃えそうなほど強い酒精を含むお酒は火酒と呼ばれているものですが、そのすべてがドワーフの国でしか作られていないのです! しかも、ドワーフの国はサザーランド王国の遥か北方の山の中にあり、交易は極めて限定的です! そのため、火酒はものすごい高値で取引されておりますわ! その火酒がアクロイド男爵領にあるとわかれば、万難を排して商人たちが押し寄せるはずです!」


 なるほど。つまり、サザーランド王国には、まだ蒸留酒というものがないのだろう。だから、アルコール度数の高いお酒を造れない。


 しかも、競合しそうなのはドワーフの国だけだとすると……。お金の匂いがするね?


 となると、ラム酒はどうなるんだろう?


 今、アクロイド男爵領ではサトウキビを育てているけど、成功すれば砂糖が作れるようになるはずだ。ラム酒は、砂糖を作る時にできる糖蜜で造ると聞いたことがある。


 砂糖を作るなら、ラム酒もセットで造った方がいい。


 でも、ラム酒を作るには蒸留が必要だった気がするけど……。もしかして、この世界のラム酒って蒸留していないものが出回っているのだろうか?


 だとすると、ラム酒にもかなりおおきなチャンスがあると思う。


 これは是が非でもサトウキビ栽培を成功させないとね。


 問題は、この世界のサトウキビが、僕の知ってるサトウキビと違う可能性だけど……。


 まぁ、砂糖が作れるなら、糖分があるならアルコールも作れるだろう。


 アクロイド芋を使った火酒なら、すぐにでもできる。でも、まだ生産量が少ない。これは今まで通りアクロイド村にやってくる商隊に売ればいいだろう。


 火酒自体は高値で取引されているみたいだけど、アクロイド産の火酒はブランド力がまだないからね。多少安めに売ってもかまわない。


 商隊の人に火酒だとわかってもらうために、実際にお酒に火を着けて、燃えるところを見せればパフォーマンスとしては十分だろう。たぶん、それなりの値段で買ってくれるはずだ。


 こっちには、火酒の価値を正しく理解しているシンディーもいる。買い叩かれる心配はない。


 問題はラム酒だけど、これは樽での熟成期間が必要だったはずだ。港湾施設の開発は、砂糖とラム酒の製造が軌道に乗った後でもいいかもしれない。


 できれば、お金を貯めてアクロイド男爵家として船を所有したいところだ。


 僕の頭の中にはこの世界の世界地図が入っているし、百年前の情報だけど、各地の特産品も知っている。おそらく儲けは出るだろう。


 それに、船がないと行けない島々に隠された宝もある。百年前の主人公や、この百年で見つけた人がいるかもしれないけど、それらも回収できるなら回収したいところだ。


 しかし、アクロイド男爵領には造船技術も船を造るための材料もない。さすがに僕も船の造り方は知らなかった。やっぱり買うしかないだろうなぁ。


 船って高いのかな?


 高いだろうなぁ。


 でも、アクロイド男爵領の特産品になる予定のものは火酒、砂糖、ラム酒とどれも高価だ。意外とすぐにお金が貯まるかもしれない。


 船乗りたちも、水とアクロイド男爵領の特産品を求めてやってくるようになるに違いない。


 モンスターの出る山を荷馬車で何日もかけて踏破するのと、船で運ぶのでは、その難易度や乗せられる荷物の量にもかなりの違いが出るはずだ。


 それに、海が使えるようになれば、塩作りもできる。これは僕がやったようにアクアスライムたちにも塩を作ることができるはずだ。


「見えてきたな……」

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