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110 シンディーと話し合い

 シンディーは、いつもの法衣を脱ぎ捨て、白いミニスカートのワンピースみたいな下着姿だった。しかも、若干透けている。かなりきわどい格好なんだけど、僕はあんまり興奮しなかった。


 あれかな? まだ体が第二次性徴を迎えてないからかな? なんか興奮とかより、普通にシンディーの体調が悪そうで心配になる感じだ。


「シンディー大丈夫? 寝てないの?」

「キース様でしたか。それと、ディアナとアクアまで……。実は、考古学や神話の資料が届くまでに少しでも勉強しておこうと、昨日からずっと聖書の再解釈をしておりましたわ……」


 シンディーは相変わらずお勉強大好きだね。知識欲の塊といってもいいのかもしれない。


 でも、そのおかげで僕もいろいろ知識が集まるからありがたいね。わからないことはシンディーに訊けばだいたいわかる。


「睡眠はちゃんととった方がいいよ、シンディー。お肌にも悪いしね」

「そうですね……。少しだけのつもりでしたが、気が付いたらこんな時間に……。それで、キース様がここにいらっしゃったということは、何かあったのですか?」

「疲れてるなら後でもいいよ?」

「大丈夫ですわ。さあ、こちらにどうぞ」


 シンディーに招き入れられたのは、本がたくさん積まれた部屋の中だった。どれくらいたくさんあるのかというと、部屋の半分以上の空間を本が占めているかんじである。本以外にも巻物などもあり、いよいよ人の住む環境ではない。


 そんな中、かろうじて残っている人間性を感じさせるソファーに案内された。


 僕はアクアから降りてソファーに座ると、まるでボディーガードのようにディアナとアクアが僕の後ろに控えた。


「それで、お話とは?」


 本の積み上げられたローテーブルの上に、冷めたお茶の入ったコップが置かれる。


 その向こうのソファーにシンディーが座ると、眠そうな目で問いかけてきた。


 眠たそうなシンディーに話す内容じゃないかもしれないけど、一応僕の目指すものを伝えてみようかな。


「シンディー、僕はこのアクロイド男爵領を、王国の中でも随一に発展した都市にしたいんだ」

「……なるほど。何か具体的な計画はあるのですか?」

「それがないんだ。どうすればいいのかがわからないし、どこを目指すべきなのかもわからない。今はまだ白紙に近いよ。シンディーは何かいい案はない?」

「そうですわね……」


 シンディーは目を閉じて、考えに没頭しているようだ。


 僕は用意されたコップを持つと、生ぬるいお茶をグビッと飲んでみる。少しだけ砂糖が入っているのか、お茶はいつもよりも甘く感じられた。


 考えが纏まったのか、ついにシンディーが目を開ける。


「ここは逆に考えてみては?」

「逆に?」

「はい。なぜ今、アクロイド男爵領が発展していないのかを考えるのです。つまり、アクロイド男爵領が抱えている問題点ですね。それを解決していけば、自ずとアクロイド男爵領も発展していくのではないでしょうか?」

「なるほど……。逆転の発想か……」


 僕にはなかった視点だ。やっぱりシンディーは頼りになるね。


「はい。例えば、今のアクロイド男爵領には、メインとなる産業がございません。それを憂いてマクマホン辺境伯がアクロイド男爵領でのサトウキビの栽培を勧めましたが、その成果もまだ出ていません。つまり、今のアクロイド男爵領にはこれといった産物がないのです。それはすなわち、外貨の獲得手段がないということ。アクロイド男爵領が赤字経営になっている原因ですわ」

「ふむ……」


 シンディーの言う通り、アクロイド男爵領にはこれといった産物がない。アクロイド芋はマズいから大量に作っても売れないしなぁ。一応、アクロイド芋で蒸留酒を作るつもりだけど、その儲けだけでアクロイド男爵領を支え切れるかわからない。


 特産品はあればあるほどいい。


「そして、地政学的にも問題がありますわ」

「地政学的? どういうこと?」


 なんだか難しい話になってきたぞ。


「広大なアクロイド男爵領ですが、その北はローダス山脈で分断され、東、南、西は海で囲まれた逆三角形の形をしています」

「うん」


 僕は前世でプレイした『レインボー・ファンタジー』で見た世界地図を思い浮かべてみる。


 たしかに、『炎帝の祠』があった土地、今のアクロイド男爵領は、北を上に見た場合、逆三角形の形をした土地だった。


「ローダス山脈は、多数のモンスターが生息している危険地帯ですわ。つまり、アクロイド男爵領は、陸の孤島なのです。モンスターから身を守るための護衛代、ローダス山脈を超えるのにかかる日数、その他諸々を勘案すると、アクロイド男爵領との取引は赤字しかありません。アクロイド男爵領には年に三回商隊が来ますが、彼らはマクマホン辺境伯の要請でアクロイド男爵領に来ているのです。決してアクロイド男爵領に商売的な魅力があって来ているわけではありませんわ」

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