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104 呪いが解けてから

 アクロイドの呪いが解けた大宴会の翌日。


 村にはいつもの光景が広がっていた。


 いつも通り村を守る結界のように水のヴェールも展開している。


 アクロイド男爵領に雨が降るようになったとはいえ、その大地はまだまだ乾ききっている。昨日の通り雨程度では、その乾きを癒し切るのは不可能だ。


 なので、アクロイド村では砂塵から身を守るための水のヴェールの魔法が必須だ。


 その水のヴェールの向こうでは、畑で村人やアクアスライムたちが一生懸命働いている。


 その様子をボーっと見ながら、僕は昨日ガレスゴディアから聞いた話を反芻していた。


 僕にとって衝撃的な事実だったからね。嚙み砕くにはまだ時間がかかりそうだ。


 それに、ガレスゴディアを疑うわけじゃないけど、昨日聞いた話はあくまでもガレスゴディアから見た一意見だ。ガレスゴディアの話を鵜吞みにするのはまた違う気がする。


 できれば邪神とされているウラナスに直接話を聞いてみたいところだけど、ウラナスは百年も前に再封印されている。


 さすがにウラナス本人には聞けなくても、他の原初のドラゴンであれば話が聞けるかもしれない。


 僕の結論を出すのは、その後からでもいいだろう。


「よし、そういうことにしよう」


 ずっとモヤモヤ悩んでいたけど、結論を出すのは未来の自分に任せて、今は今できることをしよう。


「というわけで、行こうか」


 僕はアクアに座ると、すぐにディアナもアクアに乗る。


 ディアナも表情には出さないけど、アクアの座り心地を気に入ったのかもしれない。


 アクアはにょろんと触手を伸ばして器用にドアを開けると、僕の部屋から出て屋敷の外に向かう。


 そこでは、茶色に染まったアクアスライムたちが暢気に日向ぼっこをしていた。その頭頂部からは、それぞれ植物が生えた二つのグループに分かれていた。


 一つのグループは、白い花を咲かせたアクロイド芋を育てているアクアスライムたちだ。うっすらと見える彼らの体内には、育ちつつあるアクロイド芋の影が見える。


 彼らはすでに僕が独断と偏見で選んだマシなアクロイド芋を目指して品種改良している三代目になるアクロイド芋を育てているベテランだ。彼らに任せておけば、立派なアクロイド芋が育つだろう。


 もう一つのグループは、まるで茶色い竹のようなものが頭頂部から生えたグループだ。こっちはサトウキビを育てているグループである。アクロイド芋に比べるとその成長はかなり遅い。でも、着実に成長している。畑に植えたサトウキビよりも成長スピードが早いくらいだ。


 そして、もう一つわかるのは、アクロイド芋を育てているアクアスライムたちよりもサトウキビを育てているアクアスライムたちの方が小さくなっている点だ。


 スライムの大きさは、その体にどれだけ魔力や水を含んでいるかによって決まる。


 魔力は関係ないだろうから、もしかしたら、サトウキビは育てるのに大量に水を必要とする植物なのかもしれないね。


 そう結論付けると、僕は植物を育てているアクアスライムたちに魔力を注いでいく。サトウキビを育てているアクアスライムたちには、多めに魔力をあげる。


「毎日ありがとね」


 アクアスライムたちはぷるぷると体を震わせて喜んでいるように見えた。


 それを見て、アクアも「自分にも欲しい」と言わんばかりに僕の目の前に触手を伸ばしてくる。


「アクアもがんばったからねー」


 アクアもガレスゴディア討伐戦では大活躍だった。いつの間にかあんなに大きくなれるほど魔力を蓄えていたし、その大きさでもってガレスゴディアを滅多打ちにしていたのは記憶に新しい。


 アクアには助けられたし、アクアにも魔力をあげよう。


 僕はアクアの触手を握ると、冷たいぷるんとした魅惑の触感が返ってくる。


 魔力を注ぐと、アクアは嬉しそうに体をぷるぷる震わせていた。おかげで僕もディアナもぷるぷる震えてしまうけど、それもまた楽しい。


「さて……!」


 僕はアクアに魔力を注ぎ終わると、空を見上げた。そこには、見慣れた雲一つない青空が広がっている。


 でも、このアクロイド男爵領は、もう雨の降らない呪われた土地じゃない。


 そのことが嬉しくて、なんだか誇らしかった。


 でも、こんなのはまだまだ序の口である。


 このままアクロイド男爵領を開拓して、王国随一の都市にするのだ!


 そのために必要なのは、やっぱりお金かな? 人、特に商人はお金のないところには寄り付かないというし。


 でも、今のアクロイド男爵領で売れるものなんてあるんだろうか?


 雨が降るようになって、慢性的な水不足からは解放されるし、やがて地面が水を含んで、砂塵も飛ばなくなるだろう。


 でも、それだけでは領地開拓のスタートラインに立っただけだ。


 僕は『レインボー・ファンタジー』の知識はあるけど、領地経営とかはわからないからなぁ。


 でも、僕は一人じゃない。わからないことがあれば、誰かに訊けばいいんだ。


 この場合、モートンに訊くのがいいのかな?


 長年アクロイド村に住んでいるモートンなら、何か知っているかもしれない。

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