103 ガレスゴディア②
「へえ?」
正直、意外だった。僕はゲームや『レインボー・ファンタジー』の設定資料集を見て邪炎竜ガレスゴディアのことを多少は知っているけど、その性格や考えまでは知らない。
邪炎竜って呼ばれてるくらいだから、その性格も邪悪なのかと思ったけど、そういうわけでもなさそうだ。
「無駄な殺戮はしないってこと?」
『いかにも。無論、我の逆鱗に触れるなら容赦はせんがな』
文字通り、原初のドラゴンの逆鱗だ。できれば触りたくはない。
でも、僕には何がガレスゴディアの逆鱗に当たるのかわからなかった。
「シンディーが何度かキミのことを邪炎竜と呼んでいたけど、そのことでは怒ってなかったよね? 何がキミにとっての逆鱗なの?」
『我らは歴史の敗者。敗れた者である。それぐらいの汚名は受け止めよう。だが、過度な嘲りには覚悟してもらわねばなるまい?』
「なるほど……」
みんなにガレスゴディアのことを邪炎竜と呼ぶのをやめさせよう。
僕はそう心に固く誓った。
ガレスゴディアの逆鱗がわかったところで、僕は本題に入ることにした。
まずは、ずっと気になっていたこと。
「ガレスゴディア、キミは僕ならフリーデンを扱う資格があるといったよね? それって本当なの? あと、なんで父上は資格がないの?」
父上ならば、大剣の技量レベルが足りないということはないだろう。僕よりも確実に大剣の扱い長けているしね。
そんな父上には資格がなくて、僕には資格がある理由。それは何だろう?
『そのことか。キースよ、貴様は自分の異常性に気が付いているのか?』
「異常性?」
僕としてはどこにでもいる普通の子どもくらいの気持ちでいたんだけど? まぁ、転生者っていう点は特別かな?
『まさか、自覚がないとはな……』
なんだかガレスゴディアに呆れられた気がする。
『いいか? キース、貴様の魔法は異常だ。人類に許された領域にいない。どちらかといえば、我ら原初のドラゴンや、恐れ多くも神にも近い魔法の使い方をする』
「え?」
たしかに僕の魔法は特殊だとシンディーに何度も言われてきたけど、まさか原初のドラゴンであるガレスゴディアにまで言われるとは思わなかった。
『我が知っている貴様と同じ魔法の使い方をする者は一人しかいない。マッサランだ。つまり、お前はマッサランと同じく、フリーデンを使う資格がある。フリーデンは魔力を制御できる者にしか扱えんからな』
「なるほど……」
ガレスゴディアは知らないけど、実はもう一人フリーデンを使える者がいる。『レインボー・ファンタジー』の主人公だ。
でも、主人公も魔法を使う時は詠唱をしていたはず……。
考えられる可能性は、女神の祝福だが……。
これ以上は憶測に憶測を重ねることになる。今はやめておこう。
フリーデンの話はこれで終わり。僕がフリーデンを扱う資格があると知れただけでよかった。
次の話に行こう。
「話は変わるけど、ガレスゴディア、キミは神話の生き証人だ。あの時何が起こっていたのか、正確に知っているよね?」
僕もゲームでの断片的な情報や、設定資料集を読み込んで、この世界に対して、神話に対して、ある程度の理解はあるつもりだ。
でも、それは結局ある程度でしかなく、完全なる情報ではない。
とくに、ゲームのバックグラウンドである神話などは、設定資料集を読み込んでも、わりとふわっとした説明しかなかった。
僕も『レインボー・ファンタジー』のガチ廃人として、知れることは知っておきたいと思うのは、至極当然な思考だった。
「キミが生きた神話の時代。女神カイヤと男神ウラナス。僕が知っている神話では、男神ウラナスがこの世界を滅ぼそうとしたのをきっかけに、すべての種族を巻き込んだ大戦争が起こったことになっている。なぜ男神ウラナスはそんなことをしようとしたんだ? そして、なぜ七体中四体もの原初のドラゴンがそれに賛同した?」
そう。僕は神話であったことをある程度は知っている。でも、そこで神話の登場人物が何を考えたのかは知らない。
男神ウラナスのやろうとしたことは、ただの暴挙のように思える。男神ウラナスがなぜそのようなことをしようとしたのか、理由を知りたい。男神ウラナスの考えを知りたいともいえる。
そして、不思議なことに七体いる原初のドラゴンの半分以上が男神ウラナスの考えを支持している。その理由もわからない。
僕の目の前にある執務机に置かれたフリーデン。その中には、実際に男神ウラナスの考えに賛同したガレスゴディアの魂がある。
男神ウラナスの考え、そしてそれに賛同した理由を知るチャンスだ。
『人類の堕落は、我から見ても目に余ったのだ……』
そう語り出したガレスゴディアから語られるのは、想像以上に考えられた男神ウラナスの意図だった。
そして、その試金石としてその身を投げ出す覚悟したガレスゴディアをはじめとする四体のドラゴン。その覚悟に、僕は――――。
「そうか……」
僕には正義とは、悪とは何かがわからなくなってしまった。
ゲームをプレイしていた時は、自分が正義であると疑いもしなかった。主人公サイドである女神が正しいのだと疑いもしなかった。
いや、ある意味で女神は正しい。正しいが――――。
でも、その一方で決して男神の考えもわからなくもないのだ。
「…………」
僕はそれ以上ガレスゴディアに質問することなく執務室を後にする。
頭の中がごちゃごちゃだ。
とりあえず、今日はもう寝てしまおう。
お読みいただき、ありがとうございます!
よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。
下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。
☆1つでも構いません。
どうかあなたの評価を教えてください。




