010 外へ
「「「「「おはようございます、領主様!」」」」」
庭には五人の男たちが横に並んでいた。上は五十歳くらい、下は十代と歳もバラバラな男たちだ。揃っているところといえば、武装しているところだろうか。男たちは腰に剣を佩いて、防具も身に着けている。まさに戦士と言った感じだ。
というか、今父親のことを領主様って呼んだ?
父親って領主だったの!?
それってかなり偉いんじゃない?
もっと低い、それこそ村長とかそのへんかと思っていたよ。
「キース、紹介しよう。彼らはこのアクロイド男爵領でも選りすぐりの魔剣士たちだ。魔剣士というのは、魔法も使える剣士のことだな」
男たちは面構えがキリッとしていて立派だ。きっと自分の実力に自信があるのだろう。父親が選りすぐりと言った意味がわかった気がした。
「皆に紹介しよう。我が息子、キースだ。まだ赤子だが、非凡な才能を持っているのは昨日、皆が見た通りだ」
「それですが、よろしいでしょうか、領主様?」
男たちの中で一番の年長者である五十歳くらいの男が手を上げた。
「何だ、トム?」
「領主様のお言葉を疑うわけではありませんが、昨日の空を飛んだ巨大魚は、おおよそ人の創り出せるものとはとても思えんのです。領主様はキース様が創ったと言いますが、その根拠はどこにあるのですか?」
空を飛んだ巨大魚? もしかしてクジラのことかな?
そっか。寝室には入らなかったから外でクジラを創ったけど、そのせいで村人もクジラを見たんだ。
昨日、剣を抜いていた父親を思い出す。
いきなりあんなものを見たら、驚いちゃうか。悪いことしちゃったなぁ。
「ふむ。それは実際に見てもらった方が早いな。キース、見せてやれ!」
「ふぁ!?」
そんないきなり言われても……。
でも、いきなりクジラを作るのは大変だし、村の人たちがまた驚いちゃうよね。
「てい!」
そこで僕は、まずは小さな魚から創っていくことにした。
まずは、みんな大好きクマノミである。
「うお!?」
「何だこれは!?」
「水、なのか?」
「水でできた、魚?」
「詠唱は!? 魔法には詠唱が必要なはずでは!?」
男たちは目を丸くして驚いていた。全員手が腰の剣に伸びていたけど、それだけ驚いたみたいだ。
やっぱりクマノミから始めてよかった。
それから僕はクマノミからウミヘビ、アジの群れ、イルカとだんだん大きくしていく。
「そのくらいでいいだろう。どうだ? すごいだろう、キースの力は?」
父上の言葉を聞いているのかいないのか、男たちは口を大きく開けて僕の魔法に見入っていた。
「こんなことが……。可能だなんて……」
「俺は今、奇跡を見ている……」
なんだか大袈裟だなぁ。この男たちも魔剣士ということは、魔法が使えるのだろう。なんでこんなに驚いているんだろう?
「領主様、キース様、お力を疑うようなことを言ってすみませんでした」
その時、年長者の魔剣士、トムが頭を下げた。
「まあ、皆が信じられないのはわかっているつもりだ。そこで、今日は皆に頼みがある。今見たことを村の者たちに伝え、村人たちを安心させてくれ。頼んだぞ」
「かしこまりました。よし、行くぞ!」
「「「「おぉー!」」」」
トムに率いられる形で、魔剣士たちが村へと走って行く。彼らの話を聞けば、村の人たちも安心してくれるだろう。
「さて、我々は水場に行くぞ!」
「はい!」
「あう!」
この出したイルカたちはどうしよう?
そんなことを思っていると、ざああっと強い風が吹き、砂が舞い上がった。
まるで一瞬にして視界が黄色く染まってしまったかのような光景だ。
しかし、砂が舞い上がったにしては、目に砂が入ったりの被害はなかった。なぜだろうと思った時、それに気が付いた。
「あうあ」
水でできたイルカの体内には、細かい砂の粒子がいくつも入っていた。
そう。片付けようか迷って出しっぱなしだったイルカが砂から僕たちを守ってくれたのだ。
なるほど。こういう使い方もあるのか。便利かもしれない。
「てい!」
僕は魔力を操ると、イルカの水を使って僕たちを覆うように水のカーテンを創った。これで、砂が飛んできても大丈夫なはず。
「うお!? 水の膜か? ってことは、キースがやったのか?」
「あい!」
僕は元気よく頷くと、父親は不思議そうな顔をしていた。
「しかし、何のために?」
「うー……」
こういう時、しゃべれないのは不便だね。父親に理由を説明できないよ。
「あなた!」
もどかしい気持ちを抱えていると、クレアが前方を指差して声をあげた。
見ると、小さな砂竜巻みたいなものが急速にこちらに向かってきていた。
「ああ」
父親は僕たちを砂竜巻から庇うように抱きしめる。
その直後、小さな竜巻が僕たちを呑み込もうとするが――――!
「ん?」
「あら?」
「これは……!?」
父親、クレア、アビーが驚きの声をあげる。
そう。水のヴェールが小さな砂竜巻から僕たちを守ったのだ。
「なるほど!」
その瞬間、父親はわかったぞとばかりに大きな声を出した。
「そうか! この水の膜は、砂や風から我々を守るためのものか! これがあれば、あの村人たちも救うことができるかもしれん! こうしてはおれんな。予定変更だ! 治療院に行くぞ!」
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