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妹を踏みにじった奴らに、復讐の花束を  作者: 楠ノ木雫


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◇第三話


 クラリスが嫁いだ隣国アーデルへイド王国に我がユディッタ王国の王族が来訪したのは一度だけ。それも、あちら側でのクラリスの結婚式の時に王太子であるお兄様のみか参列した。


 それからはずっと、こちらのユディッタ王国の王族はあちらの国に来訪したことがない。私も、あちらの国に行った事は全くない。


 だから、今回が(・・・)私の初めての来訪となる。



「まさか、誕生日プレゼントにアーデルへイド王国行きの使節団を言い出すとはな」


「だってお兄様、私がクラリスと会うのは何年ぶりだと思ってるんです? クラリスの誕生日プレゼントはちゃんと自分で渡したいですわ」


「はいはい」



 お父様達に無理を言って、あちらの国に交渉してもらい来訪する運びとなった。お父様は渋っていたけれど、お兄様が『自分が使節団の代表として一緒に行く』と助けに入ってくれたことで実現した。


 けれど、お兄様は私がいきなりこんな事を言い出した事に何か引っかかっている事だろう。それは、一緒に乗る馬車内の空気でよく分かった。でも、本当の事は言えない。例え、何でも相談していたお兄様であっても。



 そして、アーデルへイド王国首都に辿り着き、王城に。ユディッタ王国とは違う、石壁で上に高く作られている城だ。



「遠路はるばるよくぞお越しくださいました。ユディッタ王国王太子リュシアン・レタ・ユディッタ殿下、第一王女アリエス・ウル・ユディッタ殿下」


「出迎え頂き光栄です」



 私達を出迎えてくれたのは、この国の外交官と、王族の方、そして……クラリス。アーデルへイド王国風のドレスを着た、私のたった一人の妹。


 久しぶりのクラリスに、目が熱くなりそうになってしまった。つい昨日のように感じるあの恐ろしい夢を思い出してしまいそうになり、頭から押しやる。けれど……今すぐに、今すぐにクラリスを抱きしめたいと思ってしまう。



「久しいな、クラリス。変わりはないか?」


「はい。お兄様、お姉様におかれましても、お元気そうなお姿を拝見でき何よりです。お会い出来て嬉しいですわ」


「……会えて嬉しいわ、クラリス」


「……ふふ、どうしたの、お姉様?」



 王族は人前で涙を流してはいけない。それは分かっているけれど、どうしても視界がうるんでしまう。流れないように堪えるけれど、難しい。


 クラリスの両手を、自分の両手で優しく包んだ。とても、温かい。クラリスはいつも、私より手が温かかったっけ。対する私は冷え性で手がいつも冷たかった。なら温めてあげる、と度々手を握ってくれたことも覚えてる。


 私達は、三人兄妹。王太子に、第一王女、第二王女の三人だった。私はずっと独身。だから、この国に嫁ぐのは順番で私のはずだった。けれど、私が不甲斐ないばかりに、クラリスが嫁ぐことになってしまった。


 ……だから、今回は絶対、絶対にクラリスを幸せにする。



「……クラリス、病気とかしていない? 体調とか崩してない?」


「そんなに心配しなくても大丈夫よ、お姉様。それよりも私の方が心配だわ。私が嫁いだ後に病気とかしていなかった?」



 見たところ、病気をしているようには見えない。怪我をしているようにも見えないし、他の異常があるようにも見えないわね。


 けれど……クラリス、好み変わった……? 前は嫌いだったのに、化粧が濃くて、ドレスも結構派手だ。嫁いでからいろいろと変わったのだろうか。


 そういえば、クラリスの夫は……?


 そう思いつつ見渡していると、それに気が付いたクラリスはにっこりしつつ視線を向こうに。その先には、私達を出迎えたこの国の王太子の少し後ろに立つ騎士の正装をした男性が。


 私はクラリスの夫とは会った事がないけれど、この国の騎士団の団長という事だけは聞いている。なるほど、あの方か。


 私の視線に気が付いた彼は、胸に手を置き少し頭を下げた。なるほど、ね。無愛想、というか真面目なのか。少し遠くからではあるけれど、そんな雰囲気を感じる。


 ボドワン・ロッセル。


 この国の公爵家の当主を務めている、クラリスの夫。


 あの日、クラリスは骨のみで帰ってきた。この国では火葬ではなく埋葬が基本のため何故あの姿で帰ってきたのか不思議だった。


 それに彼は夫なのだから、クラリスをこちらに連れてくるのは彼の役目。だというのに、この国の使者がその役目を担った。


 何故? 忙しかった? でも、自分の妻なのだから最優先のはず。それに、公爵という立場なのだから世間体にも自分が連れて行くべきだった。


 という事は、公爵と国との間にいざこざがあり仕方がなかったのか……――クラリスを見捨てたか。


 クラリス自身が何か罪を犯したのかは分からない。けれど、例えそうだったとしてもそうせざるを得なかった事なのだと思う。そんな子じゃないと、私がよく知ってるから。


 生まれてからずっと一緒にいる私が、よく知ってるから。


 となれば……無実の罪を着せられた、の可能性が高い。国を挟むのだから、それが一番可能性が高い。



「ではご案内いたします」


「じゃあまたね、お兄様、お姉様」


「えぇ」



 なら、どんな罪を? 一体誰が?


 今の状況では、それを解くことは出来ない。


 でも、絶対に見つけてみせる。クラリスの味方は、家族であり、一番は私なのだから。



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