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妹を踏みにじった奴らに、復讐の花束を  作者: 楠ノ木雫


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2/12

◇第二話


『やっぱり、結婚する相手は愛する人とがいいわ。アリエスはどう思う?』


『……でも、王族だから政略結婚でしょ?』


『まぁ、確かにそうだけど……でも、結婚した後に愛が芽生える事もあるじゃない?』



 そんな会話を、クラリスと何度もしたことがある。


 私達の父親である国王陛下は、正妻であるお母様のみを娶った。お母様の願いではない。お母様本人は側室もとってもいいと言ったらしいけれど、聞かなかったのだと笑っていた。だから、クラリスも自分を愛してくれる人がいいと憧れを持っていた。


 私としては、結婚についてはあまり関心がなかった。だって、私達はこの国の王族であり王女。王国の為の政略結婚が基本なのだから、王女としての務めを果たすことが当然の事。


 むしろ、結婚や恋愛に興味津々で楽しそうなクラリスを見るだけで十分だった。


 それなのに……それなのに……



「姫様、起きる時間でございますよ」



 それは、私の専属メイドであるリリスの声だった。その声で意識が浮上し、目を開けると眩しい光が差し込んでいた。視界がうるんでいて、頭がまだ機能してくれない。



「いかがしました!?」



 つい涙を流していたらしい、ハンカチで頬を拭いてくれた。何故その涙が出てしまったのか、そしてその現実に目を向けられず口から言葉が出てこない。


 クラリスがいない。クラリスがいない。私の、片割れの双子の妹が、もう、いない。


 そんな地獄、耐えられるわけがない。



「昨日の誕生祭でお疲れでしょうから、今日はもう少しお休みになりましょうか」


「……えっ」



 今、リリス何て言った……?


 た、誕生祭……?



「今朝は姫様宛に誕生日プレゼントが届きましたよ。もう少しお休みになられてから確認いたしましょうか」


「だ、れの……」



 そ、その言い方じゃ……私の、誕生日、って……


 落ち着け、私。そもそも、クラリスが帰ってきた事はすぐに城中に広まったはず。それだというのに、リリスのこの態度。


 彼女は幼い私達の乳母としてこれまで勤めてくれていたのだから、きっと悲しんでくれたはずだ。無理して笑顔を見せてくれている、ようには見えない。



「……リリス、今日の日付けは?」


「え? 姫様の誕生日の次の日ですよ。4月の9日でございます」



 う、嘘だ……


 私の誕生日の次の日っていったら……



「な、何年……?」


「え? 3976年ですけれど……いかがなさいました?」



 クラリスが帰ってきたのは、10月。秋の収穫祭準備中の日の事だった。それが本当なら……あの日から、半年逆戻りしてる事になる。


 逆戻り、だなんて……おかしい、そんな事出来るわけがない。



「それ、本当……?」


「はい?」


「本当に、4月9日……?」


「はい……昨日、姫様の誕生祭があったばかりではありませんか。いかがなさいました? やはりお疲れでは?」



 こんな様子の私を心配したのか、リリスは私の額に手を添えた。熱が出ているのかの確認でしょうけれど、私はそれどころじゃない。


 本当に……本当に……半年前に戻ったの……?


 なら、クラリスは今どうしてるの……?


 あんな悲惨な姿になって帰ってきた、双子の妹。こうなってしまった訳も、死因も伝えず帰ってしまったアーデルへイド王国の使者。


 お兄様は言った。クラリスの嫁ぎ先であるロッセル公爵家の使者ではなく、アーデルへイド王国の使者と。たとえこれが国を跨いだ国際結婚であっても、嫁ぎ先であるロッセル公爵かその家の使者が来るべきだ。相手が王族なら尚の事。


 となると、一体、アーデルへイド王国では何が起きているのだろうか。


 クラリスの身に何か起こっているのでは……?


 そんなことは思いたくない。けれど、頭をよぎるあの光景。クラリスが無惨な姿で帰ってきたあの光景は、もう見たくない。



「……お父様達は今どちらにいらっしゃるかしら?」


「え?」



 リリスの話では、昨日は私の誕生日。となれば、クラリスの誕生日でもある。



「……ちょっとお父様達に話をしてくるわ」



 今すぐに、話を付けなくては。


 一体クラリスはどんな状況にいるのか、不安で押しつぶされそうだ。けれど、焦っては出来る事も出来ない。姉である私だからこそ、冷静にいなくてはいけない。


 ……待っていて、クラリス。



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