◇第一話
……ねぇ、ちょっと待って。
その箱の中に入っているものって、まさか……
「――アリエス、まずは落ち着きなさい」
「ねぇ、お兄様、説明して……」
「……」
謁見室に呼ばれ、入ってみれば王座の前で国王であるお父様、王妃であるお母様に、王太子のお兄様が床に膝をついて何かを見ていた。いやな予感がして、煩い心拍数を無視しつつ近づく。彼らが囲っていたのは、小さな箱。その中に入っていたのは……――骨。
一瞬にして、身体が凍り付いた。息が、出来ない。言葉が、出ない。
「たった今、アーデルへイド王国から使者が来て……クラリスを連れてきた」
クラリス……もしかして、その骨って……
「あぁ……何てこと……」
「あの悪魔め……アーデルへイド王国は一体何をしていたというのだっ!!」
嘘だ。
「……嫁いで2年も経った。だというのに、こうなってしまった訳も、死因すらも伝えられず、更には嫁ぎ先の墓にも入れてもらえないとは……」
嘘だ。
「これでは、クラリスが報われないじゃないか……!」
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……
妹が、あんなに幸せそうに、リスクがあると分かっていても隣国に嫁いだ妹が、どうしてこんな姿になって帰ってきたの……?
ねぇ、どうして……?
一体、何があったの……?
「……アリエス? アリエスっ!」
――誰が、妹をこんな姿にしたの……?
その疑問と、信じられない現実に押しつぶされた私の意識は、静かに沈んでいった。
『もう、アリエスは心配性なんだから。私は大丈夫だから、アリエスも元気でね!』
『はいはい、お幸せに』
『うんっ!』
最後に脳裏に浮かんだのは、素敵なウェディングドレスを身にまとったクラリスだった。
私と血を分けた、双子の妹の笑顔だった。
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